(サイカチ物語・第三章・藤沢野焼き祭り・22)

 

「何処にする?」。

「何処って、俊ちゃんが行きたいところは何処なの?」。

「うん、一関から大船渡沿線で気仙、陸前高田市の方。合戦の場になった佐沼城、登米市寺池の方と石巻。その沿線だね。熊谷が

 考えることと変わらないと思う」。

「じゃあ、良いよ、それで」。

「そうすると、キャンプ場は気仙と石巻辺りで調べて見るか」。

「海?、山?、どっちの方向になるの?」。

 二人の声が聞こえたのだろう。小母さんが居間側から引き戸を開けて顔を出した。

「どうしたの?」。

「皆でキャンプに行く、キャンプ場探し。それに、行く日辺りの天気予報を調べてる」。

 美希の答を聞いた小母さんと俺の目が合った。小母さんは俺の方に軽くお辞儀をして、黙ったまま引き戸を閉めた。

 想像した通り一旦、一関方面に出て、大船渡線沿線の古城巡りで気仙の方に抜ければ一泊目は陸前高田市か大船渡市の気仙地域になる。又二日目が石巻を目指すことになるから石巻市周辺で二泊目を探すのが妥当だろう。検索ツールに岩手県内のキャンプ場、次に宮城県内のキャンプ場と入れた。

「やっぱり海が見えるところが良い。それに夏だからシャワーか入浴施設が整っている方が良いね」。

 美希にそう言いながら四つ星の評価点が付いた大船渡市の「碁石海岸青少年キャンプ場」と、石巻市の牡鹿半島の先端に位置する評価点四・四の「おしか家族旅行村オートキャンプ場」を候補に拾った。熊谷と一緒に行くというだろう京子の意見も想定してこの二つを選択して見た。「碁石海岸青少年キャンプ場」から「おしか家族旅行村オートキャンプ場」までの海沿いのコースはツーリングにもってこいだ。京子も喜びそうに思える。

「それで今度は天気予報だね」。

 美希に言いながら、一関市(いちのせきし)千厩町(せんまやちょう)陸前高田市(りくぜんたかたし)石巻市(いしのまきし)登米市(とめし)の天気予報を検索した。皆、週間(・・)天気(・・)()予報(・・)データ(・・・)を出しているものばかりだ。

「その先がないね。おっ、ありました、ありました。さすが農協、JAだ。田畑の農作物の育成管理等のためにはこれくらい先ま

 で知りたいよね」。

 二人で顔を見合わせて笑った。この(・・)()二十五日間(・・・・・)()天気(・・)天気(てんき)予報(よほう)JA(・・)とあった。ホームページを開くと、その日毎の予報が天候、気温の高低、降水確率、風向きで表わされている。欲しい予報データだ。

 検索した地域は何処も八月十一日の土曜日から十六日の木曜日までは晴天、連日三十度を超える天気とある。十七日は一日雨で気温が急に下がる。十八日には最高気温の予想が二十二、三度まで下がる予報になっている。十三日から十六日までを選択するしかなさそうだ。

「ここだね、旧盆に当たる」。

「お盆は何かと用事があって、家族から反対されるかな?」

 盆入りの十三日にお墓参りを済ませて、十四、五、六日でキャンプだねと美希が思い直したように言う。京子も古城巡りに参加するとして十一日のよさこいソーラン発表が終わるまでは出かけられない。美希と条件は同じだ。俺は頭の中でそう思った。

「キャンプ場って予約は必要かしら」。

「うん。確認しないとね。テントもテントを張る場所もどうなっているのか、また今から予約が取れるかが問題だし、水と火の確

 保はどうなるのか、それに入浴かシャワー施設のどっちかが欲しい。色々と聞いておいた方が困らない。

 後で熊谷に連絡して調整してから予約を入れてみるよ。行き先と巡るルートとで利用するキャンプ場も変わるからね」。

JAの天気予報と二つの候補地のキャンプ場の紹介・利用方法データを二部プリントアウトした。美希に一部を渡し、一部を俺が持った。俺が熊谷に古城巡りに行くと返事をして、熊谷は京子を誘うだろう。俺は熊谷に美希も連れて行くと言う。