(サイカチ物語・第二章・葛西一族の滅亡・6)
三
講堂の一番奥の壁にある時計は、集合時間の午後四時を少し回った。集まったのは十人だけだ。
「もう来ないと思う、始めよう」。
梨花ちゃんの自分を鼓舞するような声に、私も美希ちゃんも愛ちゃんも、うん、と応えた。普通科の教室にも農業科の教室にも張り出した第二回ソーラン部、五月十一日(金)午後四時集合のビラの効果は期待通りにはならなかった。結局、ソーラン部創設を言いだした合唱部からの参加でさえ、所属部員が十人もいるのに梨花ちゃんと美希ちゃん、愛ちゃん、私の四人だけにとどまった。廃部になった吹奏楽部から平優子さんと畠山寛二君、同じ廃部になった排球部から三浦浩美さん、小野寺翔子さん、高橋沙羅さんが参加した。それに野球部所属のまま千葉哲君の参加だ。吹奏楽部にいた山田君と廃部のサッカー部に所属していた四人は今日は来なかった。集まった人数は前回より半分に減った。
入部届の様式への書き込みがそれぞれに終わると、梨花ちゃんから、当面、部活の日を月水金の午後四時から五時半にしたいと思うがどうかと提案があった。私は事前に聞いていなかった。新聞部の部活とかち合うなと一瞬思ったが、新聞部の今後の活動のことを考えると何も言わないことにした。
でも、みんなの意見から活動日が月火水と修正された。踊りの振りを覚えるのは個人の努力だけど、集団で踊るのだから他人との間隔、距離感をつかむのと、振りを揃えるのに連続した日の練習の方が効果的だし、必要だという意見が大勢を占めた。
その後、梨花ちゃんから個人負担が前回説明のとおり約二万円かかると伝えられたが、誰も口を挟む人はいなかった。そして、半纏の柄と鳴子、ハチマキ、Tシャツ、リストバンド、パンツ、草履をどれにするか、それぞれの品物について三案が示された。先日の梨花ちゃんと美希ちゃんと愛ちゃんの三人の打ち合わせのメインがこれだったのかと、私は一人納得した。
ステージの端から端まで並べられた実物の衣装等から、皆で選んで多数決で決めるという。たちまち皆に高揚感が広がった。PRを兼ねた業者の説明を最初は皆静かに聞いていたけど、それぞれが半纏や鳴子などを手にして選び始めると、間に入る業者の声より皆の声の方が大きい。でもさすがに専門業者だ。アドバイスに成るほどと思う。
「観衆の目は半纏、ハチマキ、リストバンド、鳴子に集中します。、その線を統一した色合いにした方が良いです。見ている方の注目を集めます」。
賑やかな皆の意見でそれぞれの品物が決まるまでに小一時間はかかった。梨花ちゃん達ご苦労さん、そう心で感謝して集まった皆より先に教室に戻ると、そのまま帰りの途についた。明日は朝から自動車教習所だ。今日は早めに就寝しよう。