(サイカチ物語・第二章・葛西一族の滅亡・2)

 

   父が半ば呆れて認めることにした条件は私の身の安全性の確保を考えてだろう、高速道路を走れる仕様車はダメ、二人乗り出来るものはダメ、購入費用は自分で賄うこと、行き先は必ず言ってから出かけることだった。

   一番後の行き先を言ってから乗ることは購入した後のことで、購入を認めるための条件になっていない。購入費用のことで父母はあるいは諦めるかもと思ったのかもしれない。でも、私にだって百万円とまではいかないけど小さい頃から貯めたお年玉やお小遣いの貯金がある。その点では父母の狙いをはぐらかすことが出来る。

 ゴールデンウイーク後半に入った今朝に、インターネットで調べながら、かかる経費の予算を組み立ててみた。オートバイの購入代金に手続き等の諸経費。それにヘルメットやグローブ代などで三十五万。自動車教習所にかかる経費を含め総額五十万円以下でなんとか収めたい。

 小父さんに薦められたスクーターは私にとって返事はノウだ。店頭に並んでいる先ほど見た中で、既に乗り回している梨花ちゃん美希ちゃんと同じ車種だし、父が(ささや)いたとおりになるけど私はスーパーカブに決めている。

 そのことを小父さんに言うと、今、最も売れているからねと言いながら、私がさっき見ていたオートバイが並ぶ店頭に出た。

「原付自転車でビジネス用だけど性能は良いし小回りが効く。フレームを低くして女性がスカートのまま(また)ぐにも手頃だね」。

原付自転車でビジネス用。おまけにスカート履いて乗るなんて聞かされて、ヘルメットを被り颯爽とオートバイに跨がる髪の長い女性をイメージしていた私はちょっとがっかりした。後でカタログを見ると、私が無知なだけでスーパーカブ五〇・スタンダードは道路運送車両法では「第二種原動機付自転車」と呼ばれる区分に入るらしい。でも、格好良く見えるし、スクーターよりはるかにオートバイらしい。熊谷君のヤマハのセロー、及川君のホンダのPCX、私のスーパーカブ、三台が並んで走る姿を勝手に想像して見た。

「今、シート高は七三五ミリあんべ(ある)。あんだ(貴方)の身長は?」

「私の身長は一五七センチ」。

 身長に合わせて座席シートを調整するのだと知った。購入するカブのボデイの色を決めると、始動方式がキック式。三段変速。重量九五キロ。最高時速六十キロ。二人乗りは出来ない。高速道路は走れないと一通りの説明があって、店の中に戻った。

小父さんに聞かれるまま指示されるまま、氏名や生年月日、必要書類へのサイン等を行い、説明のあった自賠責保険や任意保険のファミリーバイク特約への加入等の費用も含めて総額二十三万円程になった。

 後は、免許を取ってバイク引き渡しの日に自分の好きなヘルメットやグローブを選ぶことにする。改めて小父さんに貰ったスーパーカブのカタログとヘルメット等小物の載ったパンフレットの冊子を持って店を出た。私は、次ぎにお店に来る楽しみを胸に抱えた。

 私の住むこの町に自動車教習所はない。隣町の千厩(せんまや)か、反対方向になる一関(いちのせき)市内の教習所を選択することになる。一関はやっぱり遠い。千厩行きのバス時刻表を確かめると、土日祝日運行スケジュールの始発は八時十一分とある。これを逃すと、次のバスはお昼の十二時六分まで無い。

 午前八時十一分のこのバスに何が何でも乗りたかった。普段と変わりない時刻に起床して朝食を済ますと、筆記用具や手帳、眼鏡、学生証、保険証、それに一昨日(おととい)学校の昼休み時間に抜け出して役場で取った住民票をリュックに押し込んで、運動しやすい白のデニムパンツにスニーカー姿で急ぎ家を出た。インターネットで調べた「せんまや自動車学校」とある教習所に着いたら、入所に必要な手続きをとって今日のうちに受講出来る学科と実技教習を受講するつもりでいる。バスは快調なエンジン音だ。

 父や母には昨日の夜に、スーパーカブを買うことにしたこと、必要な保険に加入したこと、その他の後の手続きは後藤自転車・オート販売店に代行手続きを依頼したことを報告した。そして明日からの連休、金土日を免許をとるための時間に当てると宣言した。