(サイカチ物語・第一章・ルーツ・16)
五
職員会議が終わってトイレに立った帰りの廊下で、後ろから先生と声がかかった。熊谷君の声だなとすぐ分かったが、振り返ると、及川君、千葉さんと三人が立っていた。
「今日三人で話し合ったこと、決めたことを部活ノートにまとめてあります」。
手渡された。
「見させて貰うよ」。
「先生、吾妻鏡をまだしばらく借りていて良いですか?」。
「ああ、勿論いいよ。それより読んでいる時間が無いだろ、受験勉強優先に考えてくれよ」。
彼らが帰るのを見送ると、席に戻って、新しい今年度の部活ノートを改めて見た。表紙に部活ノート、平成十九年度と二段に書かれ、下の方に離れて新聞部とある。開くと四月六日の次が今日の日付の二十五日になっていた。始業式の日以来の討議のある部活日だったらしい。そこには藤高新聞最終号の発行作業スケジュールとあって、七日の日に話し合った大まかな日程が、整理したのだろう、月単位で示されていた。また、「生徒の未来に向けた発信」を次回の時に引き続いて検討しようと投げていた課題に、生徒全員に将来の夢と目標をアンケートで回答して貰い、掲載するとあった。
◎藤高新聞最終号発行スケジュール
一 五~六月 学校の歴史を拾う。過去の学校新聞の点検。三十周年誌など各周年記念誌を活用。写真も活用、収集。
一 六~七月 先輩達の事跡で、活躍の記録を抽出。運動部も文化部も地区大会や県大会以上で優勝~三位入賞を対象。地元同窓会や関東同窓会を通じて先輩達のコメント、思い出を募る。
一 八~九月 在校生の夢、将来の目標を、様式を決めてアンケート調査し回答を得る。全生徒を対象とする。要説明と理解。
一 十月 学校新聞に載せるものの選別。大まかな編集レイアウトを決める。
一 十一月 校長、現教諭、職員から廃校に当っての言葉をもらう。
一 十二月 レイアウト確定、最終編集、印刷・発注、ゲラ校正
一 一月 校正
一 二月 発行
無理だ、発行スケジュールは作業スケジュールでもある。受験勉強にかなり影響する。生徒が発行する学校新聞ではない。見て、そういう気持ちになった。既に年一回の発行とすることは校長の了解を取ってある。しかし、その問題以前に受験優先で考えれば今年の秋以降は受験勉強で彼らの頭が一杯一杯だろう。それなのに、新聞発行の編集作業のメインが十月から十二月では影響が大きい。大学入試のセンター試験は毎年一月半ばだ。
またペーパーに落としてみると、学校の創立、全日制への移行などは学校史であり、先輩達へ連絡して輝かしい事跡にかかるOBのコメントを貰うのも学校史に近い。最終号の学校新聞は事務室の編集であるべきだ。及川君や熊谷君、千葉さんは昨年までの部活による新聞発行方法と同じに考えれば、やることは予め様式を決めて生徒からアンケート調査の回答を得る、その取材部分だけである。私は改めて彼らに詫びると共に、校長と教頭に藤高新聞最終号は事務室主体で発行すべきことを主張せざるを得ない。
先程終わったばかりの職員会議では、よさこいソーラン部は部活というよりも生徒全体の集団体操に位置づけて原則全員参加としたらどうかという意見も出された。しかし、衣装や鳴子など小道具の経費を誰が負担するのかが問題になり、結局、部としては認めるが他の部と同じように生徒の自由意志の参加であること、必要経費の一部は部活として校費予算の補助対象とするが、衣装等は個人負担となった。生徒にはダブル部活を認めると伝えることにもなった。