◎サイカチ物語のあらあらの筋は次の通りです。第一章から第八章になります。
〇第一章、ルーツ。廃校を翌年の春に控える高校の新聞部所属の少年(熊谷準、及川俊明)・少女(千葉京子)と部活担当の教諭との交わりが中心です。そこで、岩城教諭から生徒や町の人々に多く見られる氏姓のルーツについて語られます。
〇第二章、葛西一族の滅亡。学校新聞最終号に載せる記事の一つとして、最後となる生徒がそれぞれに自分の将来の夢、目標を語ります。
その一方、生徒や町の人々の氏姓に多くかかわる葛西氏がなぜ鎌倉時代から四百年後、千六百年を前に突然滅亡したのか、伊達政宗の謀略が語られます。
葛西一族はサイカチの木を家の門柱に飾ったり、木そのものを庭に植えたりしてここに葛西ありとお家再興を願うのでした。サイカチの木は「葛西、勝」をもじったものでした。
〇第三章、野焼き祭り。及川俊明の幼馴染であり同級生の佐藤美希の発案で、夏休みに葛西氏関連の古城巡りをしようと、町の最大のイベント、野焼き祭りの場で少年・少女は最終計画を確認します。また、佐藤美希の発病から及川俊明と彼女との間は友から恋人の関係になっていきました。
〇第四章、古城めぐり。千葉京子の親しい友人、高橋梨花も参加して男二人女三人が夏休みに葛西氏ゆかりの古城巡りをします。自分たちの運転するバイクでツーリング、キャンプの二泊三日の旅です。南に石巻の牡鹿半島、北に奥州藤原の郷まで、宮城県南、岩手県北を周遊します。途中、葛西氏滅亡からお凡そ四百年、現代にいたるまで代々墓守りをして来た古老の話を聞きます。その墓守りの方法とは・・・。
〇第五章、俺の嫁さん。佐藤美希の病気は若年性乳がんでした。その治療、通院等の手助けを通じて及川俊明と佐藤美希との関係は深まっていきます。及川の妹、明子とも親しい美希はある日、明子から手紙を受け取ります。その手紙を機に及川が美希に将来の俺の嫁さんと告白します。
〇第六章、文化祭。現代においても町の人々等に葛西一族が語られることはありません。謀略をめぐらして旧葛西領を手にした伊達政宗による徹底した歴史隠し、葛西隠しでした。
熊谷準は文化祭で、この土地が葛西領であったこと、平泉藤原時代から伊達の時代の間に四百年余も葛西氏時代があったことを同級生や、町の人々に知ってもらいたいと展示物にして発表します。
〇第七章、旅立ち。学校新聞最終号に将来の夢、目標を書いた少年、少女は、各地に旅立とうとしています。しかし、佐藤美希は天国に旅立ったのでした。
〇第八章、遂志。十年後、熊谷準と高橋梨花が結婚することになりました。ルーツや葛西一族を語った岩城先生、小学校の教諭になった高橋梨花、看護師になった千葉京子、美希の死を機に医者になった及川俊明が語られます。そして、医者になることを期待されていた熊谷準が大学職員として歴史研究に従事していくことになりました。そして・・・。