俺の言う生活都市の整備はそれぐらいの長い目で見て整備充実す(し)て行くごどだ。皆さんの協力があってのごどだ。地方創生、再生と言いながらこれぐらいのごどを考えでいる、実行できる政治家は今、居ないべ。今の日本を見でっと(見ていると)、俺は、将来日本は食料危機にも歪な多民族社会にもなりかねねャ(なりかねない)、今のままなら田舎は更に淋す(し)ぐなるど思う。
どうだべ?(どうでしょうか?)皆さん、俺の考えは年寄りの冷や水だと思うべが(思いますか?)」。
先生の急な振りに座が一層沈黙す(し)た。地方が廃れで行ぐど、言い出しっぺ(最初に言った)八重樫さんは先生を見でいるだけだ。畠山さんが先生のお言葉を受げで言った。
「いや、貴重なご意見だど思います。若者を引き付げる政策、魅力ある地方都市づくりの一例が語られでいるど思います。先に食料自給率のお話に技能実習生等外国人との共生社会を聞かせでいただいだのですから先生のご意見が理解できます。重ね重ね貴重なご意見をお聞かせいただいで有難うごぜャ(ござい)ます」。
先生の正面になる及川さんが、有難うごぜャ(ござい)ますと続いた。皆さんの拍手だった。一呼吸あって八重樫さんが言った。
「やっぱす(り)田舎は良え(良い)な。故郷は良え(良い)。自分達の生まれだ所が一番だべ(でしょう)。銭コは無ぐども汗水たらす(し)て働げば食い物には困んねャ(困らない)。俺達の若い者にも都会の若者にも田舎の良えどご(良いところ)を見直す(し)て欲す(し)い。安い空き家に休耕田休耕地、自然が待っているべ(よ)、自分のペースに合わせだ生活が出来っぺ。北国の春だ」。
少す(し)ばがりの笑いを誘った。すかさず及川さんの奥さんが、北国の春を歌うべ、と明るく元気に声を出す(し)て言った。そす(し)て誰の返事を聞ぐごども無ぐ席を立ってまた舞台に上がった。俺は最後の歌にすっぺ(しましょう)と声を掛げだ。腕時計は終了予定時刻の八時半を指す(し)ていだ。隣の畠山さんが頷いだ。舞台と俺達の席で、最初っから北国の春の合唱だ。舞台の方を見ながら、皆の顔を見ながら俺も歌った。
女将が持ってきた。先生から貰ったリンゴが一つを八つ切りにす(し)てデザートに出されだ。畠山さんが先生がらいただいたものだと皆に紹介す(し)た。皮つきのまま輪切りだったのは皮と実の間に栄養が有るからだ。ポリフェノールと言ったべが?。
計二万四千円のお金は刺身に一万、切り餅とあんこに約二千円使った。旅館側に一人当だり千円と計算す(し)ていだげど残った金の一円までを女将に手渡す(し)た。祝い桶のごどもあったがら畠山さんと話コしたけど、当初の予算で閉めるごどにす(し)た。皆には内緒だ。フロントに畠山さんと一緒に寄った時、俺の下手な言い訳を女将の傍で旦那が笑って聞いでいだ。
「何。一人当だり千円ど聞いでいです(し)たごどだ。それで十分でがす。お安いもんだ。雨風で少す(し)ばがりとはいえ土砂崩れがあっても、傍の川が増水しても、まだ大雪の降った時にも俺達の周りに何が有っても皆さんがこうして毎年ご利用す(し)てくれん(るん)だがら、俺こそ、こっつ(ち)こそ感謝、感謝だ」。
この湯治場の旦那はやっぱす(り)大将だ。