亡くなった同級生と親すぐす(しくし)でいだ同級生仲間に教えられだ、家族や勤めたハズの会社に問い合わせで暗に聞かされだ、匂わされで分がったど言っていだ。俺は知らながったげど一家心中で新聞に載ったのも有ん(るん)だど。それを聞いでつくづく人生って厳す(し)いな、人生って何だべ(何だろう)と思ったの。自殺す(し)た人の半分は都会に出た人、半分が田舎近辺に仕事を探す(し)た人だったって。都会で生きんのも田舎で生きんのも生きで行くのは楽でねャ(ない)ね」。
奥さんの話コに聞き入ったためもあんべ(有るだろう)。男四人は言葉が無ャ(無い)。
暗い話コになってゴメンなさい。奥さんの口調が変わった。
「今、町(役所)は健康づくりだ。適度に運動す(し)ましょう、生活の中に運動する習慣を持づ(ち)ましょうどが、食生活の改善、油、塩分を控え目にす(し)ましょうどが声を掛けでんべ(ているでしょう)。
何、年寄りは分がってん(る)の。だけどそれで何がを改善す(し)ようど意欲を見せん(る)のは七十代までなんですって。八十代になっ(る)と、そうだね。うん、うんで終わり。やる気欲が無くなるらす(し)い。そうなりたぐないなど思って居でもそうなるらす(し)いの。思考力よりも行動力が先に駄目になるらす(し)い。
役所の担当者に言わせ(る)と、そうならねャ(ない)ように刺激があるごどが一番なんですって。俺も家族の支え、子供孫に囲まれで駄目になん(る)のを少す(し)でも遅ぐす(し)ていがないどと思って行動すてる(している)。皆さんもそうす(し)た方が良え(良い)よ。由利さんが熟年結婚するってのも良えこったべ(良いことでしょう)」。
今度は男四人に少す(し)ばかり笑いが漏れだ。及川さんも畠山んも千葉さんも俺も首を縦に振っていだ。千葉さんの言葉だ。
「元気で頑張ってピンピンコロリが一番良がんべ(良いでしょう)、家族に迷惑かげだぐねャ、寝だきりになんねャ(ならない)でこの世どサヨナラすてャ(したい)もんだ」。
今度は話のピントがズレでいながった。
「もう、六時も十分前になる。餅を焼く時間だべ(でしょう)。お膳を並べる時間だべ(でしょう)。炊事場に行くべ(いきましょう)」。
及川さんの掛け声に皆が腰を浮かせだ。
四 膳の準備
「ここに居だが。イヤー、手伝うべど思って炊事場に行ったら誰も居ねャ(居ない)んでどうす(し)たのがど思った」。
そう言いながら由利さんが顔を出す(し)た。横に立つ女の人が黙って俺達の方に軽く頭を下げだ。由利さんが俺の嫁と紹介す(し)た。二日前に炊事場で何が刻んでリズミカルな音を出す(し)ていだ、ガスを使わせていただいて良え(良い)ですかど声を掛げで来た時にチラッと見だ女性だ。薄化粧に薄い口紅だげど顔の色つやから由利さんと何ぼ年齢が離れでいんだべ(いるのだろう)と余計な推測に頭が働いだ。五十歳前半、二十は違うべど思った。俺の横に立つ畠山さんもちょっと驚いだ顔をす(し)ていだ。及川さんの奥さんよりも若いべ。その及川さんの奥さんだ。
「及川です。こっつ(ち)が主人。千葉さんに畠山さん、千葉さん、あっ、前澤の千葉さん、こっつ(ち)が一関大原の千葉さん」。
言葉を戻す(し)て俺を紹介した。
「よろしくお願いします」。