「まだ抗癌剤を飲んでいる所に今度のコロナだったら俺はイチコロだべ」。
少し笑みを見せながら畠山さんだ。及川さんの奥さんが言った。
「主人もこの間、五月末に市の定期健康診査を受けでガンマー何とがの数値が高くて、酒コを控えるようにって、肝臓が少す(し)悪いって忠告されだばがり」。
本人は湯飲みを手にす(し)たまま首を縦に振りながら聞いでる。お茶を啜っていだ千葉さんが言った。
「俺は幸い今ん(の)どごろ健康診査に引っかからねャ(ない)。定期健康診査は必ず受けているべ(よ)。秋には自己負担で人間ドッグに入って、それがらこの湯治場に来でんだ」。
その千葉さんが続けで年金の話をす(し)だす(し)た。
「健康を維持すん(る)にも金がかがんべ(かかりますね)。診察料に検査料、薬代に通う車代、ガソリン代。
俺は支給年齢に達す(し)たどがで通知があって一昨年から年金を貰うようになった。月に六万も無ャぐれャ((無いぐらい)のもんだ。今年の四月分からは女房も貰えるようになったけんど、月に六万欠けるべ(よ)。二人で二カ月に二十一、二万貰ったって月にすっ(る)と十一万円ちょっと。米コ作りで秋に何ぼが収入があっから良え(良い)げどそれが無がったら人間ドッグ何てとでもとでも、掛かれねャ(ない)。年齢を取れば病院通いに薬に頼るごどが多ぐなって当だり前だけんど、年金額の割に国民健康保険料と介護保険料が高くねャ(ない)が?」
「んだ(そうだ)。俺の周りも年寄りばがりで年金生活(者)だらげだ。年間に二十二、三万円も納めなければなんねャ(ならない)国民健康保険料に、二人で十万もする介護保険料の納付では年金がさっぱり生活の支えになんねャべ(ならないよ)。
所得に応ず(じ)ての国民健康保険料だ介護保険料だって役所がら説明されで分がってっけど(分かっているけど)老後の豊がな生活、安心できる老後のために何て年金制度の枕詞は嘘八百だべ(でしょう)」。
畠山さんの言う言葉にみんなが頷く。及川さんの奥さんが相槌を打った。
「周りは年金だけでは生活が出来ねャ(ない)、貯えもねャ(ない)って人が多いの」。
俺もその口だと思いながら後を言った。
「田舎では年寄りに良え(良い)仕事っつう(という)のも無ャす(無いし)な。シルバー人材センターも仕事探す(し)に困っているっつう(という)話だ。
俺達に出せる仕事が有れば出すげども今では苗代を作るにも田植えにも機械だす(し)、田んぼの草取りは泥に足を取られだらど危なくて頼めねャす(ないし)、田んぼの周りの草刈りも危なくて草刈り機を任せられねャ(ない)。こうなっと(こうなると)機械化も良す(し)悪す(し)だな」。
「道路工事があっ(る)ど交通整理つう(という)の?、工事の現場周りにヘルメット被って炎天下に一日突っ立っているお年寄りを見がげるごどあっぺ(あるでしょ)。
あれを見で政治家って何とも思わねャ(ない)のがすら(かしら)」。
奥さんの言葉を聞いた畠山さんが珍す(し)ぐ興奮す(し)ているように見えだ。そす(し)て言った。
「老後の生活はその人の今までの生活の延長だ、自己責任だ何て言い放った政治家がいだげど、政治は過去じゃなかんべ(過去ではないでしょう)、今をどう支援するが、今の生活を国が如何守るが、国民の今の生活を将来に向がって如何安全、安心に導くがだべ(でしょう)。過去は皆有る。それがどうだど問題にするようなごどでなかんべ(ないでしょう)」。
「国民年金を貰っている俺達は月に五、六万で、会社勤めをす(し)ていだ人が十五、六万円って聞いだけど、本当だいが(でしょうか)。それもおかす(し)な気がする」。
千葉さんの疑問だ。