「土曜日で他の組の宴会が入っていんでねャが(いるのではないか)?」。
と八重樫さんだ。
「いや、旦那がコロナコロナ騒ぎで利用客がいねャ(いない)ってこぼす(し)てだ。他県移動がやっと解除されだばかりだものコロナ患者の出でいない岩手だって言っても客が来ねャ(来ない)んだど。やっと埼玉から三人のご婦人が二泊で旅館部の方に泊ってくれでるって喜んでだぐらいだもん(の)、空いでるさ。
旦那に聞いでみる。それより皆はどうだ。テーブルに椅子が良いのが畳に座る方が良いのが、どっちにする?」
「椅子にテーブルで良いべ。その方が楽だべ(でしょう)」。
「年寄ばかりだもの畳より椅子だ。足腰に良かっぺ。楽だ」。
八重樫さんと俺がテーブルと椅子にすっぺ(しましょう)と言った。俺が付け加えた。
「コロナ騒ぎで三蜜を避けるごどって言われでっ(る)けど、今回は勘弁す(し)てもらうが」。
「何、皆知った顔だ。熱があるどが具合が悪いどが聞いでねャ(いない)がら換気はするだどもマスク無す(し)、お近づきで良いごどにすっぺ(しましょう)」。
「土曜日の何時頃がらにする?」。
「皆歳取って寝るのが早くなってんべ(なっているでしょう)。九時半になるど床に就いでっぺ(就いているでしょう)。ん(そう)だがら夕方六時半がら八時半でどうだ。解散す(し)て風呂に入りでャ(入りたい)人も居るべがらその時刻なら風呂に入っても九時十時には床に就けるべ(でしょう)」。
俺の質問に八重樫さんが答えを出す(し)た。
「それで決まりだな。土曜日六時半がら八時半、先生ご夫妻に千葉、八重樫、由利に俺、場所は四階の大広間の一角、旅館の旦那との交渉は俺。交渉結果は千葉さんに俺がら連絡する。千葉さんは佐々木先生の了解を取ってけろ(くれ)」
「分がった。先生に話す(し)てみで、駄目だったら俺が二人に連絡するべ」
「今日の夜、寝る前にお風呂に入っぺ。七時半にお風呂で待ち合わせす(し)て結果を報告するってどうだ」。
八重樫さんの提案だ。畠山さんが同調す(し)た。
「あっ、それが良い。三人、七時半に大風呂の方に集合にすっか」。
「いや、黄金風呂の方にすっペ(しましょう)。俺はいい夢をみるために、寝る前のお風呂は黄金風呂と何時も決めでんだ」。
「へー」。俺と畠山さんが一緒だった。
小皿に小分けす(し)たアルマイト鍋を持つのは窮屈そうだったげど二人は器用に、心配無ャ(無い)と言って炊事場を離れだ。聞けばご婦人は二つのガスコンロを使って味噌汁と御飯を作っていると応えた。それから俺も鍋を両手に持って離れだ。