八重樫さんが頷ぎながら言った。
「分がった。だども(だけど)昨夜の今晩では声を掛げでもらったけどお邪魔虫だべ。お互いにのんびりす(し)たくて骨休めにこごさ(ここに)来たんだがら、日を空げだ方が良えべ(良いでしょう)。皆は何時でも良いんだべが?(良いの?)」。
「俺も畠山さんも千葉さんも今回は一人だもの、お互いに何時でも時間は空いてっぺ(空いているでしょう)。やっぱす(り)夜の方が良いが?、夕食を一緒に食べながら、酒コ少す(し)飲みながらの方が話も進むべ」。
「土曜日の夜はどうだ。移動販売車が来るべ。刺身に何がつまみになるもの有っぺ。売店にあるものはそれで揃うげど、魚や生物はそん時に買えるべ。せっかくだがら美味す(し)いものがあった方が良いべ」。
「それも有るな。先生に聞いで、それで良いが確かめでがらにすっ(る)か」。
畠山さんの案に八重樫さんが同調した。
「先生が良いどなったら、何、俺が奮発すんべ(しましょう)。刺身を買うお金、一万か、二万か、銭子の方は俺に任せでおけ」。
畠山さんが首を縦にす(し)ながら言った。
「先生ご夫妻に、畠山さん、八重樫さん、それに俺の五人、それで良え(良い)が?」
「いや、由利さんが居るべ。昨日売店で会ったぞ」。
また畠山さんだ。
「俺も昨日お風呂で一緒だった。ん(それ)では由利さんをいれで六人。それで良え(良い)が?」
「ん、良えべ(良いでしょう)。ん(そう)だども六人一緒に八畳の先生ん所(の所)で食卓を囲むには狭ぐねャが(狭くないか)?」
今度は八重樫さんが言った。
「ごめんなさい。ガス、そろそろ使わせでもらって良いですか?」。
横からご婦人の声だ。
「あっ、どうぞどうぞ。三っつも空いでっ(空いている)からどうぞどうぞ。俺達が邪魔だべ(でしょう)」。
俺がちらっと見だ顔はまだ五十代前半だべ(だろう)。三人が廊下側の出入り口に寄った。八重樫さんが鮭の小皿を持ったままだ。畠山さんの目玉焼きの皿は消す(し)たガスコンロとガスコンロの間にある。俺の鍋も湯気を吹き出す(し)始めだがら火を消す(し)てそのままだ。
ご婦人は俺の鍋の横の空いでいだコンロに小ぶりのアルマイト鍋を置ぐど火を点げだ。一瞬、青白い炎が鍋の底の周りを囲い、ご婦人がガス栓を調整す(し)た。それからガスの燃えるシューという音だけが微かに聞ごえる。ご婦人はそのコンロの前に立った。途切れた話に畠山さんが戻った。
「四階の大広間有るべ。あそこはなんぼが(幾つか)に仕切るごどが出来るようになっていでテーブルと椅子も利用できるようになってっぺ(なっているでしょう)、舞台やカラオケのある方でなくても良えべ(良いでしょう)。旅館の旦那に話す(し)てみっぺ(みる)」