「酒コばがりでは駄目だべ(でしょう)。食べてけらいん(食べて下さい)」。
奥様が先生のお椀をまた手にした。肉と白菜を入れ、ご飯はまだですか?と聞く。先生はまだ良え(良い)と言ってお椀の汁を一口すすり、肉を口にす(し)た。白菜、焼き豆腐も口にす(し)た。それからまた酒コをちょぴっと(ちょっと)飲んだ。
「手が足りねャ(ない)、後継者が居ねャ(ない)。俺達の身につまされる現実だべ(でしょう)。ここ何年と農家の抱える問題だ。それで外国人労働者が農家に入るようになってもう何年にもなる。ん(そう)だども今までの外国人技能実習制度は実習が建前だったべ(でしょう)。研修生の名目で来たべ。日本が協力す(し)て開発途上国の人材の育成を図る、国際協力、国際貢献を目的に掲げでいだ。ん(そう)だども実際は安い労働力とす(し)て受け入れ使ってきたべ(でしょう)。
実習、研修が建前だがら実習生になる外国人は他の業種や外の土地に移るごどが許されねャ(ない)。就農す(し)た所がら移動できねャ(ない)。外国人を一づ土地に縛りづげで来たべ(来たでしょう)。それを良いごどにす(し)て低賃金労働や人権無視、実習生の失踪など様々な問題を起ごす(し)た受け入れ企業や農場があったべ。名目上の賃金は高くても家賃だ、食費だ、娯楽費だと色んな名目で不当に経費を差す(し)引いで手取り額を低ぐする、法で決められだ計算よりも安い賃金で遅くまで残業を強制する、雇い主のパワハラ、セクハラ問題など、そったなごど(そうしたこと)を伝えるテレビの特集を貴方も何回か目にす(し)たごどあっぺ(あるでしょう)。
す(し)かも実習生は実習期間の三年、延長す(し)ても五年、その期間が終わるど母国に帰国す(し)なければなんねャ(ならない)。日本に残る、残留する方法が無が(か)った。貴方もそれは知ってんべ。ん(そう)だども、入管法(出入国管理法)が改正されで去年の四月がら技能実習制度に特定技能者だどが(とか)言う在留資格制度が加わって始まったべ。」
「去年の確か六月だったべが(だったでしょうか)。二〇一九年法改正だって、四月がら施行されだって農協主催のセミナーで一応、特定技能者制度って言ったべが。それを学ぶ勉強会があったべ。俺は出席す(し)ながったども(けれども)、息子が聞ぎに行った。息子が貰ってきた資料をなんぼが(いくらか)見だげど息子に任せで俺は詳す(し)ぐ見ながったべ(よ)。」
「んなこど(そんなこと)では駄目だべ(でしょう)。千葉さんは歳なんぼだ(何歳になる)?。」
「団塊の世代。昭和二十二年の生まれで七十二、今年には三になっぺ(なる)。」
「俺と十歳も若いんだがらまだまだ現役で頑張らねャど(頑張らないと)。十年たっても生きていんべ(いるでしょう)。その十年経ったら俺達の周り農村にも外国人が今以上に見られるようになっぺ(なるでしょう)。息子さんに任せでいるだけでは駄目だ。貴方達が一緒になってより良え(良い)多民族共生社会を創っていがなぎゃ駄目なんだ。傍観者ではねャ(ない)ぞ。俺は生きでっか(生きているか)如何が解んねャ(解らない)げどもな。」
「先生は十年経ってもまだまだ元気でがす(でしょう)。百歳まで生きっぺ(生きるでしょう)。頑張ってくんさい(下さい)。ん(そう)だどもタミンゾクキヨウセイ社会って何だべ。改正された特定技能者制度と何の関係が有んだべが(有るのでしょうか)。」