エアコンを入れようがどうがど迷ったけど、網戸のある窓を開け外の空気を入れだ。側にある洋服棚の扉を開げで自分で準備す(し)て持って来た下着類に靴下を下の方に広げ、替え上着にもなる半袖、長袖のシャツをぶら下げだ。それから冷蔵庫に持参す(し)た容器入りのままの味噌、醤油、塩、砂糖と七味唐辛子に御酢の小瓶を並べだ。ビニール袋一づに入っていたツナ缶と鯖缶と、梅干しに乾燥海苔、納豆、カレーの固形ルー、マーボ豆腐の素、それに女房が茹でであく抜きす(し)たタケノコのビニールを取り出す(し)て棚に並べる。ポン酢、みりん、料理酒、出汁の素の入っていたビニール袋を見だ時には、いつもこんなものも持ってきていだのがど思った。二人で来ている時はあまり気にもす(し)いなった。長ネギを入れだげど野菜庫はガラガラだ。持って来た去年の秋のジャガイモ五個と玉ねぎ五個を入れで段ボールを冷蔵庫の横に置いだ。後で買って来る大根、ニンジン、里芋にゴボウが入るげど十分な大きさだ。
食器棚の大きな空きスペースには精米す(し)てきたばがりの去年の秋の米を袋のまま置ぎ、布に包まれであったどんぶり一つにお椀一つ、お箸一膳、スプーン一つ、幾づが入っていた割りばす(し)を棚に並べだ。湯飲みが今回は一つだ。女房が持たす(し)てくれだ。洗面所には自分で用意す(し)た歯ブラシと髭剃りを置いだ。鏡を覗いだ。去年よりもまだ皺が増えだべがと思う。白髪の増えだ頭は間違いねャぐ(間違いなく)まだ薄ぐなっていた。
座って一息つぐにもお湯が要る。そう思って炊事場にある給湯室に行ごうどす(し)たら卓上のポットに既にお湯が入っていだ。ポットと急須とお盆は旅館のものだ。持参す(し)た茶筒を開けようとす(し)て、一瞬、女房の顔を思い出す(し)た。
移動販売車が来るのは三時半。腕時計を見るどまだ三十分はある。お茶を飲みながら手帳のメモ欄に取り合えず買うものを書き出す(し)てみだ。大根、ニンジン、里芋、ゴボウ、干す(し)シイタケに凍み豆腐、キャベツにナス、キュウリ、それに豚肉、鶏肉。鮭の切り身、刺身わかめ。好物の焼き竹輪とさつま揚げに油揚げ、豆腐、増えるわかめは旅館の売店にもあるべ(有るだろう)。卵と牛乳も売店にあるなど思う。
女房にニ、三日何時でも食べられるおかずに煮す(し)めを作れど言われだ。よく見るどその材料を先に書きだす(し)ている。そう思いながら凍み豆腐は売店にもあったなど思いだす(し)た。自家用車で来ん(る)なら自分家で穫れだ秋野菜の大根、ニンジン、里芋、ゴボウを室から出す(し)て積んで来ん(来るの)だげど息子夫婦に遠出の運転を諫められでいる。女房が息子に加担す(し)て何時もこの湯治場に来る時は電車だ。野菜の重さと自分の体力で計って背負ってきたものが限界だべ(だったろう)。足りながったら後は明々後日、土曜日にまだ買えば良え(良い)、泊るのは一週間だげだ、俺一人だげだど思う。キャベツにナスやキュウリにトマトはまだ地元では採れねャ(ない)。高かんべ(高いだろう)。
まだ少す(し)時間がある。そう思って座布団を枕に畳の上に大の字になった。今年の春も無事に終わったなど田や畑が思い浮かぶ。無事に収穫の秋を迎えでくれればど思う。来る道にご婦人方が言っていだコロナコロナの世の中の騒ぎも収まってくれればど思う。