自分は転職を3回しているので、よく他の会社との違いについて聞かれることがある。

だいたいいつも、いまの会社はいろいろちょうどバランスが良いから気に入っていると答えているのだが、

いちどもうすこし掘り下げて考えておきたい。

 

 

まず最初の会社は、日本のプラント建設会社で、自分はプラントの設計の仕事をしていた。

取り組んでいるプロジェクトはだいたい海外の数千億円規模のビッグプロジェクトで、

そういう仕事に取り組むことが誇りであった。

 

仕事は忙しくて厳しかったが、概して社員の仲がよくて、

海外の顧客と渡り合いながら大仕事に取り組むことにみなやりがいを持ってやっていた。

 

世界を舞台に活躍できている感じがしていた。

問題は、忙しすぎて会社の仕事以外のことが見えなくなってきたこと、

またプロジェクトの規模が大きいため、担当する範囲も非常に狭く、非常に限られた部分の仕事をひたすらやる感じで、

面白さを感じにくくなってきたこと、その部分に人生全てを使うのが辛くなってきたことで、結局転職することになった。

 

明るく前向きで特攻隊のような人が多いので楽しいが、視野が狭くなりがち、報酬がそれほどよくない、

それはそもそも、それほどインパクトのある仕事ではないからである。

 

そもそも、基本は、金額は大きいものの、

あるていど決まったルールのなかでいかにうまく設計するか、作るか、という仕事なので、

新技術のプラント建設のようなプロジェクトでなければ、

設計をしているかぎりはそれほど付加価値の高い仕事ではないことが多い。

 

やはりプロジェクトや建設で、実行力を発揮する部分が会社の強みであり付加価値の高い部分。

1プロジェクトの規模が大きく、金額も大きいし期間も長いので、人生で数えられるほどのプロジェクトしか

プロジェクト経験をつめないのだが、そのプロジェクトマネジメントや建設を担って仕事をするのが

プラント建設会社の醍醐味である。

 

 

二つ目の会社は、

日本のユーティリティ企業で、私が担ったのは、同社の海外プラントへの出資・プロジェクト参画の部分。

ちょうど1社目でやっていたものと同じタイプのプラントへの出資であり、

2社目の会社はその経験に欠けていたため、1社目の経験を活かして仕事をすることができた。

 

ユーティリティ会社の特徴としては、基本的に電気・ガスを地域に安定供給するのが会社の意義であり、

安全・堅実に仕事を遂行するのが会社の文化である。

 

その分、それほど忙しくなることは多くない一方、報酬はそれなりに良くて、

言ってみれば美味しい仕事である。

 

ただし安全・堅実重視で従来の縦社会が非常に強く残っており、

組織文化はやや窮屈で、やりがいのある仕事はあまり多く無いのが実情と言える。

 

誤解を恐れずにいうと、大きな既得権益があり、それほど苦労しなくても収益を上げることができるので

組織内の変な力学が発生しやすい。

 

徐々に変わってきているとは思うが、根本的にそういう構造になっていることは否定できない。

 

そこに甘んじて生きていけば優雅な生活が送れる気はするが、

それはそれで窮屈さを感じ、挑戦を求めて離職することとした。

 

 

3社目に入ったのが、コンサルティング会社である。

 

2社目で米国駐在中にパートタイムのMBAに通ったこともあり、自分の興味の方向が

技術的なことから経営の方に向いてきたので、

経営コンサルタントを目指してみたいと思ったこともきっかけであった。

 

そこでは、短期間であったが、過去の経験を担って海外でのプロジェクト遂行の

技術コンサルティングであったり、新規事業開発のコンサルティングを担っていた。

 

コンサルティング会社の中身は、ほぼほぼ個人事業の集まりというような感じで、

非常にフレキシブルで働きやすく、報酬も良いが

ほぼほぼ個人事業みたいなものなので、短期的に結果を出すことが求められるし

結果が出ないとすぐに居場所がなくなってしまう。

 

そこにコロナ禍での環境変化が重なり、新しい仕事にキャッチアップするための

タイムラインが合わず、調子を崩して離脱せざるを得なくなってしまった。

 

今となってみれば、貴重な経験だったし、上手く回り出せば自分にあった仕事だと思うので

もっと頑張ればよかったと思うのだが、

 

当時の状況を考えると、離脱せざるを得なくなったことは、やむをえないと思っている。

 

常に新しいトレンドをキャッチアップしていかなければならず、

常に勉強しながらアウトプット、仕事をする、というスタイルで、

面白いが非常に多忙な仕事である。

 

報酬はよいが、時間あたりで考えると、それほどよく無いかもしれない。

 

ほぼほぼ個人商店のような仕事になるので、社内の文化は一緒に仕事をする人次第で全く異なる。

 

 

最後に入ったいまの会社は、日本の海運会社である。

 

海運会社では、1社目や2社目でやっていたプラントの製品を船で運搬するのが仕事である。

場合によっては、プラント自体を洋上に建設する場合もあり、

その場合は海運会社がその洋上プラントまで担うこともあり得る。

 

とはいえ、基本的にはモノを運ぶのが仕事の輸送業である。

 

海運会社の特徴としては、世界のマーケットが繋がっており

荷主がどこの国かによって仕事の取れやすさはややかわってくるが、常に国際マーケットの競争にさらされている。

そしてそのため、運賃はボラティリティが高く、景気動向によって大きく業績が左右される。

 

この点はプラント会社と同じである。

 

ただし、プラント会社と違うところは、海運会社は船というアセットを持って

常にオペレーションをしているので、不景気になったら新規契約は減るが

既存契約の仕事はあるのでそれなりに仕事があり続ける。

その点はプラント会社よりは安定している。

 

ただし、海を相手にする仕事であり、陸上よりも様々な危険が多く、リスクが多い。

 

その点は逆に、リスクを取る習慣が知らず知らずのうちに根付いているので、

業界を跨いでの勝負になる場合は逆に強みとなるかもしれない。

 

個人の仕事としては、

船は、一隻あたり数百億円規模で、プラントよりも一桁小さいので

一人で回す仕事の規模・責任が大きくなりがちである。

 

なので、一つ一つのプロジェクト規模はプラントの仕事よりも小さいのだが、

それを少人数で回さねばならないので、掛け持ちして対応したりしないといけないし、

社内レビューでも思ったよりきちんとレビューされずにそのまま通ってしまう。

(なので担当者がきちんとやらなければならない)

 

そういう文化があり、思ったよりも刺激的で、一方で多少の安定感もあり

色々経験した中で、働き手としては絶妙のバランスの環境だと思っており

初めてまだ4年目ではあるが、割と気に入っている。

 

できれば、今の所、この会社で10年から20年くらいは働きたい、と思っている。

 

そうそう会社を移ると、社内人脈形成や文化への適応など

諸々大変なので、ある程度腰を据えて働きたいと思っているのである。