誰にとっても死は怖いものであり、つらく、悲しいものです。大切な人にはできるだけ長く生きていてほしいと思うことは人として当然のことです。そして、いまだに死は縁起の悪いものとして忌み嫌い、苦しく、つらいだけのものととらえている人が多いのが現実でしょう。



でも、こうした考えはもう捨ててしまっていいのではないかと私は考えています。なぜなら、死というものは、けっして苦しいこと、悲しいことだけではないからです。



死とは人生において最後の大仕事です。生と死は切り離されたものではなく、誰もが死によってこの世での人生を完成させることができるのです。



そして、死にゆく人には次につながる生があり、死は残された人たちに人生でもっとも大切なことを教えてくれるのです。 どうして、そんなことがいえるのか……私はカトリックのシスターとして、またこれまで多くの人の死に立ち会い看取ってきた経験からも、その理由を本書でお話ししていきたいと思います。



(中略)


私は確信しています。死は不吉なものでも、忌み嫌って避けるものでもないことを。そして、死のあとには、やすらぎに満ちた至福の世界があることを。



ですから、どうか死のマイナス面ばかりを考えて、不安や恐怖や悲しみに囚われないでください。



この世界のすべてには陰と陽が存在するように、物事には良い面と悪い面があります。どちらか片方だけでは成り立ちません。両方が合わさって、この世界も、一人ひとりの人生も成り立っています。



物事の良い面を見ていくことが幸せに生きるための秘訣の一つであるように、死のプラス面に気づき、知ることで、死はあなたに新たな視点と価値を与えてくれるのです。




誰もがいずれ死を迎えます。しかし、死はすべての終わりではありません。そして死は、残された人に大切な意味や多くのメッセージを残してくれます。

 


死は人にとって、もっとも大切な人生の仕上げの時間です。そして、死の先に続く生があり、人は死後に次の世界に入っていきます。



そこで大切なことは、不安や恐怖、恨みや後悔などを手放し、この世での人生を完成させることです。ですから、大切な人を見送るご家族は悲しむだけでなく、死にゆく人が幸せに逝くためのサポートをしていくことが重要になってきます。




鈴木秀子

『死にゆく人にあなたができること』

あさ出版

〈著者プロフィール〉

あたまのなかで整理するため改行色づけ