「ベーゼンドルファーの音が好き」と漠然と言っても、各種のモデルがあり、また年代によっても音色は違うわけだからベーゼンドルファーの音を一括りにするのは簡単ではないかもしれないが、各社の特徴的な音というのは存在する。例えばヤマハのピアノの音は「キラキラした明るい音」だとか、カワイは「ダークでこもった音」だとか。スタインウェイは「キラキラした明るい音だけどキンキンした金属音の❝雑音❞の響き」が特徴的だとか。音を言葉で表現するのは難しく、あくまでイメージとして。

言うまでもなく、各社は自社のピアノの音の特徴をよく心得ていて、その特徴的な音にするべくピアノ作りをする。例えば、上に挙げたスタインウェイの「キンキンした金属音の❝雑音❞の響き」は、ピアノの構造上のものから来るらしい(ピアノの内部に使われている金属が共鳴する)。それがピアノの個性化である。だからこそスタインウェイは「キンキンした金属音の響き」を意識的に消さない。それが生のピアノである。雑音や共鳴音というのは、生のピアノである以上不可避なもので、それが味となる。この、生ピアノの音というのは電子ピアノでは絶対に再現できないものである、と言いたいところだが、ハイテクが発達した現在においては物事はそんな単純なものではない。例を挙げよう。自分の場合、所有の電子ピアノはKORGのGrandstage88鍵なのだが、この電子ピアノには数種のピアノの音が入っていて、KORGが名付けるところの「German Piano」がスタインウェイのグランドピアノの音にあたる。で、「German Piano」の音には例の「キンキンした金属音の❝雑音❞の響き」が再現されていたりする。

その他、ステージピアノの最高峰であるヤマハのCP1をはじめ、各社の一定価格以上の電子ピアノ(ポータブルでもアップライト型でもいいが)は生ピアノに極めて近い音がサンプリングされている。但し、生ピアノの持つレゾナンスはどうにもならないだろう。レゾナンスとは、ピアノの音がピアノ本体の共鳴板に対して響く音や、部屋の壁、床、天井等に対して響く音のことである。

生ピアノへのこだわりについては、例えばお気に入りのアーティストのライブがあった場合、できることなら生ピアノを弾いてほしいと思うが、運搬の問題で電子ピアノやシンセになってしまうことも少なくない。ソロピアノは言うに及ばず、クラシック系、ジャズ系のライブならバンドアンサンブルであっても生ピアノ希望、ロック系、ボップス系なら電子ピアノで構わないというところかな。

というか、この生ピアノのこだわりは、演奏者側のこだわりが大部分だろう。

で、本題のベーゼンドルファーだが、この会社のピアノの音色をはじめて意識的に聴いたのは、これまた所有のKORG Grandstageに入ったサンプリング音だった。Grandstageに入っている「Austrian Piano」というのがベーゼンドルファーのピアノ音色で、中でも「Austrian Piano Bright」というのが一際ベーゼンドルファーの音を際立たせていると思う。音の特徴を一言でいえば、「硬く上品な音」といったところ。鍵盤を叩くと音がコロコロと跳ねているという印象があり、小気味よく軽快に演奏するのに合っており、モーツァルトのいくつかのピアノ曲だったり、ショパンの子犬のワルツだったり、リストのいくつかのピアノ曲にピタリとはまるという印象がある。つまりいってしまえばクラシックに向いているピアノなのだ。もっと言えばクラシックに特化したピアノであり、逆に言えば、ロックやポップスに対しては汎用性がなく、ややもすればミスマッチになる可能性がある。そこへ行くと、スタインウェイの音色は、世界のピアノ音色のデファクトスタンダードとなっているだけのことはあり、クラシックからロック、ポップスとあらゆる領域をカバーできるピアノと言える。自分の場合、スタインウェイの生ピアノは弾いたことがなくあくまでGrandstageのサンプリング音で確認しただけなのだが、自分の拙い耳でも、これが世界のスタンダードの音であるくらいはわかる。即ち、「キラキラした明るい音を基調にしながらも、クセがない、飽きの来ない音」といったところか。それだけ昔から日常的に聴いている音色ということなのだろう。実際、Grandstageのピアノ音色ではスタインウェイを再現した「German Piano」ばかり弾いている。

かくも「German Piano」ばかり弾いている自分だが、ベーゼンドルファーの音も自分は意外と好きだったりする。

ベーゼンドルファーに関しては、自分は生ピアノを弾いたことがある。おととしの2021年の年末だったか、ヤマハの浜松店でベーゼンドルファーのグランドピアノを各種試奏できる催しがあってその際弾かせてもらったのだ。具体的なモデル名は忘れてしまったが(2021年末の時点での最新モデルなのは間違いないと思う)、あるモデルは、期待に違わぬものだったのは言うまでもない。例の、硬くコロコロとした上品な音というのはそのモデルでも同様だが、それよりも打鍵した時の弾きやすさが絶妙で(鍵盤は重くもなく軽くもなく)、自分のピアノが一段上手くなったような感じなのだ。因みに最後に断っておくが、自分はいつまで経ってもピアノが上手くならないド下手クソである。

 

ベーゼンドルファー試奏の時にヤマハからもらったクリア

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