分かっているんです。
きっと仕事。
きっと忙しいだけ。
佐藤さんは、そんな人じゃない。
何度も自分に言い聞かせました。
それでも、不安は少しずつ大きくなっていきます。そして、ふと頭をよぎったんです。
もしかしたら。
佐藤さんは、わたしに本気だった。
本気だったからこそ付き合ってくださいと言ってくれた。
本気だったからこそ、未来の話もしてくれた。
でも、一度身体を重ねてみて、自分でも想像していなかった心変わりをしてしまったのかもしれない。
少しずつ。
少しずつ。
わたしへの気持ちが冷めてきているのかもしれない。
そんな考えが浮かんだ瞬間、胸がギュッと締め付けられました。
違う。
そんな人じゃない。
そう思えば思うほど、不安だけが膨らんでいきます。
もし、このまま佐藤さんとも終わってしまったら。
40歳。
また一から婚活をやり直すの?
また何十人ともメッセージをして。
また傷付いて。
また振り出しに戻るの?
そう考えた瞬間、怖くなりました。
わたしは衝動的にスマホを開きます。
そして、佐藤さんと出会ったアプリではない、別のマッチングアプリをインストールしました。
登録を済ませると、数分もしないうちに通知が鳴ります。
「○○さんからいいね!が届きました」
一件。
二件。
三件。
気付けば次々と通知が増えていました。
その通知を見た瞬間、不思議なくらい、さっきまでの不安が少しだけ和らいだんです。
最低だな。
そう思いました。
佐藤さんのことが好きなのに。
それでも、誰かから必要とされているという安心材料が欲しかった。
ただ、それだけだったんです。
届いたプロフィールを何となく眺めます。
42歳、公務員。
穏やかそうな笑顔の人。
39歳、メーカー勤務。
休日はキャンプが趣味らしい。
43歳、バツイチで子どもはいない会社員。
「もう一度、本気で家庭を築きたいです」
そんな自己紹介が書かれていました。
何人かとは「初めまして」その程度のやり取りだけ始めました。
でも、画面を見ていても誰と話していても、頭に浮かぶのは、佐藤さんだけ。
比べるつもりなんてないのに、比べてしまう自分がいました。
そして、その時スマホが震えたんです。
画面に表示された名前を見た瞬間、わたしの心臓は、大きく跳ねました。
「佐藤さん」
次回へ続きます。
今回も読んでくれてありがとうございます。
