『リガの犬たち』 『白い雌ライオン』 刑事ヴァランダーシリーズ2  ヘニング・マンケル# | ミステリ好き村昌の本好き通信

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 『リガの犬たち』   刑事ヴァランダーシリーズ

 

 今回は、第2作と第3作の彼(ヴァランダー)が出会った事件と、彼をとりまく人々とのかかわりとその推移について、読んで感じたことを書こうと思う。

 

 第2作【リガの犬たち】は、射殺死体が乗ったボートがイースターの海岸に漂着するところから始まる。

 そこからラトヴィア(バルト三国の一つ)の、独立直後の現実と、そこに生きる人々の苦悩が、主人公ヴァランダーの視点をもとに語られる国際謀略小説的な展開となる。

 捜査協力してくれた、ラトヴィアの刑事の妻(パイパ)に対する恋愛感情も描かれていて、雰囲気は映画「007ロシアより愛をこめて」である。

 抒情的でロマンチックな中に描かれる内容は重い。好きな作品である。

 

 

『白い雌ライオン』   刑事ヴァランダーシリーズ

 

 第3作は【白い雌ライオン】である。物語のスケールはさらにアップして、南アフリカの「アパルトヘイト」の問題を根底に据えたネルソン・マンデラ氏暗殺事件の顛末が描かれる。

 発端はヴァランダーの管轄地域内で起こった、不動産業者の妻が失踪した事件であった。

 なぜ彼女は失踪したのか?捜査の過程で、その影にスウェーデン国内に潜入したアフリカ人殺し屋の存在が、明らかになっていく。

 ヴァランダー達の捜査過程と、南アフリカ国内の、暗殺をめぐる、緊迫した二大勢力の対立が交互に描かれ、サスペンスを盛り上げる。

 

 作品の構成力が素晴らしい!また、アフリカという地域や、そこに暮らす人々の考え方や生き方が、たいへん丁寧に描かれている。(作者マンケルは、かってアフリカで長期間生活していた経験を持つ)

 この作品で、ヴァランダーと娘のリンダの心が、だんだん昔の父娘に近づきつつある点も読みどころだと思う。