『兇人邸の殺人』 今村昌弘
剣崎比留子、葉村譲のコンビ第三の事件は、前作より四カ月後の話である。
敵役班目機関の研究資料が、とある寂れたテーマパーク内にある(そこはかって研究所として班目機関が使用していた土地建物だった)という情報が、剣崎葉村コンビにもたらされる。
その場所を、非合法的な手段を用いて急襲し、資料を奪取しようとする傭兵チームと共に、剣崎葉村コンビが訪れるところから、物語は始まる。
そしてそこには、思いもよらぬ真実が待っていた!
クローズドサークル【館】の複雑さと、主人公二人が巻き込まれるグループ内の殺人。
信じられない恐怖が彼らを襲い、一人また一人とグループの構成員が殺されていく恐ろしさ。
殺人鬼は誰か?そして、班目機関の恐るべき実験とその資料とは?
全てが明らかになる結末。登場人物の独白‥‥。班目機関時代の記憶の断面、追憶‥‥。(誰の?)剣崎、葉村の推理と両者の思い。
前二作を集大成したような、きわめて完成度の高い、クローズドサークルミステリの秀作である。今村昌弘氏は才人である。
一点だけ難をいえば(これは読む側の問題ですが)舞台となる館の見取り図とその構造が複雑すぎて、巻頭にある館の見取り図を、頻繁に見なければならない。かつ図形と空間把握が苦手な人(自分のことです)には、内部の様子と部屋の位置関係が、文章からイメージしにくいことである。
しかし、とにかくおもしろい!
お薦めの本である。