『プリンシパル』   長浦 京 | ミステリ好き村昌の本好き通信

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『プリンシパル』   長浦 京

 

 作者の名を世に知らしめた「リボルバーリリー」が映画化され、綾瀬はるか主演で大評判になった、長浦京の作品である。

 

 昭和20年8月15日~昭和30年12月6日までの、戦後10年間の日本が舞台になっている。

 

 主人公は元高校教師の綾女(あやめ)。彼女は日本全国最大のヤクザグループのトップであった父親の死を契機に、跡目を継ぐことになった。

 終戦の翌日から、綾女たちのグループは、対立していたヤクザグループから、攻撃を受けるようになる。抗争の始まりである。

 政界、財界、GHQなど、戦後日本を自分たちの思うように支配しようとする団体や組織が、ヤクザグループと手を組み、他勢力との駆け引きや闘争を続けていく。

         

 対立する組織が共闘したり、裏切ったりするのが日常茶飯事になってしまった戦後日本社会。

 その中で、一家と国のために、あらゆる能力を絞り出し、生きていこうとする綾女‥‥。

 強烈なハードボイルド作品である。

 

 読みだしたらやめられない。まさに無明の闇を、常に死と紙一重で歩んでいくような綾女の姿に、圧倒される。

 長浦京はすごい!描写のすさまじさ、迫力に目が眩むばかりである。

 

 ラストシーンの壮絶さに、言葉をなくした。