神田紅梅亭寄席者帳シリーズ 『芝浜謎噺』 『三題噺 示現流幽霊』 愛川晶 | ミステリ好き村昌の本好き通信

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芝浜謎噺

 

 表題作【芝浜謎噺】は、この「神田紅梅亭ー」シリーズのベスト作だと思う。

 福の助の弟弟子亀吉が、独演会を故郷でやることになる(死期が近い亀吉の母のため)。そこで古典落語の名作「芝浜」の改作に挑む福の助。

 一方紅梅亭では、花火事件とダイヤモンド消失事件が起こる。

 

 「芝浜」の改作とダイヤモンド消失事件が、見事にリンクして、作者愛川の意図する、落語とミステリの融合、及び人情物としても出色の一遍になっている。

 また、同作所収の【試酒試(ためしざけだめし)】は、山桜亭馬春が脳梗塞を患っていながら弟子のために高座に上がる「人情物」として泣ける作品になっている。

 

 

 

三題噺 示現流幽霊

 

 表題作【三題噺 示現流幽霊】は第1シーズンの最終作である。(この作品以降、作者は5年間このシリーズを執筆しなかったので、この作品までを第1シーズンとする)

 【多賀谷】は詐欺師のマジックを見破り、古典落語「たがや」の改作とリンクしていて、快調な出来である。

 

【鍋屋敷の怪】は、脳梗塞で療養していた師匠山桜亭馬春が高座復帰する日。『雪の密室』に閉じ込められていた福の助などの主要登場人物たちが、開演時間までに紅梅亭に到着できるか否か?という、スリリングな展開を絡めた作品。

 馬春の高座復帰は成功するのか?福の助たちの運命は?

 フィナーレは何と・・・! ご一読を。