【柔道部物語:大学近くの超大盛焼きそば】
我々が学生時代を過ごした昭和の終わり頃、まだまだ貧し学生もたくさんおり、そんな貧乏学生が泣いて喜ぶほど、お安くご飯を提供してくれるお店が存在していた、懐かしい思い出を今回は、話したいと思います。
大学の最寄り駅をおりて、駅前通り脇の路地を入った所にある、小さな定食屋さんには、天ぷら定食や生姜焼き定食などは、¥500-程と普通の値段でしたが、ソース焼きそばだけは、大変安くて、普通盛り¥250-・大盛¥350‐と当時でも、ありえない程安く貧乏学生のおなかを満たしてくれていました。
特に大盛焼きそばは、大皿に富士山の様に盛られて、柔道部や相撲部でもなんとか食べ切れる量のチャレンジメニューで、一般の学生食は、食べきれずに持ち帰りをしている者も数多くおりました。
この焼きそばは、具など皆無状態で、輪ゴムの様なソース焼きそばでしたが、値段がありえない程、安かった為、我々貧乏学生のとっての聖地と化しておりました。
4年生のある日の午後、下級生(1年生)が、具合悪そうに寮の廊下を歩いている姿を見かけたので、心配して様子を聞いた所、先程の定食屋さんへお昼を食べに行った所、たまたま柔道の神様が偶然おられ、大盛焼きそばを食べておられた様で、後輩の姿を見かけて、同席する様に言われたので、向かい側に座ると、柔道の神様は、後輩の為に大盛焼きそばを注文してくれたそうです。
本人は、てんぷら定食を食べに行ったのですが、先生が大盛焼きそばを注文されたので、食べなければならない状況になってしまいました。(ある意味罰ゲームです)
先生のお皿は、明らかに大盛り焼きそばを食べ終わった様で、70歳近いのに、大食漢が食べきれない程の大盛焼きそばをペロリと食べていたことに、柔道だけでは、無く胃袋も史上最強である事を思い知らされたそうです。
後輩は、先生が完食しているのに、自分が食べ残す事は出来ないと覚悟を決めて、軽量級(60㎏以下)にもかかわらず、死ぬ気で食べ始めました。
やっとの事で大盛焼きそばを食べきった後、先生がニヤニヤしながら「てんぷら定食も追加するか?」と聞いてきましたので、丁寧に辞退すると「いっぱい食べないと強くなれないぞ!」と冗談交じりに笑顔で語っていたそうです。(しかし目は、笑っていなかった様です)
地獄のような時間を無事に乗り切った後輩は、寮に戻るなり、大量の胃薬を飲んで、夕方の稽古まで、部屋に籠って倒れておりました。
柔道の神様は、お酒やたばこも多量にたしなまれておられたので、先生係の時に一度「お酒やたばこは、身体に悪くないのですか?」と聞いたことが有りましたが「酒やたばこなどで壊れる様な鍛え方は、しておらんよ!」と笑いながら言われていましたので、さすが史上最強の柔道家は、常人とは、桁が違うと思い知らされた事も、昔懐かしい思い出の一つです。
昨今、格闘技ブームの影響もあり、インターネットなどで、柔道の神様が取り上げられるものを見かけますが、実際に指導を受けたり、先生係を通じて、柔道以外の事でお世話になり、キャッチボールをして遊んでもらった事は、自分にとって宝です。

