【創作文:ラブレター】
今回は、少し趣向を変えて、仕事中に思いついたお話をしたいと思いますので、しばしお時間を拝借させていただきたいと思いますので、お付き合い願います。
【ラブレター】
仕事帰りにふと気まぐれで、回り道をした所、見慣れない古道具屋を見つけ、入り口の扉をくぐると、薄暗い店内には所狭しと、色々な道具が並べられていた。
その中でとても、古いがきれいな螺鈿模様が施された、木箱に目が留まり、購入することに致しました。
会計時に店番をしている老婆から、寝る前にこの箱の中に手紙を入れておくと、よい夢が見られると伝えられたので、帰宅後に手紙を書き、早々に床に就くことにしました。
夢の中では、海の見える丘の上にあるベンチに腰掛け、気持ちの良い海風にあたりながら海を眺めていると、傍らに袴姿の美しい女性が座っておりました。
何かアニメのコスプレをしているのかと思いましたが、第二次世界大戦時代の女学生である事がわかりました。
彼女と仲良くなるのに時間は、かからず、自分が未来に暮らしていることを話すと、興味新進で、私の話に聞き入ってくれました。
毎晩夢の中で話をする彼女との時間が楽しみで、定時に仕事を終えて、寄り道せずに帰宅し、早々に床に就き、夢の中で会える少女との時間を楽しんでおりました。
彼女は、とても聡明で、品もあり良家のお嬢様のようで、
彼女との何げない会話をする中で、私の心は、恋に落ちていたようで、夢の中で彼女に会える時間が宝物の様に感じ、とても大切なものとなりました。
幸せな時間は、そう長くは、続かず彼女から親の勧めで近日中に結婚することになったと告げられましたが、時代の違う私には、何も出来ない為、彼女を祝福し最後の時を迎え、翌日から夢の中で再び彼女に会う事は、かないませんでした。
それと同時に、木箱も見当たらなくなり、以前通りかかった古道具屋に行ってみましたが、お店のあった場所は、空き地になっており店を見つけることは出来ませんでした。
心にぽっかりと、穴が開いた状態で、数か月が過ぎた頃、私の事をとてもかわいがってくれていた祖母が亡くなったと母親から連絡が入り、葬儀に参列する為に帰省し、無事に葬儀も終わり、位牌の前で祖母の事を偲んでいると、母親から祖母の手紙を渡されました。
何だろう?と、渡された手紙の事を読み始めると、若い時の思い出が綴られており、その中で結婚する前に、一人の男性と知り合い恋に落ちた事が書いてありました。
祖母は、夢の中で恋に落ちた男性が私であることに気が付いており、子供の頃からとてもかわいがってくれた理由も理解できました。
最後に「もう二度と会えないと思っていましたが、再び会うことが出来た事や、あなたが成長する姿を一緒に過ごせた時間は、私にとって宝物でした。だってあなたは、私にとって永遠の王子様だから、ありがとう・・・」と締めくくられておりました。
手紙を読み終えると、いつまでも、涙が止まらず泣き崩れてしまいました。
月日は流れ、あの海の見える丘のベンチで再び会えることを夢見て、今日も路地裏を回り、あの古道具屋さんを探しております。

