登山家で、能登半島地震で被災された地域の方の支援をおこなっていらっしゃる野口健氏の本日の投稿をシェアさせていただきます。

 

今回、よく「避難所ガチャ」という言葉を耳にします。確かに避難所にてよって生活環境にかなり差がある様に感じられました。

例えば避難所に被災自治体の職員が配置されている避難所と派遣されていないところではその差が明確に現れるケースも。

被災自治体の財政から生じる差というものもあれば、首長の避難所への熱量の差から生じるケースもあるのだろうと。

以前の災害時にダンボールベッドを持って行った際に「日本人は布団の文化。ダンボールベッドなど必要ない」と。またプライバシー保護の観点から「体育館の中にテントを張りたい」とご提案しましたら「被災者からプライバシーの確保云々という要望は上がってきていない。つまり、その必要性がないということ」と発言された首長がいらっしゃいました。

ある程度の「格差」はやむを得ないにしても、可能な限り「差」を埋めていかなければならない。

災害が起こるたび、避難所の設営にあたふたする様子も見聞きします。

海外の難民キャンプ、非難民キャンプでは「スフィア基準」が一つの目安になっています。避難されてくる人々の人権をいかに守るのかがテーマ。

スフィア基準の資料を熊本地震のテント村の際に入手し大いに参考にさせて頂いた。一人当たりに用意するスペースやトイレの数。例えばトイレにかかる時間は男性が30秒に対し女性は90秒。従って女性用トイレは男性用トイレの3倍の数を用意しなければならない。

これ以外にも実に事細かく被災者への配慮がされている。

「日本の避難所はソマリアの難民キャンプ以下」と表現された専門家も。「え!」と思われるかもしれませんが、国際機関がスフィア基準に基づいて難民キャンプを設営していると。

つまり、スフィア基準を念頭に入れて難民キャンプが作られている以上は、さほど格差が生じないとのこと。仮に海外の避難所が日本の様な雑魚寝スタイルならば暴動が起こるだろうと指摘する専門家も。

ただ、海外のスフィア基準は主に戦争、紛争難民をイメージされている。日本の場合は主に災害対時に避難所が設営される。治安も諸外国と比較すればいい。

そこで避難所ガチャを作らないためにも「日本版スフィア基準」を作るべき。そして、各自治体が様々なアイテムを平時から用意をしておくこと。近くで災害が起これば、周辺の自治体が必要なアイテムを持って駆けつける。

災害大国日本はそうやって助け合いながら、国難と立ち向かっていくべきだと。被災自治体による避難所の運営には限界がある。被災自治体の職員とて被災者。また、忙殺され疲弊していく。

「日本版スフィア基準」の策定は急務であると強く強く訴えていきたい。

 

スフィア基準についての説明です。実は僕も熊本地震まで「スフィア基準」を知らなかった。

 

しかし、益城町で開設したテント村に多くの専門家が視察にいらした。そこで何度も「野口さん、よくスフィア基準を調べましたね!ここはスフィア基準に当てはめると80点ですよ。日本の一般的な避難所は完全にペケですから。いや〜よく調べましたね」。

何のことかさっぱり分からないまま「ええ、それなりに…」と返事してしまいました…。

彼らが帰った後で慌ててスフィア基準を検索。一冊、取り寄せて勉強をしました。

確かに一人当たりに割り当てる面積、プライバシーの保護、トイレ環境、テントの天井高さなど、偶然にもスフィア基準に一致する点、多々。

どうしてか考えてみたら、エベレストのベースキャンプをイメージして再現したのが熊本のテント村。極めて過酷な環境でもどのような環境を作れば心身ともに休む事ができるのか。ヒマラヤ登山は長丁場。ベースキャンプの生活環境は極めて大切になってきます。

全てではないにせよ、ヒマラヤのベースキャンプに求められる生活環境とスフィア基準が目指すべき方向性が重なっている事に気がついた。

故に専門家の方々があのような反応を示したのだと。

寝袋やエアマット、ソーラランタンもそうであるように、ヒマラヤ遠征での経験は災害にも活かせると感じていました。テント村という避難所もあり。また、これからはボランティア団体を受け入れるベースキャンプの設営が急務。テント村はいけるのではないかと。

 

野口氏の上記投稿で紹介されていた記事『スフィア基準を分かりやすく解説!「避難所だから仕方がない」を変えるガイドライン』

(前略)

最初に被災者と支援者に対する2つの基本理念が書かれています。(※スフィアハンドブック 4頁)

❶被災者は、尊厳ある生活を営む権利があり、支援を受ける権利がある

❷災害による苦痛を減らすために、実行可能なあらゆる手段をとらなければならい

どうでしょうか。先ほどの避難所のトイレの状態、女性へ暴力がおこなわれている状況は「尊厳ある生活をしている」といえるでしょうか。

しかし残念ながら、そのような状況が日本の避難所で起きていることも現実です。だとすれば、被災者を支援をする人たちは「その苦痛を減らすために、あらゆる対策をとらなければいけない」のです。

(中略)

スフィア基準とは、被災者に支援活動をおこなう人たちに向けて書かれた、スフィアハンドブック(人道憲章と人道支援における最低基準)に書かれている国際基準です。

どのような災害であれ、避難生活をおくることになった人には、被災者としての権利(尊厳ある生活への権利・人道支援を受ける権利・保護と安全への権利)があります。

日本の避難所の問題を考えたとき、そこには目で見てはっきりとわかる課題だけではなく、権利を侵されていてもまだ声をあげられないでいる人の存在もあります。

災害にあった人たちが、安全に安心して避難生活を過ごし、日常生活へと戻ることができるよう、多くの人にスフィア基準の本質を知ってもらえることを願っています。

(上記記事より引用)

 

 

一刻も早く日本版スフィア基準が策定され、被災した方々の人権が守られることを願っています。

 

 

野口健氏のご活動についてマリンさんが書かれた記事はこちらです。

 

 

追記:岡山県総社市長の片岡聡一氏の決断はマッハで、総社市と野口氏がタッグを組んで熊本県益城町にて設営したテント村は、「迅速な支援体制」があっという間に整ったそうです。

こちらが総社市とタッグを組んで熊本県益城町にて設営したテント村。約600人の被災された方々との共同生活。途中からスフィア基準の存在を知り、少しずつ改善していきました。総社市の災害対策のスキルは驚くほどに高い。

片岡市長の決断がマッハなので、職員やテント村の現場責任者を務めていた僕は日々大変でしたが、的確な指示に災害時に最も求められる「迅速な支援体制」があっという間に整いました。

後に「総社スタイル」とも呼ばれるようになった総社市による災害支援。総社スタイルが能登半島を含め、全国に普及していく事を願っています。

 

片岡聡一市長のツイッターを見ていたら、能登半島地震で、野口氏とともに「寝袋支援プロジェクト」をなさっていることが分かりました。

 

頭が下がります。

 

 

追記:野口氏の被災地でのご活動には頭が下がりますが、このような情報を知りました。

とても残念です。

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

 
 
 

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