そう言っている所へ「土志田、おはよう!」と槙田先生が通りがかった。噂をすれば影だ。
「おはようございます」よねが元気に、そして麻美(まみ)はちょっと伏目がちに挨拶をした。
「今年も区の陸上競技大会は楽しみにしているぞ! また代表選手になって頑張って走ってくれよ! それに5年生になるとアルドボールの授業が始まるからなぁ。今年の顧問の先生は、すごく厳しいぞ~」
「えっ? 先生じゃないんですか?」
「今年から代わったんだ。今日の朝礼できっと挨拶があるだろう」
(へぇー、そうなんだ)と、思うと同時に
(あっ! そうだ!)
よねは思い切って麻美のことを言ってみた。
「先生! 今年から先生のクラスに私の妹がお世話になります。麻美です。どうかよろしくお願いします」
横にいる麻美は下を俯いたまま、ぺこりとお辞儀をした。
「ほー、土志田の妹さんか! これは、鍛えがいがあるかもしれんな。よし、先生に任せておきなさい。ビシビシ鍛えてあげよう。ワッハハハ……!それでは、先生は式の支度があるから……。また、授業で会おう! ワッハハハ……」
「あっ、先生、それで……」
よねが(麻美は運動音痴だ)ということを説明する暇もなく、先生はあっという間に行ってしまった。
面白くないのは麻美だ。
「お姉ちゃん! 何であんな余計なこと言ったの! 別に私のこと、紹介なんかしてくれなくても良かったのに! まったくもう……!知らないっ!」
「あ~っ、麻美ごめん。今度ちゃんと先生に説明しておくから……」
そう言うよねの声が聞こえたか聞こえなかったか、麻美はプリプリと怒って校舎に入ってしまった。
(まずかったな~)
一人残されたよねは力なく、5年生の新しい教室へと向かった。
4年生の時は南棟の2階だったが、5年生は東棟の2階だ。4年生の時よりも講堂が近くになった。
教室に入ると、ふみもサチも、闘馬も聡もいた。4人は小さく手を振っていた。
ふみとサチには三日に一回は会っていたので普段と変わらなかったが、闘馬と聡はお荒神様以来だったので、なぜか懐かしさを感じてよねも小さく手を振った。
今日は初日ということもあって、まだ監護当番は決まっていない。もちろん席も決まっていないので、みんな4年生の時の席順で座っていた。
みんな同じ顔ぶれなのに、なぜかぎこちない。5年生という新しい学年に緊張しているのかもしれなかった。
席に座りながら、いつもはそんなに緊張しないよねも何だかドキドキしてきた。
よねが席に着いて5分もしないで、花門前先生が入ってきた。
(そういえば、担任の先生が誰か見忘れてたわ)
花門前先生の号令でみんな起立をし、礼をした。今日の先生は、水色のブレザーに胸には大きな花をワンポイントとしてつけている。スカートも水色でいつもよりスラッと背が高く見えた。
(やっぱり水色は春を感じさせるわ。あ~ぁ、私も水色にすればよかったぁ)
そんなことを考えつつ、よねは先生の話をボーッとしながら聞いていた。
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「……というわけで、今日は天気もいいし外で校長先生のご挨拶があります。そのあと新しい先生方の紹介もありますから、みんな姿勢を正して聞くようにして下さい……」
花門前先生の話が進む中、隣のクラスから校庭へ行く伝令が届いた。
「はい、それじゃあ、みんな背の順に並んで、静かに廊下を進むのよ! 走っちゃダメよ!」
花門前先生の声を聞きながら、よねはフラフラッと立ち上がった。何だか目の前がクラクラする。
自分はしっかり立っているつもりだが、周りの景色が少しづつグルグルと回っているのを感じていた。
よねの身に何かが起き始めている前兆か…?
ワカバのよもやま話コーナー
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ワカバが初めて喋った言葉が「ン、クウ(ゴクウ)」だからかな…日増しに鳥山明さん…いえ、ワカバに取っては言葉を教えてくれた先生だわ⭐️
鳥山明先生への思いが募るばかり…
世界中のみんなに夢と勇気を…ありがとうございました🙇🏻♀️
心からご冥福をお祈り致します🙏
もう一度…
鳥山明 先生、ありがとう ‼️
ゴクウの歩みを歌と共に再び…
※ 一部 SNS よりお借りした画像があります。
「およねさん」
今回の主な登場人物…
土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校5年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。
土志田 麻美(まみ)…土志田家三女。よねより1歳年下の小学校4年生。土志田家ではただ1人、目がパッチリの可愛い妹。
(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)