アルドボール秋季大会についに聡が出場出来ることとなった。
これで5年3組からの立候補者は、よねの知る限り自分と闘馬と聡の3人だ。3人は早速放課後、花門前先生に立候補を言いに行こう! と打ち合わせをしたのだった。
そしてそのまま、よねと闘馬は歴史学の波野先生の所へ、例の件(虹の迷宮)を聞きに行くということを、目くばせをしながら示し合わせたのはもちろんだ。
というところから、物語ははじまり始まり~……
《今日の主な登場人物紹介》
土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校5年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。
花門前(はなもんぜん)麗香(れいか)…よねの学級担任。24歳。容姿端麗でスポーツ、ピアノが得意。アルドボールの顧問となり、朝美台小を勝利へと導いていく。
岩田 聡(そう)…よねの同級生。図体がでかく勉強は大の苦手だが、人情に厚い魚屋の息子。
放課後、ふみとサチに別れを告げ、3人は職員室へと向かった。きれいに磨かれた廊下が今日はやけに眩しく感じつつ、よねは職員室の扉をノックした。
「失礼します!」
3人は姿勢を正してお辞儀をしながら職員室に入った。職員室の中は、五卓の大きな机が三列に渡って並んでいる。
机の真ん中には、薄い板で仕切りがしてあり、先生方はお互い向き合うような格好で座っていた。だから、30名の先生がズラッと並んでいるわけだ。その中で花門前先生の机は、真ん中の列の一番奥。中庭が良く見える窓側だ。
先生はニコニコしながらよねたちを迎えてくれた。すでに何を言いに来たのかわかっているような笑顔で。
「先生! 自分たちはアルドボールの大会に出場したく、お願いに来ました」聡は幾分緊張しているように、声を上(うわ)ずらせた。
「よく来てくれたわね。それも3人も……いっぺんに! ご両親からの承諾はもちろん頂いていると思うけど、夏休みの合宿の参加も大丈夫なの?」
「はい!大丈夫です」3人の声は明るい。
「わかったわ! では、3人の立候補、確かに受け付けます。……ちょっと、待っててね」そう言って、先生は机の引き出しから何やら紙を3枚取り出した。
「ここに、アルドボール秋季大会出場に関する注意事項が書いてあるわ。これをご両親とよく読んで、サインをして持ってきてね」
よね達は、少し表情が硬くなりながら、それを受け取った。
「よしっ! それじゃあ、頑張るのよ! 先生も張り切ってみんなに教えるから、ついて来てね」
先生の言葉に、3人は顔を見合わせて大きな返事をして頷いた。
その後、3人は先生から簡単な説明を受け……といっても、アルドボールの出場希望者が、現在のところ、よねたちを合わせて10人だということ。その内訳は、6年から4名、5年から6名ということ。選手の顔合わせは、6月中旬に行なうということ。全校生徒には、その後の朝礼で発表するということ。練習の詳しい日程については、7月初旬にプリントにして配るということ、などだった。
しかし、よねたちが一番驚いたのは、「うちのクラスからは、すでに1人が立候補しているのよ。それもその生徒は、先生の所に来たのが一番早かったの。まあ、それが誰かは後のお楽しみにしておきましょうね」と言ったことだ。
この時よねの脳裏に、その立候補したという一人に、小林晋一の顔が浮かんだ。しかし晋一は、アルドボールの授業では、相手に上手くボールを投げられない、上手くボールを受け取れない……生まれつき運動神経が鈍いで済ますには、あまりに悲惨だった。
(晋ちゃんはいつだったか「アルドボールの選手になりたい!」って言ってたけど。……例え立候補しに来ても、先生が受け付けないかもしれないわ)
もし、晋一の立候補を受け付けてしまったら、花門前先生が晋一だけに大変な労力を費やすだろうと子供心にも思った。それに、ボールも上手く取れない晋一を、危険な目に合わせるわけがない!とも思ったので、晋一立候補説をすぐに頭の中から消し去った。
そして、たぶんきっと、背が高くジャンプ力のある木村康平(こうへい)か、すばしっこい久保田欣也(きんや)あたりが立候補に名乗り出たんじゃないかなぁ、と思うのだった。





