「えっ? 何だって? 惣八さん! ハルって……、この間、人さらいにあった姪っ子の……ハルちゃんかい?」
「おお、そうよ。この野郎がさらったにちげぇねぇんだ! この野郎、名前の通り鬼のような野郎だ!」と叫ぶなり「さっさと白状しやがれ!」と米寿の首を絞め始めた。
よねはびっくりして「おじさん、やめて!」と惣八の腰にしがみついた。
辰五郎も慌てて「ちょっと待った! 惣八さん!」と惣八の両腕を米寿から引き離そうとしながら「乱暴はいけませんよ!もっと落ち着いて!……何か証拠でもあるんですか?」と、何とか惣八の腕を米寿の首から振りほどいた。
惣八は、少し息を切らしながら「大ありよ! ハルがいなくなったあの日、俺は確かに見たのよ、こいつの姿を……」と喉から絞り出すような声で言った。
「えっ? まさかその時、米寿さんがハルちゃんを連れて歩いてたっていうことですか?」
そう聞かれて、惣八はちょっと困った顔をして「いや、そうじゃねえ。そうじゃねえが……。こいつが何であの場にいたかってことが気になるじゃねえか。丁度ハルがいなくなった日によ。ここ5年も行方知れずのこいつが何であそこにいたっていうんでぇ!
……えっ! おい! 米寿! おめえ、例の件に関わっているんじゃねえのか? それで人さらいなんかやってるんじゃねえのか?……何とか言ってみろ!この野郎!」
惣八はまた米寿に飛び掛ろうとしていた。必死で辰五郎がそれを止めている。米寿はしかし、棒立ちになったまま逃げようとはしなかった。
よねはこの三人の姿を見ながら考えていた。
(例の件って何だろう? 人さらいにどう関係してるんだろう?)
そう思った途端、顎に生えている告死髭が何かに引っ張られるように痛み出した。
昨年の暮れに見た夢のこと、闘馬に思い切り投げたボールのこと、夢の中に出てきた老人の姿、そしてつい先日、店に来た老婆から言われたこと……、それらが稲妻のようによねの顎の髭から頭の中に向かって一瞬にして駆け抜けて行った。
なぜ、そんなことをこの場で思い出してしまったのか? もちろん、よねにはわからない。
しかし、これら一つ一つのことがすべて一本の線に繋がるのではないか……、とよねは少しづつ感じ始めていた。
生まれながらにして組み込まれているよねの輪廻細胞(※)が、そう思わせているのかもしれない。とにかく、よねはこの3人の会話を記憶しなくては……と聞き入った。
「米寿さん、あなたも何とか言ったらどうです。本当にあなたがさらったんですか? もしそうでないのなら、ちゃんと身の潔白を証明しないことには、この場が収まりませんよ」
辰五郎は惣八をしっかり押さえている。
すると、米寿がやっとで重い口を開き始めた。
「……親分。まさかこんな形で親分と再会しなくちゃならねぇとは、自分としても情けねえ限りです……。さっきの話……、俺はやっちゃいねぇ。むしろ、その逆です。
……俺は5年前に親分の店で働かねぇかって言うお誘いを断り、そのままでした。……あの日は、しばらくぶりに親分にご挨拶に伺おうとしてたんです。すると、人さらいが起きた……聞けばさらわれた子は、親分のご親戚だっていうじゃありやせんか。これはきっと、神様があっしに与えてくれた運命だって感じたんですよ。
……そのさらわれた子を捜し出せば、親分から受けたご恩を……、いや、手嶋組を解散に追い込んじまった過去の過ちを少しでも返せると思って 。だから、あっしはあの日以来ずっと捜してたんですよ。あの土蔵(どぞう)相模(さがみ)の裏にある木賃宿に泊り込んで……」と言って、商店街の向こうを指差した。
もちろんここからは見えるわけもないが「土蔵相模屋」は映画や舞台にも登場する有名な土蔵造りの食売(めしうり)旅籠屋だ。
“白壁のやうに化粧も品川や
土蔵相模の見世(みせ)の遊女(あそびめ)”
= 上野霞庵 =
と歌にも詠われていた。
「何っ? するってぇと、おめえは今までハルのことをずっと捜してたって言うのかい?」
米寿は頷いた。
その途端、惣八の力が少しずつ萎えていくのを辰五郎は感じた。
(※ 輪廻細胞…宇宙を司る細胞)
ワカバのよもやま話コーナー
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![?](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/095.png)
ミスドのGODIVAとのコラボドーナツを買って1人でご満悦〜
(もちろん、母と半分こ、しましたよ〜)
そしたら、後輩と先輩から友チョコがぁ…
何も用意してないワカバ
ヤバいよ、ヤバいよ〜
ブランデー入りは美味しいよねぇ
抹茶味….美味しゅうございます
口の中に入れた瞬間、抹茶の香りが鼻孔を抜けていく〜🍵
自分のお部屋にお花が欲しく、ヒヤシンス買いましたぁ
3日後には、これだけ咲いたぁ🎀💕💓💗
龍の辰ちゃんも映ってる
母が玄関に飾りましょう….だって
こんな気持ちだよね
庭には、クリスマスローズがたった一輪だけど、咲きました
花が下を向いて咲くので、画像をSNSからお借りしましたぁ
因みにヒヤシンス(ビンク)の花言葉は「しとやかな可愛らしさ」.
クリスマスローズは「私を忘れないで」
ウォーキングしてると、篠竹村では道のあちこちで、いろいろな野菜を売ってますぅ
何だか、この大根…股開いてるし、真ん中ちょん切られてるし…
篠竹村は、エロいよねぇ(//・ω・//)モウ、ムリ!
とりあえず、買ってきたよ
エロ大根…柔らかくて、美味しかったぁ
※ 一部 SNS よりお借りした画像があります。
「およねさん」
今回の主な登場人物…
土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校4年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。
土志田 辰五郎 (たつごろう)… よねの父親。下駄屋を営む。よねの小学校に風紀委員。
手嶋(てじま)惣八(そうはち)…よねの家の裏手で材木屋を営む元やくざの親分。昔、手嶋七人衆を抱えていた。この物語の鍵を握る。
(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)