子供たちだけで行こうと思っていたお荒神様に同行してもらう親代表にみんなが選んだのは、よねの父親の辰五郎だ。
そして一番喜んだのは辰五郎!
辰五郎は賑やかなことが大好きなので、子供たち以上にその日が来るのを張り切って待っていた。
当日。待ち合わせ場所はよねの下駄屋だ。今日は、みんなで出掛けるのを喜ぶように天気も快晴だ。
一番乗りは闘馬とおさげ髪がとってもかわいい四歳の妹の美千子(みちこ)だ。闘馬の母親も挨拶に一緒にやってきた。今日は、花屋の仕事を少しずらして来たのだろう。
闘馬の母親とは何度か買い物の時など道で会ってはいたが、いつもながらスラッとしたスタイルに、長い髪を後ろでふんわりとまとめた上品な雰囲気のお母さんだった。
きせと闘馬の母親が挨拶を交わしていると、少し遅れて聡がやってきた。
「よっ、遅くなってごめんごめん!……あっ、おじさん、おばさん、こんにちは!今日はよろしくお願いします」
聡は大きな体を揺すりながら挨拶をして、辺りをキョロキョロ見回した。
「……やっぱりふみとサチの奴は来てないな。あいつら遅いからなぁ」
聡がそんなひとりごとを言っていると「ほら、聡のお兄ちゃんだよ。こんにちはの挨拶は?」
闘馬にうながされて美千子はニコニコしながら、舌ッ足らずの声で「こんにちは!」と元気にお辞儀をした。
「おっ、こんちは!やっぱり妹はかわいいなぁ。俺んちは兄貴しかいないからなぁ」
そこへ、よねの妹の麻美と弟の幸司も顔を出した。早速、歳の近い幸司と美千子は仲良くなったようだ。
「遅れてごめんね!」息を切らせてふみとサチがやってきた。
「やっぱり、お前たちがドンけつだよ。きっとそうだと思ってたけどな」
「仕方がないわよ。お母さんたちの支度が遅いんだからぁ」と弁解するふみ。ふみがそのまま大きくなったのではないかと見間違えるくらい、瓜二つのずんぐりとした小柄なふみの母親と痩せぎすのサチの母親が、交互にきせと辰五郎、そして闘馬の母親と挨拶を交わす。
今日の銀幕商店街は、ゼームス坂方面から一国(いちこく)=(第一京浜国道)に向かって人の波が頻繁に流れている。店の前で立ち止まる人はほとんどいない。
みんなお荒神様に行く人たちだ。そんな人の流れを見ながら、よねたちは早く行きたい衝動を抑えていた。母親たちはおしゃべりに夢中で、その輪の中に辰五郎もどういうわけか入ってしまっていたのだ。
風紀委員である辰五郎は、その後の「人さらい事件」に進展はなかったのかと、いろいろと質問されていた。
「よりによって、こういう日にそんなこと聞かなくたっていいのによぉ」聡がじれったそうによねや闘馬の周りをウロウロと歩き出す。
「何言ってるの!お母さんたちにしたらすごく心配なことでしょ!あたしたちだって、いつそういう事件に巻き込まれるかわからないのよ。ちょっと、落ち着きなさいよ!」
サチにそう言われ、聡はちょっとムッとしつつ「だってよ、うちの父ちゃんなんかお前をさらっていく物好きなんかいねえだろ、…なんて言うんだぜ!」と吐き捨てるようにつぶやいた。
「それは当たってるわ。」ふみが腕を組んでウンウンと納得する仕草をしている。
それを見て麻美がクスッと笑った。
親たちは「人さらい事件」の話が終わると、今度は「226事件」の話に熱が入っていった。3月22日に、記事差し止め・報道制限緩和の措置が取られ、事件の詳細が号外によって伝わっていたのだ。
「まったく変な世の中になったものだ」とか、「この子たちが大きくなる頃には、どんな社会になっているのかしら」などと話は尽きない。
こりゃなかなか行けそうもないな、と子供たちに悲壮感が漂ってきた時だ。
一国に向かう人の流れに逆らいながら、一人また一人と首から風呂敷包みを下げた人が戻ってきた。御札を頂いて帰宅する人たちだ。
その人達に気がつき「あら、ごめんなさい。ついつい土志田さんを足止めしてしまって……」
そう言ったのはふみの母親だった。それと同時に残りの母親たちも(あら、いけない)という顔をして辰五郎を輪の中から開放した。
辰五郎も慌てた顔をしながら子供たちの元にすぐ来て「すまなかったなぁ、待たせてしまって。さあ、行こう!」
着物の袂に手を入れながらそう言ったので、子供たちの顔が一瞬で明るくなった。
「行こう!行こう!」
幸司が美千子の手を引っ張って先頭を切って歩き出した。そのすぐ後ろに麻美とよね。そしてふみとサチが続き、闘馬と聡はしんがりだ。
「こらこら、そんなに早く歩いちゃダメだぞ、幸司!……みんな固まって歩きなさい!」慌てて辰五郎が八人の子供たちを追いかけた。
ワカバのよもやま話コーナー
(73)
100歳で、お元気に人生を送っている方を紹介する番組がありました。番組に登場された100歳さんの元気を3週に渡ってご紹介しますねぇ
今週の100歳さんは、この方ぁ
良子さんは、ご両親のお店を今では甥御さんに任せながらも、毎日楽しく働いています〜
当時、18歳の良子さん
大臣官房秘書課に務めていた頃の良子さん
要人秘書を40年務めていたそうです。
結婚には縁が無かったそうですが、退職後はいろいろな趣味に明け暮れる毎日
長唄では、2023年国立劇場でなんとセンター
油絵を今でも描かれています
シャンソンまで歌っちゃう100歳さん
なんと趣味は15以上に及ぶそうです
鶴瓶さんの「何がお好きですか」の質問に肉が大好きとの事…
1週間にビフテキ2回
最低でも150g 食べる…に、鶴瓶さんが「いや、わたしなんか食べても120g よ」だって
カレンさんが「8人生分くらい、やりたい事をやってらっしゃって…」と言えば、鶴瓶さんが「わたしはやめとうないねん…でも、テレビの世界はオファーが無くなったらやめる時なんですよ」
と言ったら、100歳さんが「大丈夫鶴は千年」と、嬉しい発言 優しい
でも、隣りのカレンさんは100歳さんが何故「鶴は千年」と言ったのか分からない様子 笑
この言葉は深かったわぁ
「朝、目を開いたら…あっ私、生きてるまた新しい一日を迎えられた」
とても、ステキな番組でしたぁ
来週はまた違う100歳さんの登場で〜す
※ 一部 SNS よりお借りした画像があります。
「およねさん」
今回の主な登場人物…
土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校4年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。
坂口 闘馬(とうま)…横浜から転校して来たよねの同級生。今後の物語の鍵を握る。
平山 ふみ …よねの同級生。鼻ぺちゃのお喋りで明るい性格。
山村 サチ …よねの同級生。インテリ眼鏡で冷静沈着。いつも低音で論理的に喋る。
岩田 聡(そう)…よねの同級生。図体がでかく勉強は大の苦手だが、人情に厚い魚屋の息子。
(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)