ふみがそこまで言うと、周りのみんながクスクス笑い出した。しかし、みんなを見るとどうやら聡が怒られている情景を想像しての可笑しみのようだ。
プレゼントに菊をあげるということに違和感は感じていないようだった。
「ねっ、可笑しいでしょ。プレゼントに菊よ、菊! 普通それはないわよね」
ふみがそう言ったが、周りのみんなはどう反応していいか迷っているようだ。正直、よねも少し考え込んだ。
まあ、菊はないとしても…じゃあ、チューリップ? やっぱり百合かなあ、などと考えを巡らせていた。
「それだったら、ふみ! お前は何をプレゼントしたらいいと思うんだよ」
聡がふみに食って掛かる。
「そうねぇ、あたしなら桔梗かしら」
「なにー、桔梗? 桔梗って秋の花だろう? そんなのどうやって今プレゼントできるんだよ。いくら俺が頭が悪くてもそのくらいわかんだぞ!」
「それじゃあ、紫陽花!」
「何言ってんだよ!紫陽花は六月だろ。おまえ、俺が花のこと何にも知らないと思って馬鹿にしてんじゃねーの!」
聡のイライラは募る一方だ。
「まったく親父ッたらよぉ、何でそういう余計なことをふみにしゃべんのかなあ。……おまえも俺んちに何しに来たんだよ」
「何しに来たとはご挨拶ね! お母さんと岩田君のお店に魚を買いに行ったのよ。そしたら、岩田君のおじさんが今みたいなことをうちのお母さんと喋りだすからさ」
まったくふみちゃん、余計なこと喋るから……よねはそう思いつつも、何をプレゼントしようと頭はそっち。
聡の周りにいた男子は、自分に花の質問が来る前にと、そそくさといつの間にかいなくなっていた。
聡だけが不機嫌に目をギラギラと輝かせながら、次は誰に聞こうかとキョロキョロしている。
「よね。おまえだったら何をプレゼントする? それともしてもらいたい?」
ほら来た! よねは一瞬そう思いながら「私だったら、チューリップかなあ。百合もいいなぁ」と答えた。
「おう、チューリップか! それなら春の花だもんなぁ。百合も春だっけ?」
聡は納得したように腕組みしながら一人つぶやいている。
「ちょっと、岩田君、何よ! よねちゃんには随分やさしい聞き方じゃない!」
ふみはまんまるい鼻と同じくらいの高さまで頬っぺたを膨らませた。
「だって、そもそもおまえが余計なこと喋るからいけねえんだろ!」
聡も頬っぺたを膨らませながら、ふとサチの方を見た。そして……
視線を逸らした。
「何? 岩田君、私には聞かないの?」
サチが眼鏡の真ん中を指で押し上げる。
「い、いや、そういうわけじゃないんだけどよ~」
聡はどうもこのサチが苦手だ。言い合いになると必ず負けてしまうし、サチのこまっしゃくれたところも苦手だったのだ。
「あぁ、それじゃあよ、サチだったら何にする?」
「そうねぇ、私が花をプレゼントするとしたら、やっぱり薔薇ね。それもカスミソウでまわりは飾らないわ。薔薇の魅力だけを引き立たせるわね。そう、色はやっぱり赤ね」
「ふーん、山村さんはヴィヴィッドが好みなんだね。赤い薔薇だから、花言葉は情熱かな」
いつの間にか闘馬が話に加わってきた。
「あれ、闘馬、いつから俺たちの話し聞いてた?」
「うん、今だよ。山村さんの薔薇の話が耳に入ったからさ」
聡はちょっとホッとするような顔をした。
「そっか。それならいいけどよ。……そういえば、いま変なこと言ったな。花の言葉とか……。そのビビなんとかっていう花は、喋れるのか?」
「何言ってるの? 喋る花なんてあるわけないでしょ! 坂口君が言ったのは、花言葉。その花が持っている特長を活かした表現方法よ」
サチが早速説明を始めた。
聡はしまったぁ!という顔をしている。聡にはどうもこのサチの説明が苦手なようだった。
「うん、でも花言葉はまだまだ有名じゃないからなぁ。さすが山村さんは良く知ってるね」
そういわれてサチはちょっと俯いた。サチは人から褒められるのが苦手なのだ。
「へぇー、花言葉なんて知らなかった。じゃあ、どうして花言葉なんてできたの?」
今度はよねが質問した。
「僕も良くわからないけど、花をプレゼントすることによって自分の気持ちを相手に伝えようとしたんじゃないかなぁ」
「でもよぉ、さっきのビビなんとかっていう花、聞いたことがないぞ」
「それは、薔薇の品種でしょ。薔薇にもいろいろあるのよ」
サチの説明に聡はまたしまった!という顔をしたが「薔薇は薔薇しかないのかと思った」と言って、またサチの失笑を買っていた。
ワカバのよもやま話コーナー
(70)
この暮れの忙しい時にお友達に誘われて、行ってきました
電車降りたら、いきなり言われちゃったぁ
ホームにたくさん、寅さんの名場面が…
もう…寒いから人いないじゃない~
柴又帝釈天(題経寺)の奥は立派な庭園
寅さん記念館…寅さん、寝てるぅ😴
ひろしさんとタコ社長にも会えたぁ🥰
「お兄ちゃん、いつでも帰って来てね…」
「おー、ワカバ…」
「いい年、迎えろよ…」
第15章「聡の気づかい」③ へつづく