ドタバタとした祝賀式典から、あっという間に6日が経った。

   結局あの日は、サチの気絶騒ぎと時次郎の突然の退出ということで、尻切れとんぼのようなもやもやとした幕切れとなってしまった。

   

   「いってきまーす!」

    よねの元気な声が、天気の良い寒空に響く。今日から3学期が始まるのだ。

    麻美は迎えに来た直子と先に学校へ行ってしまった。よねは、というと今日は珍しくふみとサチが迎えに来るというので、2人を待っていたのだった。


   「ごめんね、遅くなって……」ふみが白い息を吐きながら駆けて来た。

   「別に大丈夫。行こう」よねが2人を促して、歩き出した。


  明治、大正時代、学校へ通う子供たちは、紺絣(こんがんすりの着物に下駄や草履を履いて、肩からはズックの鞄を提げて……というのが定番だった。


   しかし、昭和に入ると、男の子は金ボタンの学生服、女の子はセーラー服が目立つようになってきた。鞄も手提げにする子供も増えてきた。しかし、よねはランドセルだった。



(昭和9年当時の子供たちの服装)



   「この間は、心配を掛けて悪かったわ。……ごめん」


    サチが眼鏡の真ん中を押し上げながら2人の顔を見た。口ではそう言ってはいるが、どうも謝っている態度には見えない。

   しかし、よねもふみもこれがサチの精一杯の誠意だということはわかっていた。とにかく、感情を表わすことが苦手なサチだった。


   「別にいいよ。……それよりもよかったね、何でもなくて」

   そうよねが言うと、ふみも続いて「ホント。よねちゃんが持って来たハンカチを瞼にあてたら、ふっと気がついたもんね。サッちゃんが目を開けた時にはホッとしたわ」と言いながら、目の前に転がっている石をコーンと蹴った。


    3人とも、今日は洋服にスカート、そして運動靴を履いている。

   健司やあさが学校に通っていた4、5年前は着物姿の子も多かったが、今ではみんな洋服だ。それに洋服だと、ランドセルもしょいやすい。


    今日から新学期といっても、いきなり授業が始まる。この間の祝賀式典で全校生徒の挨拶は終わっているからだ。だから、3人ともランドセルをしょっていた。


   「私も不覚だったわ。ついうっかり倒れてしまって……」

   まるで他人事のようにサチが言うので、よねとふみは顔を見合わせて、苦笑いをしながら肩をすくめた。


   「私……、倒れる前から思ってたんだけど……、何でうちの学校に時次郎が……」

   そこまで言ってサチは違う違うというように頭を振りながら「音羽先生がいらしたのかしら?」と言い直した。


   「あっ、そう言えばそうよ。いままで気がつかなかったわ」ふみが可愛い鼻をヒクヒクさせながら言った。

   「今頃気がついたの。こんな疑問、誰でも思いつくんじゃないかしら」


   「あぁ、今頃でわるうござんしたね!……それじゃあ、サッちゃんはその理由がわかったとでも言うのかしら」負けず嫌いのふみが食いついてきた。


   「話を持ち出したのは、その理由がわからないからでしょ。わからない人ねぇ」サチがお得意の低い声で、言い返した。


  

   2人のそんな言い合いを聞きながら、よねは話そうか話すまいか迷っていた。もちろん、式典で最後に見てしまった時次郎のことだった。


    さっきから黙って歩いているよねを不思議に思い、ふみが声を掛けてきた。

   「どうしたの?ずっと黙ったまんまで……」

   「うーん、あのさあ……ちょっとねぇ……」


   「何よ、何かあったの?私達が聞いてあげるからさ……。どうしたの?」

    そうふみから言われると、話してもいいかなあ、という気になってくる。


  「それじゃあ……、誰にも言わないって約束してよ」

  よねが唇に人差し指をあてるので、ふみとサチは黙って頷いた。


  「私、見ちゃったの……

   何を!という顔で2人が立ち止まった。

  「サッちゃんが倒れちゃった後でさ、先生に頼まれてハンカチをゆすぎに手洗い場に行った時、私、見ちゃったの。その時ね……」


    そこまで話して、次の言葉が出なくなっていた。よねは、2人にもったいぶっているわけではなく、次の言葉が本当に出てこなかった。


   (校長先生と山本先生は、あのことを誰にも知られたくないから、コートで隠したりして、時次郎を必死でかばっていたのに……)

   それなのに、私はその秘密を話そうとしている。

   そう思うと、何だか胸が急に苦しくなってきた。


   よねのそんな状態を察したのか、サチが「言いたくなければ、言わなくていいわ。でも今後、私達が知っておいた方が何かの役に立つことだと感じたら、話すべきね」と言いながら歩きはじめた。


   サチのその一言で、よねは決心した。

  「ごめんね。話すわ。あの時、倒れてたの。時次郎が……、いえ、時次郎先生が!


   よねが少し声をひそめてそう言った途端「どこで!」「何で!」ほとんど二人は同時に叫んだ。

    よねは「シーッ!」と顔をしかめながら「舞台のすぐ袖の所。どうしてだかわからない」と小声で言った。


    ふみがすかさず「おなかでも空いてたんじゃないの?」と言えば、まさかという顔をしながらサチが「きっとあまりの熱烈な歓迎ぶりに気が動転したのよ」と言いつつ、こうつけ加えた。


  「だから、私みたいに落ち着いてれば良かったんだわ」と自分自身を納得させるように何回も頷いた。

   「ふーん、そして倒れちゃうんだ」ふみはいつものことながら、一言多い。


    よねは2人の会話をまるで上の空で聞いているように「うーん」と考え込みながら「……でも、時次郎先生は吐いてたわ」とまるで自分が吐いたかのように、苦しそうな顔で告げた。

   「えっ!それじゃあ、二日酔い?」とふみが、まあ呆れた!とでも言いたげな顔を見せた。


   すると、今度もまさかという顔をしながらサチが「二日酔いの人が、あんなに私達に手を振ってにこやかにしていられるわけないわ。きっと、どこか具合が悪かったんじゃないかしら。そう思わない?お2人さん?」と益々磨きが掛かった低音で、よねとふみの方を見た。


    よねは突然、目を輝かせてサチにこう言った。 

  「でも、こういう事は考えられない?……サッちゃんが倒れたあとに、時次郎先生が倒れたということは、……サッちゃんと時次郎先生に、何か以心伝心みたいなものがあったのかも……なんて」


 「そんな……都合のいいことが……あるわけないでしょ」

   サチが照れを隠すように下を俯くと、ふみがすかさず「ありえるかもよ。時次郎先生にサッちゃんの気持ちが届いて……吐いちゃったんだ」


    サチは急に顔を上げて、まるで何も聞かなかったかのように「ほら、速く歩かないと遅刻するわよ!」と、さっさと行ってしまった。


    よねが「ふみちゃん!」と言って睨むと、ふみは舌をペロッと長く伸ばし、「サッちゃーん、置いてかないでー!」と急ぎ足でサチの後を追いはじめた。


    もう校門はすぐそこだ。一人、置いてきぼりを食ったよねも慌てて2人を追いかけて、礼をしながら校門をくぐった。






ワカバよもやまコーナー


   このブログが更新された頃、サッカー日本代表はクロアチアと戦っているの。

   どうか見事勝利しますようにキラキラ🙏キラキラ


  ワールドカップの日本 VS ドイツ戦で新聞のテレビ番組表が粋なことをやったのをご存知でしたかぁ!?


   1番左の1文字を縦に読むと「ドーハを歓喜の場に」になってる〜ラブラブラブラブラブラブ


   実はワカバは知らなくて、Twitterで教えてくれた方がいたのですぅニコニコ



   そしてスペイン戦での堂安選手の素晴らしいミドルシュートのあとの、歴史に残る映像が…!


   これはボールがラインにたった1.88mmしか掛かっていなかったんだってぇキューン




    この時点でもうボールは出そうあんぐり





   三苫選手の諦めない姿に感動しましたよねぇドキドキ

そして、田中碧選手がそのボールをしっかりゴールに!!

   キャーッラブラブ








   でもVAR判定がなかったとしても、ゴールになっていたの?



   昔、マラドーナ選手が「神の手」とか得点した話を聞いたことがあります。


    調べたら、1986年のメキシコでのワールドカップだから、もう36年も前のことだけど…。

   この時、VAR判定があったら絶対ハンドって分かっちゃいますよね グーサッカー


   そして面白いから、いろいろ検索してたらマラドーナ選手はこの試合で5人抜きゴールってしてるんですねあんぐり


  この時のアルゼンチンのアナウンサーが放送席で全宇宙的な一瞬の閃光。どの惑星から来たんだ!!!???」って叫んでるんですよ〜。こんなセリフがあの早口の中から良く出て来たなぁ…って関心しちゃいました。





   話は戻って、日本はスペインに勝って大騒ぎでしたねぇお祝い 日本 花火 拍手 クラッカー 音譜音譜音譜



   日本の選手もステキな喜びグリーンハーツイエローハーツラブラブ




     試合後、三苫選手は……



  ブライトンのチームメイト、スペイン代表GKサンチェス選手とユニフォーム交換を行ったそうです。 

   キャッ❗️いいカラダ‼️



    ところで…ワカバの家からは遠い場所のお友達なんだけど… 

   三苫選手と田中選手は、お友達の家の近くにある川崎のさぎぬまサッカークラブ出身なの〜サッカーランニング


   あと、センターバック(CB)の板倉選手とゴールキーパー(GK)の権田選手も同じサッカークラブなんだって!!

  (ちなみにセンターバック(CB)とは、ゴールキーパーの前にいて、相手の攻撃を食い止めるポジションだそうよ!)


   同じさぎぬまSCから4人もワールドカップに!?

   いったいどんな少年だったの?



   そんな4人を…彼女はまるで親戚みたいに応援してる〜飛び出すハート


   では、ワカバも彼女に負けないように応援しまーす愛



٩(๑•̤̀ᗜ•̤́)⚑︎٩(๑•̤̀ᗜ•̤́)⚑︎フレーフレー

日本〜🇯🇵



第6章「横浜から来た転校生」② へつづく



(※ 画像はネットからお借りしました)





「およねさん」


 今回の主な登場人物…


土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校4年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。


平山 ふみ …よねの同級生。鼻ぺちゃのお喋りで明るい性格。


山村 サチ …よねの同級生。インテリ眼鏡で冷静沈着。いつも低音で論理的に喋る。



(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)