朝の眩しい日の光に照らされて、二人の少女がガラス戸を元気よく開けて飛び出してきた。よねと麻美(まみ)だ。二人とも元旦と同じ着物姿だったが、一つ違うといえばえんじの袴を履いていたこと。


  「先生に大きな声で、挨拶するんだぞ!」

  「ほらほらよそ見してないで、ちゃんと真っ直ぐ歩いてね!」


    辰五郎ときせの声に後押しされながら、よねも麻美も後ろを振り返り振り返り「行ってきまーす!」と手を振っていた。


    太陽は出ているものの、今日の寒さときたらまた格別だ。舗装されていない家の切れ間切れ間の地面に立っている霜柱が、宝石のようにキラキラと輝いていた。


    よねと麻美が通学している朝美台尋常小学校は、ゼームス坂を横切り、家から歩いて十分ほどの小高い丘の上にあった。

   木造二階建ての校舎は、朝から陽の光をいっぱいに浴び、夕方は西からの夕陽が、校舎全体をきれいな茜色に染めてくれる。


    今日は、小学校で新年の祝賀式典があるのだ。当時、式典は元旦と決まっていたが、新しい授業科目をめぐって元旦から先生方の職員会議があったため、式典は二日の今日にずれたのだった。

   「今日ね、私……、面白い初夢見たんだあ」よねが笑いながら言った。

   「えっ、何々?たくさんおもちゃとか漫画とかがもらえる夢?」


   麻美は一体よねがどんな夢を見たのか知りたくてたまらないという顔で話の続きを急かせた。

 「ううん、転校生が来る夢!」

    麻美はキョトンとした顔で、よねの顔を覗き込み、何だ!それだけ?と小首を傾げた。


   「転校生は男子だったわ」

   よねがそう言うと「やっぱりねぇ」と聞き慣れた声が後ろで突然囁いた。

   振り返ると、よねの親友ふみとサチがいつの間にか立っている。


    3人はニコニコッと笑って(いや、その内の1人はぎこちない笑い方だった)

   「おめでとう!」と言いながら、よねとふみはお互いに手を取り合いキャッキャッと飛び跳ねた。といっても着物に草履姿なので、そんなにはしゃげないのだが……。


   サチは、というと飛び跳ねている二人をシラケた目でメガネの奥からジッと見ながら「ほらほら、感激してるのは後回し!学校に遅れるわ」と低い声で言いながらサッサと歩き出した。


  「コホン、コホン!」そばで麻美が咳払いをした。ふみとサチは、麻美の存在を思い出し「ごめん、ごめん……!麻美ちゃん、おめでとう!」とふみが言えば、サチは顔色一つ変えない、どちらかといえば冷たい低音の声で「おめでとう」と言った。


    ふみもサチも、よねと同じクラスだ。

   ふみは太ってはいないが、ぽっちゃりとした丸顔。鼻が低いので「ハナぺちゃのふみ!」と男子によくからかわれる。

   でも、生まれつき明るい性分なので別に怒ったりせず、笑いながらからかう男子をいつも持っている鞄でボコボコに叩くぐらいだ。


    サチはいつも冷静沈着な判断力で物事に対応する少女。喜怒哀楽を小さな顔には出さず、何かを発言する時は、度の強いメガネの奥の瞳がキラリと光った。

   声も女の子とは思えない位に低く、どちらかというと人に冷たい印象を与えてしまうのが難だった。


  「あっ、直子ちゃん!」突然、麻美が大声を出し「お姉ちゃん!直子ちゃんがいたから一緒に行くね」と路地から出てきた直子の方へ行ってしまった。


    着物を引っかけないように上手に走る麻美の後ろ姿を横目で追いながら「いつも思うんだけどさ、よねちゃんも麻美ちゃんも元気よねぇ」とふみが言えば、よねは「それくらいしか取り柄がないもん……」と笑った。


  「ところでさ……」ふみが何か聞きたそうに、よねの顔をニヤニヤしながらじっと見た。

  「さっき言ってた転校生の夢だけどさ、どんな子だった?」


  「それが顔ははっきりわからないんだ。でもね、名前は覚えてる」とよねは空を見上げながら答えた。

    すると、ちょっと先を歩いているサチが興味深げな顔をして振り返った。


  「それが、変な名前なのよねぇ。その子の名前はねぇ、……トンマ!」


    そうよねが言った途端、ふみがゲラゲラ笑い出した。

 「えっ、何?ト……、トンマ!そりゃ、傑作!トンマな名前だわ!」

  するとサチが「そんな変な名前、親がつけるわけないでしょ」と静かに言った。


  「いえ、わかんないわよ。世の中にはそういうトンマな名前をつける親がいるかもしれないよ。それに、よねちゃんの夢は20回に1回は当たるからさ、来るよ、きっとそのトンマな転校生!」と言いながら、ふみがまた笑った。


    よねは自分が見た夢がたまぁに当るだけにちょっと困った顔をしながら「じゃあ、ふみちゃんはどんな初夢だったの?」と聞いてみた。


   「それが、覚えてないんだぁ。残念だなぁ、もしかしたら、百万長者になる初夢だったかもしれないのに……」

   「まちがってもそんなことはないから安心しなさい!」

    サチがニコリともせずに言い放った。


    ふみは、ちょっとふくれた顔をしながら「じゃあ、さっちゃんの初夢は何だったのよぉ?」とサチの着物の袖を引っ張った。


   「私?私はね……」とちょっと間を置いてから「音羽次郎(オトワトキジロウ)と浅草でデートをする夢よ」と少しうつむき加減に言った。

   「えっ、さっちゃんが音羽時次郎と?……プーッ」とふみは吹き出した。


    音羽時次郎といえば、女の子に大人気の今売り出し中の時代劇若手スターだ。

   昨年、出演映画二作目の「南総里見八犬伝」での演技力が高い評価を受け、23歳でありながら、明日の映画界を背負って立つ男!と絶大な支持を評論家からも受けている。


   そんな大スターとさっちゃんがデート?ふみはお腹の皮がよじれるかと思うくらいに可笑しかったが、何とか笑いをこらえつつ、口を開いた。


  「それこそ、絶対ないから安心なさい!」

    しかしサチはふみの言葉を気にもせず「まったく私ったら交差点の人通りの多い真ん中で時次郎にプロポーズするのよ。それも女の私からよっ!……今から考えても、本当に身勝手な夢だったわ」と、少し頬をピンク色に上気させて恥ずかしさを押し殺すように呟いた。


    よねもふみも顔を見合わせて笑いをこらえた。






ワカバよもやまコーナー


    もう10月初旬のことになるのですが、岩手の大船渡の知り合いから、秋刀魚を送っていただきましたぁ "٩(•̤̀ᗨ•̤́)۶"バンザーイ



   今や高級魚なので、我が家では初モノですぅキラキラキラキラキラキラ

   もう、家族一同、狂喜乱舞〜音譜音譜音譜

ワッショイ └(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘ワッショイ



   20尾入りでしたぁ飛び出すハート

もちろん、その晩は目黒のさんま祭りでした🏮

マツリダ♪🏮((ᕕ( ᐛ )ᕗ))🏮♪マツリダ





   そういう嬉しいことがあるかと思えば、過疎地にあるワカバ邸は自然の驚異と戦わなくてはなりません悲しい



   ワカバが伐採した篠竹はこれで上矢印約30本…

まだ切らなくてはいけない篠竹は、およそこの10倍はありますゲッソリ


   篠竹は長いものだと約6m40cm、短くても約5m70cmもありましたぁガーン


   このままではゴミ屋さんが持って行ってくれないから、細かく切ってゴミ袋に入れなくちゃならないの〜あせる


   この本数でゴミ袋が10袋は出来るかなぁはてなマーク


   我が家の裏山に生えているので、放っておくと細長い大きな笹っ葉が山のように降り注いできます。

   トヨは詰まるし、枯葉掃除が大変なのよ〜悲しい

なので、箸より重い物を持ったことのないワカバが、裏山に登ってギコギコ切ってるの〜アセアセ



   こらぁムカムカ ワカバ一族の男どもは何してるんじゃあ !

   ワカバは物置だってやってるのよームキー


   緊急招集よ〜!! 親戚の男どもは手伝いに来なさ〜いピリピリ

   柿とどんぐりの実をあげるから…

(それじゃあ、サル猿とリス🐿しか来ないっちゃよ!)


   筋肉がついてムキムキになっちゃうでしょあせる

その前にもう右腕が上がらないけど…悲しい


   みなさん、もしもワカバのブログ更新が途中で途切れたら……、篠竹に埋まってしまったと思ってくださいねお願い




第5章「予知夢」② へつづく







「およねさん」


 今回の主な登場人物…


土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校4年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。


平山 ふみ …よねの同級生。鼻ぺちゃのお喋りで明るい性格。


山村 サチ …よねの同級生。インテリ眼鏡で冷静沈着。いつも低音で論理的に喋る。


土志田 麻美(まみ)…土志田家三女。よねより1歳年下の小学校3年生。土志田家ではただ1人、目がパッチリの可愛い妹。




(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)