の続き。

↑からお読みください。




埴輪氏が捨て台詞を吐いて出て行ってから、半刻が過ぎただろうか。



玄関に車のエンジン音がした。

犬子がわんわんと吠える。


誰かが、ねこまた家の駐車場に車を停めている。


埴輪(ツチクレ)だ

まさか帰ってくるとは本当に思っていなかったので、ちょっと焦った。

おまえとはもうおわりや

は、かなりの破壊ワードなのだ。


正直、なんやねん今更。おまえの巣へ帰れよ(口調が荒い)

と思った。


ねこまたは、リビング横のサンルームでハンモックにめり込んで就職活動をしていたので、埴輪がリビング内へ入ってくる前に、光の速さで動いてリビングへ続くガラス戸を半分閉めた。

(ねこまたがめり込んでいるハンモック↑)



よし、居留守を使おう。


埴輪氏が無言でリビングへ入ってくる。

クマムシくん「あれ?猿くんまだ?猿くんの塾って、迎えに行くん??」

と、ガラス越しにねこまたに問う

「わからん。迎えに来てほしい時は電話くるから」

そう返事をして、ねこまたは、静かに就職活動を続けた。


猿「たっだいま〜爆笑

猿くんが元気に塾から帰宅した。


ダイニングテーブルの定位置に埴輪氏
向かい側に帰宅したばかりの猿くん
ガラス戸をはさんだサンルームのハンモックにねこまた

三者が勢揃いだ。
気まずいぜ。

何も知らない猿くんが、いつものようにニコニコしつつニャンコ大戦争をはじめようとしたその時!!

クマムシくん「猿くん、パパ、お母さんに捨てられてん。なんとか言って。」

と言いよった。


おいおい、つい数刻前に、子どもに伝えるのは来年の春にしましょうねって言ってた話はどこにいったんや?

嘘か、嘘つきか、また嘘つくんかツチクレ君は

猿「え?」

猿くんが、ねこまたと埴輪の顔を交互に見た。

ねこまたお母さんは、死んだ目をしている。
零下50℃の眼差しで埴輪父を見ている。

おかんのこの顔は、ガチで怒ってるヤツやと気づいた猿氏は、

猿「何があったん?」

と、埴輪父に聞いた。

埴輪氏は猿くんに、つらつらと事の経緯を話す。
どうやら猿くんには、つい先月くらいに2人で温泉に入った時に、四年前からしているお店の事は話していたらしい。

その時の猿君の返事は、「父大変そうやなぁ。体に気をつけてがんばりや〜」だったってよ


猿「あ〜、、、!それね。」



おのれ埴輪め、素直な猿君まで巻き込んで秘密を共有させていたとは、腹黒い。腹黒すぎる。

「お母さんはもうこの人と家族でいるの無理」
「コイツ嘘ツキ、信頼ナイ、ムリ」

とカタコトの日本語になった。
涙が滲む

猿くんは無言で立ち上がり、
涙滲むねこまたの前にある、リビングを遮るガラス戸をピシャリと閉め、カーテンまで閉めながら言い放った。

猿「はい、今から10分休憩。俺が戻るまで誰も何もしゃべったらあかんで。」

すみやかにさる猿氏

リビングに残された2人。


クマムシくん「なんやあれ?なんやあれ!」

と、埴輪氏が面白そうに言ってきたので、

「たぶん今二階で泣いてるで猿君」

と返した。

猿くんは2階の自分の部屋で、漫画を読んでいたらしい(猿曰く、平常心に戻るための禊)

10分後、リビングに降りてきた猿くんは、再びカーテンを開け、ガラス戸を全部あけた。

猿「どう?ちょっと頭冷えた??」

玄関ドアから出て行った時の般若のような表情とは打って変わって、気の抜けた埴輪のような雰囲気を纏っている埴輪氏と、

殺気だっている凶悪にゃんこのようなねこまた。
ねこまたは、静かに手を上げた。
ねこまたは発言がしたい。

猿「はい、お母さんどうぞ。」

猿裁判長から発言許可が降りる

「子どもにはいわんとこってさっき話し合ったばっかりやのに、また嘘つきましたこの人」

クマムシくん「聞いた?聞いた猿くん!コノヒト呼ばわりやで?ひどくない?」

猿「はい、埴輪父黙って。次埴輪父どうぞ」

クマムシくん「俺ひとりで車の中で考えて、俺は家族を失ったら何も残らへんと気づいたから帰ってきました。」

クマムシくん「体裁なんかあるか!離婚したくないから猿くんを味方につけるしかない。」

クマムシくん「猿くんは俺の味方やんな?な?」

猿「、、、埴輪父の味方かと言われるとそうではないけど、俺は離婚は嫌やから今回は父につく。」


そうやろうそうやろう!とドヤ顔で頷く埴輪氏が非常に不愉快極まりない。

「おまえとはもう終わりや言いましたコノヒト」
「ハグも拒否しました」
「終わりで良いかと思います」

とねこまたが反論

猿「え?そんな事言ったん??(あほやな父、、、)」


猿くんは、ねこまたが埴輪の行動の何に怒っているのかを、埴輪氏にわかる言語に翻訳して伝えてくれた。

そして、埴輪氏がぎゃーぎゃーわめく、意味不明な言語(昭和のじゃりんこチエに登場するおっさんみたいな思考回路)を、ねこまたが理解できる言語に翻訳して教えてくれた。

素晴らしい通訳がいれば、交渉はうまくいくという事を、目の当たりにした瞬間だ。

猿くんすごー

金金金、カネが俺の世界の中心。
というタイプである埴輪氏も、ここへ来てようやく、お金よりも大切なもの(つまり家族)があると気づいたようだ。

今までは、家族が自分のことを無条件で好きでいてくれたから頑張れたけど、
家族がなくなったと実感した瞬間、自分ひとりだとなーーんも頑張る気もおきなくて、お金も欲しくなくなって、なーーーーんもなくなってしまったらしい(その間わずか30分)。

4年間秘密にし続けたお店の事も、こうして正直に妻に話せたからスッキリしたらしく

これからは細々と頑張る!

と言った。


いや知らんがな。キミは嘘が無くなってスッキリしたかもしれんけど、こっちはモヤモヤ大発生やで??
ゲロはくわゲロゲーロ🐸


どちらにせよ、結論は9ヶ月後のねこまたちゃんに託す心づもりでいた今のねこまた氏だから、

嘘つきツチクレの埴輪の決意など信じるわけはない。
ひとまず私は埴輪どころではない。

夏までには、埴輪抜きで、ねこまたとカピ子と猿くんの生活を安定まで持って行く。(こんな時もあろうかと、ねこまたは生活費3ヶ月分を学費とは別に確保しているのだ)

ねこまたから殺気が抜けた事を確認した猿くんは、


猿「じゃあ、後は2人で話して〜」

と言い捨ててさっさと自分の部屋へ戻っていかれた。

、、、猿裁判官がいなくなってしまった。
よし、もうしゃべるのはやめておこう。


埴輪氏はふぬけた埴輪の雰囲気を纏ってリビングに座っている。

クマムシくん「もうバレた事やし、俺の店見る??」
とか言い出して、ねこまたに自慢してきた。

小ぶりだが、なかなか良い感じの店ではないかこんちきしょー
埴輪くんらしい店内レイアウトだ

クマムシくん「俺、いつも店閉めたらここで寝てる。」
クマムシくん「ここの近くの銭湯でお風呂入ってる」
クマムシくん「朝まで店開けた日は、会社行くのしんどくて寝坊しちゃったりしてた。」
クマムシくん「今までは会社と店とふたつかけもちしてたから、家に帰ってくる暇がなかったけど、これから1つに絞ったらもうちょっと帰ってこれそう」
クマムシくん「収入は激減するけど、、、」

ペラペラとよくしゃべる口やなふんっ


埴輪氏が語るたびに、

今までの埴輪氏のポンコツ父ぶりの原因が、パズルのピースを埋めるようにはまって行くのを感じた。

家族旅行では午前中ずーーーーっと寝続けるのが基本姿勢で、昼から元気に活動を始めるあの理由も、

頭痛い頭痛い、寝られへん寝られへん体調悪いといいながら、日中に6時間くらい寝続けるあの姿も、

夕方から朝までお店あけてたからかい!!

と悟った。


埴輪くんのお店は、ねこまたと結婚したばかりのあの頃、勤めていた職種のお店だ。
給料なんて雀の涙で、弟子入りしたくらいの気持ちで勤めていた仕事だ。

結婚後、夜間に働く職種では家族生活を維持できないと悟り、話し合いの末別の仕事をする事になった。

ちっとも儲からない。
ただの趣味のお店。
家族を養うことなんてできない。


4年間の嘘は、妻ねこまたの心をすっかり凍らせてしまった。
全く持って信頼できないタイプの夫だ。生粋の嘘つきで、息を吐くようにスラスラと嘘をはく。裏表の鬼。

正直なところ、埴輪くんはねこまたがめちゃくちゃ嫌いなタイプの人間なのだ。
カピ子や猿くんには、このタイプの人間と友達にすらなって欲しくないし、恋人にもして欲しくはない。

全力で避けて欲しい。



けれど、この真実はねこまたちゃんを喜ばせているのも事実なのだ。

埴輪くんが家族を持った事であきらめた事が、15年の歳月を経て再び日の目をみているのだ。今もうすでに。


へ〜すごっ!

とも思っている。

妻ねこまたは、埴輪氏のお店なんか行きたくもないが、猿くんとカピ子は落ち着いたら行ってみたいそうだ。

なんならバイトもしたい(夜間だから高校生バイトは無理です)。


良かったやん埴輪くん。
金持ちになる銭ゲバな夢は消え去ったけど、もう一つの夢は叶ったやん。

埴輪くんはさ、金金金いう自分を捨てて、そのままその小さなお店を朽ち果てるまでずっとすれば良い。

実は、もうひとつの会社は埴輪くんの手におえる分野ではないなぁと、常々思っていたのだ。
はやくやめてくれないかなぁ、心配やなぁと。


今回、妻ねこまたの心底冷え切った眼差しと、
計画的に円満に、できる限り子どもチームの傷が少ない方法で離婚しよう。
という揺るぎない言葉が、

コロナ騒動以降、金金金星人になっていた埴輪のヒトの何かを打ち砕いたらしい。

金金金金💰が手に入っても、家族が消滅したら意味がないと思ったらしい。


ねこまたは、今の埴輪くんへの自分の気持ちを言語化できない。

けれども、1週間という時間が経過した事で、脳内の整理整頓が進んでいる事を感じる。


なによりもまず、今のねこまたがするべき行動は、
埴輪くんを罵る事でも、結婚を悔いる事でも、泣いて落ち込む事でもない。

そこそこ安定した収入をもらえる定職につくことやぞねこまた。

見通しが悪すぎる我が家の未来は直視せず、
不安は今しばし棚の上に上げて、
今この時この瞬間に目を向けて、粛々とただ生きよう。

と思ふ。


楽天市場


楽天市場



ねこまた家は白わんこをチョイス↑


あれ?ティッシュどこ??

と探す手間が省ける上に、なんなら枕にもなるティッシュボックス。


夏の部屋着に最高↑

↑もうこれは間違いなくおすすめする。
子どもの運動会、キャンプ、バーベキュー、踏み台、遊園地などの待ち時間に最適。

ねこまたとカピ子は、イベントに行く時はいつだってこれを持参だ。