かかりつけの大病院から、小児の側わんの手術ができる総合病院を紹介していただき、
この度県をまたいで馳せ参じてきた。
なかなかに良き感じの先生であったがゆえ、カピ子は手術に向けての不安を吹き飛ばし、超前向きモードに気持ちを切り替えておられる。
カピ子の手術について記録する前に、ちょっとほら、
100点の男埴輪氏の株価が大幅に値下がりした事を記したいと思う。
良いお父さんを目指す埴輪氏株の暴落
「大切なカピ子の手術の話がある診察やから、俺も一緒に行くわ!!」
埴輪氏はそう言っていた。
いやいや、手術の日程を決めるだけやし、来なくても大丈夫やで〜
場所も遠いし(片道2時間)私とカピ子の2人で行くよ
埴輪くんは手術の日かその次の日に行くといいんちゃう??
と言うねこまた。
「カピ子?カピ子もパパに一緒に来てほしいやんな??お母さんだけよりも、お母さんとパパ2人の方がいいよな??」
「、、、まぁ、強いて言えば2人とも来てくれたら嬉しい、、、かな?」
「俺絶対行くから!!朝は何時に出発するの?8時??わかった!!8時までには家に帰ってくる!!」
(⚠️埴輪氏は半分単身赴任みたいな感じの父親)
病院が終わったら、3人でどこがでランチ食べて帰ろうね
などと埴輪くんが言うもんだから、カピ子も今回の病院の初診を楽しみにしておられた。
、、、、、。
妻ねこまたは期待なんてしねえ。
これまでに何度、埴輪氏の寝坊で約束を破られた事だろうか。
奴は時間を守らねえ
、、、、よし。
当日の朝の出発の時点で埴輪氏が自宅にいなければ、スタコラサッサとカピ子と2人で病院へ出発しようそうしよう。
がしかし、このねこまたでさえも!!
お正月からこれまで「良いお父さん」を目指して頑張っておられた埴輪氏をちょっと信じてしまった。
埴輪氏は早朝に帰ってくる。
病院がおわったら3人でランチを食べる。
なんだか楽しいお出かけみたいだわ
と、、、、、。
本日の朝8時。
埴輪のヤツは帰ってこなかった。
これが時間を守り、約束を守るタイプの父親だったらば、何か事故にでも巻き込まれたんじゃ無いかしら??と心配になるだろう。
だがしかし埴輪は違う。
ただの寝坊である確率99%なのだ(ねこまた調べ)
心配したカピ子が埴輪氏に電話をかけるが出ない。
オッケーオッケーカピ子、時間になったから出発しよう。
なんのなんの不安になることはない。そもそも初診は2人で行く予定やったやろ
お母さん帰りに寄りたいカフェがあるから、2人で行こう
「おはよう。
寝てるかな?
時間になったので行って来ます。」
ねこまたは、埴輪のラインに上記の文章を送った。
もう間も無く高速道路に乗るというところで、ねこまたのスマホが鳴る。
、、、、てやんでい!こちとら運転中だこんにゃろめい!!
と思いつつ、冷め切った気持ちで通話をオンにした。
「最悪や!!なんで目覚ましならへんの??5個もセットしてたのに!!!!!」
埴輪くんが叫ぶ。
いや知らんがな。目覚まし時計に聞いてくれや。
「診察って何時からやっけ??俺、今から直接病院に行くわ!!場所ってどこ??」
昨日ラインに書類の写メ送ってますけどもー。
見ました??
「あ!そうやった。わかった、それ見て行くわ!!」
電話が切れる。
、、、、、しーーーーん。
、、、、カピ子よ、、、、何回も言ったと思うけど、今の会話のパターン結婚する前からやからな??
これはもう、「約束を守ることができない性格」なんやと思うわ。
「守る気はあってんけど守れませんでした」
は、結局「ただのドタキャン」やからな。これでまたひとつ、埴輪氏はねこまたお母さんからの信頼を失ってん。
信頼を得るのには時間がかかるけれど、信頼を失うのは一瞬や、、、
お母さんも気をつけるわ。カピ子も気をつけな。
「なんか、、、別に良いけどちょっと嫌な気持ちになるな。」
と、カピ子はつぶやいた。
そりゃそうや。
守れない約束なら最初からしない方がいい。
(↑埴輪氏の場合のみ適用)
はるばる2時間車を走らせて、カピ子は初診の受付を済ませた。
2階の脊椎科の待ち合いに座る。
すると再びねこまたの電話が鳴った。
「ねこまたちゃん!俺病院に着いたよ??どこにいるの??」
????
えらく早いな。と思った。
2階のF待ち合いやで〜と伝える。
「俺、今2階のF待合の前にいるねんけど??」
辺りを見回すが、埴輪くんの姿は、、、、ない。
ぴん!と、ねこまたは気づいた。
「埴輪くん。もしかしてかかりつけの大病院に行ってる??」
、、、、、。
ビンゴだった。
なんと埴輪氏は、紹介状を書いてくれたいつもカピ子が診察を受けていた病院の2階のF待ち合いにいたのだ。
この人、ほんまに妻の話を聞いてないねんな。
と思った。
①かかりつけの大病院では小児の手術ができへんから、県を跨いだ〇〇総合病院に行くねん。
②この前スノボに行った場所の近くやでー
③高速の下り口は〇〇やで
④片道2時間かかるから、朝8時に出るよ
もう何回も伝えた言葉だ。
そして、受診日や受診場所が記載された用紙の写メも送っている。
聞いていない
読んでいない
確認していない
これらが証明された瞬間であった。
がっかりだぜ??
大急ぎで車を走らせた挙句に、間違えた病院に到着していたと知った埴輪くんは、ひどくがっかりしておられた。
「もう、今日は縁がなかったと思ったら良いんちゃう??今から高速に乗っても間に合わへんし。そもそも2人で行くつもりにしてたから、特に問題ないで。」
冷たく言い放つ妻。
暴言を吐いて怒り狂わなかった事を褒め称えてほしい。
「そうするわ。仕事するわ、、、。」
消えいるような声で返事をなされた。
株価を上げたカピ子について
カピ子とねこまたは診察を受け、レントゲンを撮り、手術をしたい意思を医師に伝えた。
夏休みの手術は全て予定が埋まっていたけれども、休学中で年中夏休みのようなカピ子に、この日が良いなんていう都合なんてない。
いつでも、すぐにでも手術を受ける心づもりはできています。空いている日で手術してください。
と伝える。
カピ子もやる気満々だ。
医師は、40代よりも年若い骨の方が柔らかく、矯正しやすい事を教えてくれださった。
そうとなれば話が早い。
担当医師はテキパキと作戦を練り、今日中に術前検査を済ましてしまう事になった。
MRIだけは、予約が必要なので来週受ける事となる。
レントゲン→診察→採血→心電図→肺機能検査→尿検査→レントゲン→CT
どの検査も、16歳のカピ子は取り乱す事なくスムーズに受ける。
看護師さんや技師さんの指示に素直に従う。
平均IQが71で、集団教育を受けるのにひどく苦労した日々が嘘のように、カピ子は普通の少女だった。
医師の目を見て、看護師の目を見て、はっきりとした声で受け答えをしていた。
同意書のサインなども、スラスラと自分で記入した。
午前10時に受付をして、全て終わったのが午後3時。
5時間もの間、カピ子は文句も言わずに待ち合いで待ち、あっちやこっちへ移動なされた。
あまりに長時間待たされて、イライラを口に出している患者さんもおられた。
「待つのも疲れるけど、こんなに長い間ずーーーっと働いてくれてるお医者さんや看護師さんはもっと疲れるやろうなぁ。ありがたいなあ」
と言うと、「ほんまそれ。お医者さんがいてくれて良かったわ。」とカピ子が言った。
いつのまにかカピ子は、自分のしんどさだけではなく、他者のしんどさにも思いを馳せられる女性になっていた。
厨二病の頃の彼女からは想像できない。
「医療ドラマの中にいるみたいわたし、CTって初めて撮った〜」
と彼女は喜ぶ。
技師さんや看護師さんのテキパキとした動きは、カピ子にとってかっこいい事この上ないのだ。
担当のお医者さんも、2回目のレントゲンの時に参加してくださり、カピ子の首をぐいーーーっと引き伸ばして、必要な胸骨のレントゲンを撮ってくれた。出来上がったファイルを片手にもち、ねこまたとカピ子に目配せして足早に去って行く医師の、かっこいい事ったら
「今日カピ子が受けた検査の結果を全て見て、あの先生がドラマの大門ミチコ先生みたいに、カピ子の手術を考えてくれるねんなぁ」
と言うと、
「うん、あの先生で良かった。なんか頼り甲斐があって安心したわ。手術が楽しみ!!」
医師の後ろ姿を見つめてカピ子が笑顔で呟く。
へとへとに疲れて、お腹がぺこぺこになった母娘は、病院内のカフェーに入る事にした。
売り物の焼きたてパンが、もう残り5個しかない。
よもぎ蒸しパンとイチゴデニッシュとシュガーパン
それに、冷たい抹茶ラテ
この病院大きいな
この病院綺麗やな
パン美味しいな
病院の給食楽しみ!!
担当の看護師さん早く見たいな〜
カピ子はウキウキしている。
側わんが酷くなった事で、日常生活をしんどく感じてしまう原因が、治るかもしれない。
肋骨が痛くなったり、腰が痛くなったりしなくなるかもしれない。
そんな気持ちでワクワクしている。
身長も3センチほど伸びるだろう。
そうして大手術を終えて、痛みや苦しみを経験したカピ子は、きっと素敵な人間になるだろう。
「お母さん、このDVD(レントゲン写真が入ったもの)は捨てたらあかんで、手術した後のレントゲンと比べて、こんな風になりましたよって見せたいから。」
と言うカピ子
この先、大人になったカピ子が背骨の側わんで苦しんでいる子ども達にであったら、自分のレントゲンと手術跡を見せて、大丈夫だよと説明してあげたいんだそうだ。
女神かと思ったわ
手術は6月。
5週間前から自己採血が始まる。
手術までに後数回、ねこまたとカピ子は長距離ドライブを楽しむ。
今日は時間がなくなってしまったけれど、次は行ってみたいカフェに行こうね。
と、約束する。
うん、もう埴輪くんはいいわ。
ねこまたはもう、破られるかもしれない約束にストレスを感じたくないんだよ。
次回のMRIの日は、どうしても仕事を休めないねこまたの代わりに、埴輪くんが行ってくれる事になった。
「パパで大丈夫かな、、、」
と、カピ子は不審がっているが、ねこまたがいない時こそはなんとか頑張ってくれるだろう。
いやがんばれよはにわ?
さて。
休学中のこの一年。
カピ子の観察がとても楽しみだ。
幸せ
カピ子は蛹の皮を脱いで、ついに大人になったと感じるくらいに、どの検査もひとりでやり遂げてしまった。
まだまだひ弱い成虫だけど、ここからが広い世界で人生を送るスタートなのだと思う。
カピ子の成長を目の当たりにして、幸せ!
ねこまた太った。
でもこのパンツなら食い込まなーい
シルエットがとれもおしゃれなエプロン
カピ子が家事で使用中。
素敵なお姉さんに見える優れもの