2017年の調査によれば、日本での脳血管疾患(脳卒中)患者数は111.5万人。1年間に脳血管疾患の治療に投入された医療費は1兆8,085億円。2019年の調査では介護が必要になる原因の16.1%が脳血管疾患と報告されました。

また世界脳卒中機構により、世界人口のなかで、脳卒中を経験してしまうのは約17%(全人口の6人に1人)であるとされ、いかに多くの人がこの疾患で苦しんでいるかがわかります。

 

これだけ多い疾患にもかかわらず、現在の西洋医学的医療では、脳卒中の後遺症に対してはリハビリしかないのが現状です。発症から6か月以内の機能回復ボーナス期間(*)であれば、それなりに回復を認めますが、それ以降は現状維持が精一杯ということになります。

 

*機能回復ボーナス期間:発症後3時間から6か月以内を指します。この間は、脳のネットワークは非常に軟らかくなり、わずか数日、場合によっては数時間という単位で変化が行われます。こうした性質は、脳が傷ついた場合に備えて、生まれながらに私たちの中に備えられた「回復力」のひとつです。この間、ダメージを負った脳の神経細胞では、「GAP43」という名前の遺伝子が大量に発現します。「GAP」は「Growth Associated Protein~(成長に関連するたんぱく質)」の略です。要は脳卒中が起きたあと、脳は病のダメージから立ち上がろうとするかのごとく、「成長しよう」と大声で叫んでいる状態です。

このGAP43は、私たちの人生で「赤ちゃん」の時期に、脳で大量に発現することがわかっています。(生理学研究所 伊佐正教授)

これを利用して脳内のシステムを「急速学習モード」に切り替えることで、喪失からの回復を果たそうとしているのがこの時期の脳内に起こっている状態です。まさに「脳卒中の直後の脳が若返っている期間」であり。この時期の頑張りが、今後のカギとなります。

この時期に本当は治療に関わりたいのですが、通常この間は入院していることが多いため、残念ながらなかなかお会いできません。でも、大丈夫です。この時間は脳が与えてくれた最高のボーナスタイムであることは理解してくださったはずです。よって少なくとも決して公的な保険範囲内の短いリハビリだけ行い、そのあとはベッドに横になっている、なんてことはないようにしてください。応援しています。頑張ってください。

 

●機能回復通常期間

脳卒中発症後6か月(180日)以上が立った状態です。

現在の日本の公的医療保険において脳血管疾患等のリハビリテーションは180日までとなっています。つまり、通常の西洋医学を主とする病院では、機能回復ボーナス期間以降の回復は難しい、と考えているということです。しかし、ボーナス期間が過ぎても回復をあきらめる必要はありません。

2008年に発表された米国での研究では、脳卒中後6か月以降のマヒした手の回復を調査したところ、日々の介護にちょっとした工夫を加えてもらうだけで、能力が3倍以上回復したと報告されていました。

工夫とは、麻痺した手を本人が出来るだけ使えるようにすることで、例えば持ちやすくしたフォークやスプーン、材料を大きめにカットする、などの単純なことです。

つまり、6か月以降も改善の可能性がある、ということです。

どうか、どのような時であっても決してあきらめないでください。

あなたの脳は、あなたの頑張りに必ず答えてくれます。

 

ちなみに当院での治療メニューとしては

1. 山元式新頭針療法(YNSA)  

2. 低周波針通電運動療法(EAK)

3. こもれび式自己リハビリ指導  

4. こもれび式脳回復HOM療法

5. 幹細胞上清療法(鼻腔点鼻) 
などを準備しています。

 

ちなみに、こもれびの診療所では、どの治療を選択したとしても、必ず「褒め療法」を併用しています。

 

●褒め療法とは

2010年、アメリカや日本、さらにはドイツ、韓国、インドなど、7か国が共同で行った大規模研究によると、「歩くリハビリを行ったあとに“褒められた”患者さんは、“褒められなかった”患者さんより歩くスピードが25%以上速くなった」という結果が出ました(180名対象)。

このような研究です。

毎日10m、それが難しい場合は可能な距離を歩く行為を2つのグループに分けてやってもらいます。

1グループ:練習し終わったら「お疲れ様でした」などと言われて終了する。

2グループ:スタッフが10m歩くのにかかった時間を測る。そして、歩き終わったらすかさず、「よくできました!今日は○秒でした」とほめる。その後、もし結果が前日より少しでも速くなっていれば、「昨日より3秒速くなっていますよ」など具体的にさらに誉め言葉を足す。

記録が変わっていなかったり、前日より遅くなったりしても、「ちゃんと維持できています」「歩く姿勢が良くなっています」など、とにかく前向きにリハビリできるような言葉を投げかける。

なお、2グループのリハビリの内容や練習の時間はまったく変わらない。

〈結果〉

リハビリを行う前と後の差(改善度)は、褒められなかったグループが10秒間で2.6m長く歩けるようになったのに対し、褒められたグループは4.6m。改善効果はおよそ1.8倍にのぼりました。

なぜ、このような違いが出たのでしょうか。

この研究を行ったUCLAのブルース・ドブキン教授はこのように答えています。

「私たちの脳には、“報われる”ということに反応する特別なシステムがあります。今回の研究で、私たちは“ほめる”というシンプルな方法により、このシステムを上手に刺激することに成功しました。それにより、大きな改善を得られたと考えています」

最も大切なのは、本人はもちろん家族も回復を信じる事、そして家での時間、自己リハビリを懸命に頑張ることです。もしそばに褒めてくれる人がいないなら自分で自分を褒めてあげてください。あなたの誉め言葉を脳はとても喜んでくれるので。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
どうかどうか、脳卒中で苦しんでいる人が少しでも笑顔になりますように。