松戸市立博物館開館30周年・千葉県誕生150周年・松戸市制施行80周年記念 館蔵資料展『どきどきクロノロジー』 勉強メモ

 

 

20232/6/4(日)訪問。 前回訪問時に、土器編年の記載がない常設展示を見ていたので正直期待していなかった(『この土器は縄文中期で~す♡』のみの能天気な記載にガッカリ(-_-。))。 しかし、それは杞憂におわり、縄文中期~晩期の土器編年を勉強できた。 松戸市博物館 グッジョブ!(^-^)b

 

 

 

 

1. 貝の花遺跡(松戸市)

  • 江戸川左岸、坂川流域の台地上標高約15mにある東西87m・南北80m・幅15-17mの環状の馬蹄型貝塚遺跡。
  • 貝塚は、縄文中期から後期にかけてはハマグリ・サルボウなど、晩期にはヤマトシジミの貝層が多い。
  • 貝層の下から中期21軒、後期13軒、晩期1軒の計35軒の竪穴住居址などの遺構も発掘。日本で初めて貝塚に伴う集落全体の概要が把握できた遺跡
  • 51体の人骨が発掘され、その中には抜歯が行われたものもあった。
  • 加曾利式をはじめとする各種土器、ならび、石器・骨角器・貝器・土偶・土製耳飾・有孔土製円板などが出土され、更にイノシシ・シカ・イルカ・クジラ・スズキ・マダイ・クロダイなどの骨も出土。
  • 縄文時代後期末から晩期にかけては海面の後退によって、付近の汽水化が進行し集落放棄の一因となったと考えられている。

貝の花遺跡@松戸市

貝塚の下に竪穴住居址が計35確認された。

 

 

 

周辺貝塚との比較;A加曽利貝塚、B曽谷貝塚、C伊波貝塚

 

 

 

 

 

2. 層位学的手法を用いた貝の花遺跡出土土器分群の分類

  • 18号住居址(↓図)の土器編年;古い順から 土器No.3~5 ⇒ N.6 ⇒ 18号住居址 ⇒ No.7。 (地層累重の法則)

 

 

 

 

  • 各トレンチで、地層の重なり方、それらに含まれる土器の特徴などを注意深く観察・記載・分類し、出土土器の新旧を確認する。
  • 貝の花遺跡から出土する土器群は、↓図のように第1群~第7群までの7段階に区分された。

 

※ 遺跡内クロノロジー / 大平山元 II遺跡の例

 

 

 

 

3. 土器編年

 

3-1. 土器編年学のはじまり

  • 里浜貝塚@宮城県東松島市にて、古生物学者の松本彦七郎は、貝層を層位に分けて1層ずつ掘り下げて発掘調査を行い、層位ごとにみつかる土器の特徴が異なることを明らかにした。 これより、土器の違いが土器を製作した集団の生活様式の異なりを示すのではなく、土器の作られた時期の違いを示していることを明らかにした。
 
 
 
3-2. 千葉県を中心とした土器編年

 

 

 

3-2-① 縄文前期=ニツ木式土器(二ツ木向台遺跡);展示会入口の展示番号No.1。 羽状縄文系;口縁部に瘤付、胴部上半に重層ループ文。(貝の花遺跡出土の土器ではない)

 

 

 

3-2-② 中峠類型土器 (キメラ土器)

  • ↑根木内遺跡出土土器は、加曽利貝塚博物館の区分に従うと中峠類型(勝坂・阿玉台式から加曽利E式への過渡期の両者の性格を併せ持ったキメラ土器)となる。(松戸市立博物館も飛ノ台史跡公園博物館と同様に加曽利EI式として区分しているが、中峠類型としたい)。
 

3-2-③ 加曽利EI式土器

 

 

  • 加曽利 EI 式土器(市原市草刈遺跡)。 頸部に無文帯。

 

 

 

3-2-④ 加曽利EII式土器(貝の花遺跡 第III群)

 

 

  • 貝の花遺跡 第 III 群土器

 

 

  • 加曽利 EII 式深鉢(子和清水遺跡@松戸市). 頸部無文帯は消滅。

 

 

 

3-2-⑤ 加曽利 III 式深鉢

 

 

 

  • 加曽利 EIII 式深鉢(子和清水遺跡@松戸市). 不明瞭な口縁部区画。

 

 

 

  • 加曽利 EIII 式深鉢(紙敷遺跡@松戸市)

 

 

 

3-2-⑥ 加曽利 IV 式土器

 

 

  • 加曽利 EIV 式深鉢(下水遺跡@松戸市). 口唇部に双峰のつまみ出し突起。

 

 

 

 

3-2-⑦ 称名寺式土器

  • 加曽利EIV式から直接変化したのではなく、同時期に中部地方で盛行していた中津式土器を取り込んで変化したものと考えられている。

※ ↑加曽利E敷系統は、個人的には称名寺2式との印象。 称名寺を1・2式と細分しない場合の加曽利E式系統の扱い方に今後注目。

 

 

 

  • 称名寺式深鉢(一の谷西遺跡@松戸市). 磨消縄文。

 

 

 

  • 称名寺式深鉢(一の谷西遺跡@松戸市). 特徴的なJ字文

 

 

 

  • 称名寺式深鉢(一の谷西遺跡@松戸市). 特徴的なJ字文

 

 

 

  • 中津式深鉢(大阪八尾市)

 

 

 

 

  • 称名寺2式深鉢(一の谷西遺跡@松戸市). 松戸市立博物館は、加曽利E式系統としているが・・・(今後要注目)

 

 

 

 

  • 貝の花遺跡IV群 No.10と中原遺跡@深谷市(埼玉歴民)出土の称名寺2式の類似性。 No.10の波状口縁の頂部に貼付されるC字文は東北の綱取1式のC字文の影響と思われる。

 

 

 

※ その2;縄文後期中葉の堀之内式~加曽利B3に続く