唐草文土器
1. 時代
- 縄文中期後葉の土器群。 曽利式・加曽利E式土器と併行。
2. 分布域;
- 長野県松本平・諏訪湖盆・伊那谷北部・木曽谷。 甲府盆地を中心に広がる同時期(中期後葉)の曽利式土器文化圏との境界は、八ケ岳西麓を流れる立場川(蛇込遺跡;唐草文土器が大量に出土)。下伊那唐草文土器文化圏との境は、伊那市小沢川と三峰川。
- 褶曲文土器、条線地文沈線渦巻文土器、腕骨文土器、綾杉地文隆線渦巻土器の4主要構成土器群からなる(守屋1990)。
- 土器型式の変遷観についてはほぼ共通し、基本4段階区分。
3-1. 第1段階
- 井戸尻式土器(勝坂III式)の系譜。同類の曽利式土器との関係も重要。
- 4単位立体突起付土器(↑1)、タル形土器(2)、円筒形土器(3~6)、波状口縁櫛形文土器(7)、加曽利E式系土器(8・9)で構成。
- 4単位立体突起付土器に見られる褶曲文は粘土紐貼付からおもに半隆帯に移行する段階。
- 波状口縁櫛形文は櫛形文系土器の最終段階として該期に残存。
- 加曽利E式系は資料数がきわめて少ない。
第1段階 4単位立体突起付土器 (熊久保遺跡@朝日村歴民館)。曽利式土器の影響。
第1段階 土器(熊久保遺跡@朝日村)。口縁に半隆帯の褶曲文と梯子文。頸部は無文。胴部上半に櫛形文。曽利式土器の影響。
第1段階 懸垂隆帯文・櫛形文土器(熊久保遺跡@朝日村)。下伊那唐草文1段階として下伊那地方でも認識可能。
第1段階 懸垂隆帯文・褶曲文土器(沢・丸山遺跡@箕輪村)。下伊那唐草文1段階として下伊那地方でも認識可能。
第1段階 波状口縁櫛形文土器(熊久保遺跡@朝日村)
第1段階 円筒形土器(梨久保遺跡3/4号住 @岡谷市)。 口縁部が無文、頸部に文様帯。
第1段階 円筒形土器(熊久保遺跡 @朝日村)。 口縁部が無文、頸部に文様帯。
3-2. 第2段階
- 中信土器群の主要構成群が出そろう段階。
- 古相は、腕骨文土器(11~14)や前段階(1段階)に見られた頸部文様帯を有する円筒形土器(15~18)を主体とする。
- 沈線褶曲文土器(10)も該当。
- 新相の沈線唐草文土器は、大別すると、頸部を有する器形と有しないタル形器形がある。タル形深鉢は、口縁部の省略で発生し一連の口頸部の縮小・圧縮化傾向に収れんされ成立した(百瀬2003)と指摘、有頸土器がタル形土器に先行する可能性が高い。よって、新相は更に細分される可能性あり。
第2段階古相 縦腕骨文土器。口縁上に1~2単位の透かし彫りの突起は、大木8aの影響か。胴部地文に綾杉文。
第2段階古相 縦腕骨文土器。口縁上に腕骨文を立てた4単位突起。また、口縁文様帯に半隆帯による渦巻つなぎ文が区画状に巡り、その区画内を縦の細線文が充填する。胴部には半隆帯4本による腕骨文が口縁上の突起に対応して縦に4単位付けられ、その間の胴部に綾杉文を施文。レプリカ法でエゴマの圧痕を確認。
第2段階古相 縦腕骨文土器(熊久保遺跡@朝日村)。1単位の透かし彫り突起が発達しトロフィー様になる。胴部は縦腕骨文で区画され、綾杉文が地文に施される。台付土器。
第2段階古相 縦腕骨文深鉢(熊久保遺跡@朝日村)。地文に綾杉文。
第2段階 縦腕骨文深鉢(熊久保遺跡@朝日村)。地文に綾杉文。
第2段階 加曽利E式系土器。
第2段階古相 口縁無文深鉢(熊久保遺跡@朝日村)。 縄文地文の胴部に、隆帯による縦腕骨文が区画様に付けられる。頸部にくびれのある器形。
第2段階古相 口縁無文帯円筒形土器(上木戸遺跡110住@塩尻市)。 頸部に腕骨文と沈線による縦細線文が施される。 胴部地文は縄文。
第2段階新相 有頸沈線唐草文系土器(ほうろく遺跡@安曇野市)。 右には、頸部に3本の半隆帯による渦巻つなぎ文が巡る。左の頸部には蛇行沈線が施され、4単位の橋状把手が付される。両者とも縄文地文、口縁は無文となる。
第2段階新相 有頸沈線唐草文系土器(平出遺跡@塩尻市)。 無文口縁、頸部に3本の半隆帯による渦巻つなぎ文が巡り、その上下に沈線による縦の細線文が付される。胴部の沈線による渦巻文や蛇行沈線は雑な印象。
第2段階新相 タル形沈線唐草文系土器(他谷遺跡@安曇野市)。 埋甕。
第2段階新相 タル形沈線唐草文系土器(松本考古館)。
【参考】