都市銀行98,000円、大手商社105,000円。これは1979年の大卒初任給です。当時は業界横並び。銀行では護送船団とも言われていました。
最近の大手企業では実際は25万円辺りが多いのですが、大卒初任給30万円、35万円、40万円と景気の良いニュースが飛んでいます。優秀な人材確保が目的とのことですが、その目的は昨今始まった訳じゃあるまいしと突っ込みを入れたくなります。大卒初任給で言えば2000年前後に概そ20万円となり、景気低迷が続いた結果、20年間は大きい変動は生まれませんでした。大卒初任給約10万円が20万円(2倍)になるのに約20年、20万円から25万円(1.25倍)になるのに約25年の時間を要しています。それでも初任給は上がり易いのです。新入社員以外の一般の社員の給与の現実は次のとおりです。
OECDのデータで主要7カ国(G7)での各国の賃金推移(名目)をみてみると、1991年を「100」として2020年と比較するとアメリカは「278.7」、イギリスは「265.65」、イタリアで「179.2」、6カ国の平均は「225.5」ですが、我が国は「111.4」で断トツのビリです。物価上昇を加味した実質賃金比較でも、インフレ率が高かったイタリアが我が国と同レベルの「100前後」ですが、他の5カ国の平均は「138.4」です。給与を30万円とすれば、日本は30年経っても30万円、他国は平均でも41.5万円に増えていると言うことです。
年収に関するバブル期(1990年頃)の経済紙の記事で覚えているのは、年収が「800万円」を超えると生活に余裕が生じるというものです。10年~15年前では「1000万円」でしょうか。最近のデータで全国平均では年収1000万円以上の比率は「5%前後」ですが、地方では年収1000万円を超える人は余り居ません。なんと東京では「共働きではない世帯でも「17.9%が1000万円以上」です。それでも東京で1000万円の年収のある人達は「余裕なんて無い」と訴えています。実際、東京では余裕が生じる生活には「年収1500万円~2000万円」が必要となりつつあるようです。地方では考えられない金額ですが、そのように世の中は流れているようです。昨年末には、日本を代表する大手商社の社員の年収平均が「2000万円超え」とニュースになりました。データが語るように日本は給料が上がらない国ではありましたが、昨今「上がるところは上がる」傾向が顕著になっています、
国民民主党は、所得税が発生する年収の壁を「178万円」に引き上げよと訴え選挙で議席を増やしました。これも必要ですが、これはセーフティネットです。「この政策では景気浮揚には至らない」ことに注意です。給料が健全に上がる社会でないと景気浮揚は為し得ません。
人手不足だと騒ぐ割に給料が上がらない日本(特に地方)。昇給の原資が無いと嘆く中小企業国家の日本。「鶏が先か卵が先か」の議論は実は不要です。企業の利益は上がっています。給料が上がることが先です。どうすれば良いのでしょう。つくづく政治や経済は難しく悩ましいものです。
(雀)