1 事件の概要

 本件は、会社が、(1)組合員Aとの、定年後のシニア嘱託社員としての再雇用契約にあたり、その労働条件について、担当業務を部門の一部とし、基本給額を低額に、就業時間を短く、職務手当を不支給としたこと、(2)組合員Aに、時間外勤務を禁止する指示を行ったこと、(3)平成28年夏期賞与について、組合員Aに、他のシニア嘱託社員よりも低い金額を支給したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして、申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1) 組合員Aの定年後再雇用契約の労働条件の決定について

ア 組合員Aに賃金の面で金銭的不利益があることは明らかであり、組合員Aをシニア嘱託社員として再雇用するにあたっての担当部門、基本給額、職務手当の不支給、就業時間については、一体のものとして不利益なものといえる。

イ 定年前、過去3年の、組合員Aの人事評価の最終評価は、決して高いものではなかったものの、人事評価の最終評価や再雇用後の賃金の決定に際しては、決定方法に関する明確な基準がなく、会社の恣意が入る余地が大きかったといえ、組合員Aの役職を再雇用後に3段階も降格したことについて、能力・評価が低いことを理由とするには疑問が残るうえ、他の職務に適性がなかったとの疎明はない。
 また、精肉部門の経験年数の長い組合員Aを、グロッサリー部門の一部の担当としたことは、不自然であり、合理的理由はないといわざるを得ない。
 加えて、組合員Aの1日の就業時間を、他の多くのシニア嘱託社員と比べ、30分短い7時間30分とする一方で、休憩時間を2時間としていることにも、合理的理由は認められず、不自然である。
 以上のことからすると、組合員Aの再雇用契約に係る労働条件は、いずれも不自然で、合理的な理由はないといわざるを得ない。

ウ 雇用延長制度開始後に再雇用されたシニア嘱託社員2名の労働条件は、組合員Aの条件に比して特異な差はないが、いずれも組合員Aより後、本件申立て以降に再雇用されており、組合員Aが組合員故に不利益な条件とされたとの疑いは払拭できない。

エ 組合と会社との間には激しい対立関係があり、組合員Aは積極的に組合活動を行っていたという事情からすると、会社は、組合及び組合員Aを好ましからざる存在とみていたことが推認できる。

オ 以上を総合的に判断すると、かかる会社の対応は、組合員故に組合員Aを不利益に取り扱うもので、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。

カ さらに、会社が組合員Aの再雇用にあたり不利益な労働条件としたことは、定年後もシニア嘱託社員として会社での就労を希望する組合員を萎縮させ、今後の組合の活動に影響を及ぼすとともに、会社への組合活動による影響力を減じさせるといえ、組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

(2)時間外勤務を禁止する指示について

ア 会社から残業が制限されることで、時間外勤務手当が支給される可能性が断たれ、金銭的不利益が生じるといえる。

イ 精肉部門で、恒常的に長時間の残業が発生していた状況において、精肉部門の部門マネージャーの経験があり、過去に会社から精肉部門の応援業務と残業を指示され、従事してきた組合員Aに、本件残業禁止指示を行い、精肉部門の応援を一切求めなかったことは不自然といわざるを得ない。

ウ また、本部からの残業禁止指示は、組合員Aに最初に行われたものであり、非組合員5名に対しては、本件申立て後に行われていることからすると、組合員Aに対する本件残業禁止指示が組合員故になされたとの疑念は払拭できない。

エ さらに、本件残業禁止指示が行われた以前の組合と会社との関係をみると、会社が、組合及び組合員Aを好ましからざる存在と認識していたことは容易に推認できる。

オ 以上を総合的に判断すると、会社が組合員Aに対し、本件残業禁止指示を行ったことは、未払い残業代をめぐって会社と係争中にあった組合員を嫌悪して行われたものとみるのが相当であり、組合員故の不利益取扱いで、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。

カ さらに、本件残業禁止指示は、他の従業員に対する見せしめとして、組合活動を抑圧排除しようとして行われたものであり、会社への組合活動による影響力を減じさせるといえ、組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

(3)平成28年夏期賞与について

ア 組合員Aの平成28年夏期賞与は、定年後再雇用されたシニア嘱託社員の中で最も低い金額であり、組合員Aに金銭的不利益があることは明らかである。

イ 会社における人事評価については、最終評価の決定に際して、会社の恣意が入る余地が大きいものであったといえ、賞与の決定方法についても客観的な規定や基準があったとの疎明もない。実際に、賞与の金額と人事評価とは、必ずしも対応しているとは言い難く、会社の大幅な裁量により、決定されていたといえる。また、組合員Aが日常的に店長の指示に従わないことがあったとの疎明はない。
 さらに、 組合員Aの勤務時間が一般より30分短いとの会社主張については、前記(1)判断のとおり、就業時間を他のシニア嘱託社員より短くしたこと自体が不当労働行為に当たり、合理的理由はない。また、組合員Aの評価が組合結成前から低かったとの主張についても、そもそも会社の人事評価に、恣意が入る余地が大きかったといえる。

ウ さらに、会社は、組合及び組合員Aを好ましからざる存在とみていたといえ、平成28年夏期賞与の支給金額は、組合を嫌悪した対応といえる。

エ 以上のとおり、会社が平成28年夏期賞与として、組合員Aに対し、他のシニア嘱託社員よりも低い金額を支給したことに合理的な理由はなく、組合を嫌悪した会社が組合員Aを不利益に取り扱ったといえ、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。

オ さらに、会社は、組合員Aに対し、他のシニア嘱託社員よりも低い金額を支給するという不利益取扱いを行うことによって、組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものということができ、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

(1)組合員Aに対する、定年後の再雇用に係る労働条件について、定年退職時に同等の職能資格等級にあった者との均衡を失しないよう決定すること

(2)組合員Aに対する、(1)で決定された労働条件に沿った賃金相当額(平成28年夏期賞与を含む。)と既払額との差額及び平成30年6月16日以降に時間外勤務をさせていれば得られたであろう時間外勤務手当相当額と既払額との差額の支払

(3)誓約文の手交及び掲示

※ なお、本件命令に対して、会社は、大阪地方裁判所に取消訴訟を提起した。

このページの作成所属

ある店舗で火災を出した。幸いにも従業員にもお客様にも死傷者はいなかった模様だが、従業員に対する顛末やお客様に対するお詫びがないのはなんとも情け無い会社である。新聞なりチラシの一部を割くなどして詫びることも出来ないのだろうか?