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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第7章 その他の改正の重要ポイント

先に挙げた3つの目的・背景に沿って、今回の改正案における重要なポイントを見ていきます。「特許法等」とあるとおり、今回は特許法だけではなく意匠法、商標法、実用新案法、弁理士法など全部で7つの法律が改正されました。ここでは、特許法の改正内容を中心に取り上げます。

 

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた手続き整備

特許法の範囲内では、主な変更点として以下の2点が挙げられます。

 

審判の口頭審理等のオンライン化を可能に

感染症拡大や災害等によって特許料納付期間を経過した際の救済措置(割増特許料の納付免除規定の新設)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ビジネスや消費者向けサービス、接客、飲食など、対面でのコミュニケーションを減らす取り組みが社会のあらゆる領域で行われるようになりました。今回の特許法改正は、そのような変化を受けた手続きの整備といえます。

 

例えば、審判手続における口頭審理は、これまで審判廷に当事者が出頭する形で行われていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、非接触型で「密」を避ける形の生活様式が浸透する中、対面方式のみの審判は難しいといえます。

 

また、企業活動がパンデミックの影響を受ける中で、所定の期間内に特許料を納付できない企業が増えたことが推測されます。今回の特許法改正では、これらの課題の解決が大きな目的の一つとなっています。

 

企業行動の変化に対応した権利保護の見直し

デジタル技術の進展を受けて、特許権のライセンス形態が複雑化したことへの対応策が特許法の改正案として盛り込まれました。

 

特許権が成立した後でも、過去の発明と類似しているなどの理由で無効の申し立てを受け、その対応を迫られることがあります。その場合は特許権者は権利範囲を変更・縮小するなどの形で特許権を訂正・放棄することになりますが、従来は特許権者から特許ライセンスをすでに受けている(通常実施権者である)ライセンシーの承諾を得る必要がありました。

 

しかしながら、当然特許権者(ライセンサー)にとってライセンシーの承諾を得る義務があるのは大きな負担です。そこで、今回の改正ではライセンシーの承諾要件が撤廃されることになりました。

 

特許法以外では、意匠法や商標法に関連する模倣品対策が加わりました。海外事業者が模倣品を国内に持ち込む(事業者による「輸入」だけでなく個人使用目的の持ち込みを含む)と、商標権等の侵害と見なされるようになりました。

 

第6章 3|特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入

 

特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入

特許権侵害訴訟の結果は、訴訟の当事者のみならず、他の業界に対しても、その事業活動に対して多大な影響を与える可能性があります。また、当事者にとって、他の業界の事業実態などに関する証拠収集が困難なときがあります。そのため、当事者の申し立てがあれば、裁判所が必要と認めるときにかぎり、広く一般の第三者に対して意見募集を行うことができるようになります。

 

「アミカス・キュリエ(amicus curiae)」は、「裁判所の友」又は「法廷助言者」とも呼ばれますが、米国や英国の民事訴訟において「裁判所に係属する事件について情報又は意見を提出する第三者」のことであり、アミカス・キュリエが裁判所に提出する意見書はアミカス・ブリーフと呼ばれます。

 

日本の民事訴訟法にはこのような制度に関する規定はありませんが、知財高裁大合議事件であるApple Japan vs. 三星電子事件(知財高判2014年5月16日)において、第三者からの意見募集がなされたことをご記憶の方も多いと思います(当時の知財高裁所長、同事件の裁判長であった飯村敏明先生は「裁判所が法的判断をするための知見の収集について」とのご論稿を公表されています(NBL No.1038)。)。

 

特許権侵害訴訟では、その判断が当事者を拘束することはもちろんですが、当事者が属する業界のみならず、他の業界の企業、関係者にも大きく影響を及ぼす可能性があります。Apple Japan vs. 三星電子事件では、いわゆる標準必須特許(SEP)についてFRAND宣言がされた場合の効力が問題となりましたが、同事件は社会に広く意見を聴くに値する事件の典型といっていいでしょう。

 

ここで民事訴訟の原則を確認しておくと、審判の基礎となる事実及び証拠の収集は、当事者の権能又は責任とされています(弁論主義)。したがって、原則として、裁判所が事実を認定し判断するためには、当事者が証拠を提出する必要があるところ、旧特許法にはアミカス・ブリーフのような制度に関する規定がなかったため、両当事者が合意しない場合にはアミカス・ブリーフを実施することができませんでした。

 

本改正は、特許権等侵害訴訟に日本版アミカス・ブリーフ(厳密には英米のアミカス・ブリーフと同一ではありませんが、本記事では分かりやすさの観点から「アミカス・ブリーフ」といいます。)を導入するとともに、その手続について具体的に規定するものです。

 

本改正では、①特許権等侵害訴訟において、②「当該事件に関するこの法律(注・特許法)の適用その他の必要な事項」について、広く一般に意見を募集することができる制度が導入されました。

 

①についていえば、まずは特許権(及び実用新案権)に関して導入され、これ以外の知的財産権については今後の検討に委ねられています。また、特許権に関する訴訟の中でも、審決取消訴訟や職務発明関係訴訟は対象外です。

 

②についていえば、意見募集の対象として典型的に想定されているのは、(証拠の評価や証拠からいかなる事実を認定すべきかではなく)どのように法律を適用すべきかという問題ですが、必要があれば経験則や業界慣行等についても意見募集がなされる可能性があります。また、本改正前との相違点としては、アミカス・ブリーフの実施につき申し立てていない当事者の意見を聴くことは必要であるものの、両当事者の合意は必要ではないという点が挙げられます。

 

アミカス・ブリーフの実施に関し、実務上は、上記の弁論主義との関係から、アミカス・ブリーフによって得られた意見書は、当事者が裁判所で閲覧・謄写し、(必要に応じてこれを選別して)証拠として提出することになります。

 

特許権等侵害訴訟の当事者になり得る企業の立場からすれば、アミカス・キュリエ候補者に対する働きかけを行うことが可能かどうかが気になるところですが、この点に関し特段特許法上の規定はありません。特許庁立案担当者による本改正法の解説においても「意見書提出の働きかけを行うことは、意見書作成費等の対価の供与も含め、正当な訴訟活動の一環として認められる」とされています(松本健男「令和3年『特許法等の一部を改正する法律』の概要(上)」NBL No.1204 46頁)。

 

 

参考文献

経済産業省ウェブサイト「『特許法等の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」

 

経済産業省「特許法等の一部を改正する法律案 概要」

 

特許庁「特許法等の一部を改正する法律案の概要」

 

「特許法等の一部を改正する法律案新旧対照条文」

 

産業構造審議会・知的財産分科会・特許制度小委員会「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方」

 

小野昌延・三山峻司編『新・注解 商標法(上巻)』青林書院、2016年

 

第5章 2|海外からの模倣品流入への規制強化

現行商標法によれば、商標権侵害品の個人輸入は、輸入する個人については「業として」(商標法2条1項各号)なされるものではないため、商標権侵害を構成しないと解されています(小野昌延・三山峻司編『新・注解 商標法(上巻)』青林書院、2016年、98頁)。

 

また、商標の「使用」の一類型である「輸入」とは、「外国から本邦に到着した貨物…又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に…引き取ること」(関税法2条1項1号)をいうと解されているところ、海外事業者が、国内の個人に対して模倣品を直接販売・送付する行為が商標権侵害を構成するかどうかは現行法上明らかでないといわれています(産業構造審議会・知的財産分科会・特許制度小委員会「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方」49頁以下)。

 

そうすると、現行法上、個人輸入目的で模倣品を輸入する行為は商標権侵害を問えないのではないかという疑問がありました。また、意匠法についても同様の問題がありました。電子商取引による個人宛輸入の増加(≒侵害貨物の小口化)という近年の傾向を踏まえると、現行法の規定では権利者の保護が不十分だったといわざるを得ないでしょう。

 

そこで、本改正では、海外事業者による模倣品(商標権/意匠権侵害品)輸入行為が商標権/意匠権侵害となることが明確化されました。今後は、模倣品が個人輸入される場合については税関での水際差止めを中心として対応することが予想されます。

 

改正点

【改正商標法2条7項】※黄色マーカーは改正箇所

この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。

 

【改正意匠法2条2項1号】※※黄色マーカーは改正箇所

意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為

 

模倣品流入については、以下の関連記事でも詳しく解説しています。

 

『アメリカ契約法入門』 2018/3/12

髙田 寛 (著)

 

アメリカ契約法に関する基本的なルール・考え方を解説した初学者のための入門書。読者対象は大学の学部生・大学院生のみならず海外取引に携わることの多い企業法務、これからアメリカの弁護士資格を取得する人などを想定。そのため多くの簡単な事例と代表的な判例を取り上げ、アメリカ契約法の基本的な法理をわかりやすく解説します。

 

 

出版社 ‏ : ‎ 文眞堂 (2018/3/12)

発売日 ‏ : ‎ 2018/3/12

言語 ‏ : ‎ 日本語

単行本 ‏ : ‎ 193ページ

 

コメント

分かりやすい。

 

第4章 1|訂正審判等における通常実施権者の承諾要件見直し

旧特許法においては、特許権につき通常実施権が許諾(いわゆるライセンス)されている場合、特許権者が訂正審判請求、特許無効審判における訂正の請求又は特許異議の申立てにおける訂正の請求(以下訂正審判請求と合わせて「訂正審判請求等」といいます。)をするためには、通常実施権者(いわゆるライセンシー)の承諾を得る必要がありました(特許法120条の5第9項及び134条の2第9項がそれぞれ127条を準用。)。

 

また、実用新案法14条の2第13項においても準用されています。これらの規定の趣旨は、特許権者が誤解に基づいて不必要な訂正審判を請求したり、必要な範囲を超えた請求をすることによる通常実施権者の不測の損害を防止したりする点にあると解されています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕』469頁)。

 

このように、訂正審判請求等に通常実施権者の承諾を要するとの規定には一定の合理性はあると考えられる一方で、特許権者(ライセンサー)としては、訂正審判請求等という特許無効の主張に対する有力な対抗策の一つについて制約を課されることは避けたいところです。また、訂正審判請求等を行うという、ある種の緊急事態においてわざわざライセンシーの承諾を取得するという手間を回避したいという実務の要請も無視できません。

 

そこで、特許権者(ライセンサー)は、特許ライセンス契約において訂正審判請求等にあらかじめライセンシーは承諾するとの条項を規定するよう努めてきました。もっとも、特許法127条のような規定は欧米等には見られませんので、知財部や法務部の方は、海外の企業とライセンス交渉を行う際に、日本特許法の制度を説明し、理解を得るよう努めてこられたことと思います。

 

ライセンス契約締結に向けて多くの論点が存在するところに加えて、上記のような説明や説得にコストを要していた点で、特許権者(ライセンサー)側からは特許法127条等の規定を疑問視する声がありました。

 

ここで、訂正の有無とライセンシーの利益についてみてみると、訂正により特許権の権利範囲が減縮されたとしても、減縮後の権利範囲はライセンス契約により適法に実施できることに加え、減縮された部分は自由技術になるため、結局のところ、ライセンシーが実施できる範囲に影響はありません。したがって、特許発明の実施という観点からは、通常はライセンシーの利益を害することはないと考えられます。

 

 

以上の状況を踏まえ、本改正では、訂正審判請求等について通常実施権者の承諾を要しないものとされました。したがって、本改正法施行後は、ライセンサーとしては、通常実施権を許諾するライセンス契約において、従前のような承諾条項を規定する必要がなくなり、上記のようなライセンス交渉時におけるconsent条項に関する応酬は生じないことになります。

 

ただし、海外諸国の中には、少数ながら訂正審判請求等においてライセンシーの承諾を要する国も存在するため、ライセンス対象に他国特許権を含む場合には注意が必要です。

 

なお、特許権の放棄についても訂正等と同様の改正がなされたこと、実用新案権についても同様の改正がなされていること及び本改正の前後を通じて、専用実施権者又は質権者の承諾は必要であることにご留意ください。

 

さて、非独占的な通常実施権者にとっては、ライセンス対象特許に係る技術について自社が実施できれば構わないため、一般的には、特に不利益はないといっていいでしょう。

 

もっとも、独占的通常実施権者は差止請求権を有しないものの、侵害者に対する固有の損害賠償請求が可能と解されていますので、特許権の権利範囲が減縮されると侵害者に対する損害賠償請求の可否又はその範囲・額に影響する可能性があります。そうすると、独占的通常実施権者としては、自己の権利を確保しておくためには、訂正審判請求等をすること又はその内容につきコントロールを及ぼしたいところです。

 

そこで、ライセンス契約において、以下の2つを規定することが考えられます。

 

①ライセンサーは訂正審判請求等に先立ってライセンシーの承諾を得ることを義務付けること

②ライセンサーはライセンシーに対して、訂正審判請求等及びこれに対応する審決等の内容を通知すること

もっとも、①の効果については、ライセンサーがライセンシーの承諾を得ることなく訂正審判請求等をしたとしてもこれが却下されることはなく、あくまで契約当事者間における債務不履行の問題が生じるにすぎないものと考えます(私見)。

 

第3章 改正の概要

本改正は、「新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、デジタル化、リモート・非接触など経済活動のあり方が大きく変化」したこと(経済産業省ウェブサイト「『特許法等の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」)を背景としています。

 

そして、このような変化に対応するために、

(1)新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続の整備

(2)デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し

(3)訴訟手続や料金体系の見直し等の知的財産制度の基盤の強化

を趣旨として、以下の各項目の改正がなされました。

 

改正項目

(1)新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続の整備

① 審判口頭審理のオンライン化

② 印紙予納の廃止・料金支払方法の拡充

③ 意匠・商標国際出願手続のデジタル化

④ 災害等の理由による手続期間徒過後の割増料金免除

 

(2)デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し

① 海外からの模倣品流入への規制強化

② 訂正審判等における通常実施権者の承諾要件見直し

③ 特許権等の権利回復要件の緩和

 

(3)訴訟手続や料金体系の見直し等の知的財産制度の基盤の強化

① 特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入

② 特許料等の料金体系見直し

③ 弁理士制度の見直し

 

本改正法の施行日は2022年4月1日とされましたが、(1)①審判口頭審理のオンライン化等の一部の改正項目については既に2021年10月1日に施行されています(経済産業省ウェブサイト「『特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令』が閣議決定されました」)。

 

本記事では、本改正のうち、企業の知財実務担当者の皆様において関心が高いと思われる以下の改正項目

1|訂正審判等における通常実施権者の承諾要件見直し

2|海外からの模倣品流入への規制強化

3|特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入

を中心に解説します。

 

第1章 閣議決定

「特許法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」及び「特許法等関係手数料令の一部を改正する政令」が閣議決定されました

2022年7月15日

経済産業省

2022年7月15日、「特許法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」及び「特許法等関係手数料令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。これらの政令は、第204回通常国会において成立した「特許法等の一部を改正する法律」の一部の施行期日を定めるとともに、所要の規定を整備するものです。

1.背景

令和3年の第204回通常国会において、「特許法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」といいます。)が成立しました。

改正法においては、外国にある者が、郵送等により、商品等を国内に持ち込む行為を商標法及び意匠法における「輸入」行為に含むものと規定することにより、当該行為が事業者により権原なく行われた場合に規制対象となることを明確化しました(改正法附則第1条第4号)。

また、手続期間の徒過により消滅した特許権等についての回復要件を「正当な理由があること」から「故意によるものではないこと」に緩和するとともに、権利の回復規定の適用を受けようとする者から回復手数料を徴収することとするほか、マドリッド議定書に基づく国際商標登録出願の個別手数料について、二段階納付を廃止し一括納付を可能としました(改正法附則第1条第5号)。

 

 

第2章 2022年に施行された改正特許法とは?

令和3年(2021年)5月14日、改正特許法(正式名称「特許法等の一部を改正する法律」)が国会で可決・成立し、同月21日に公布されました。改正前に発生していた課題を解決するため、現代社会の動向を盛り込んだ内容になっています。まずは、改正の背景と施行日についてお伝えします。

 

特許法の改正については定期的に経産省の情報を確認しよう

令和3年(2021年)の改正によって、特許法は新型コロナウイルスの感染拡大や特許権訂正手続きの簡素化など、社会や企業活動の変化に対応する形でアップデートされました。意匠法・商標法などの改正によって、海外からの模倣品被害の解決も期待されます。

 

 

改正の背景

改正の目的・背景として、経済産業省は以下の3点を挙げています。

 

1. 新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続きの整備

2. デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し

3. 訴訟手続きや料金体系の見直し等の知的財産制度の基盤の強化

 

引用:特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令 | 経済産業省

 

詳細は次の「改正の重要ポイント」で説明しますが、特に新型コロナウイルスの感染拡大への対応と権利保護の見直しについては、現代社会の変化に合わせた改正内容といえます。

 

特許法は2年前の令和元年(2019年)にも改正されており、1990年代に入ってからは1~3年ほどのスパンで改正が行われています。社会や企業活動の変化に対応する必要のある特許法・意匠法・商標法などの法律は、短いスパンで改正されることがあります。

 

今後も、その時々の社会・経済・企業活動の変化や大きなイベントに合わせて、特許法は改正されていくでしょう。

 

施行日

今回の改正特許法の多くの項目についての施行日は、令和4年(2022年)4月1日です。

「審判の口頭審理をオンラインで実施する」「特許料等の支払い方法として、銀行振込等による予納を可能とする」など、一部の新型コロナウイルス対応項目については、令和3年(2021年)10月1日に前倒しで施行されました。

第7章 「電話勧誘販売」に関する各規定の改正

特定商取引法上、「通信販売」に該当する契約はクーリングオフの対象外とされています。通信販売とは、商品の販売・サービスの提供を行う事業者が消費者に電話をかけさせる等の方法で申込みを受け、契約を締結する取引形態のことをいいます。

 

クーリングオフとは、あくまでも「不意打ち」的に勧誘を受けることによって熟慮する時間を与えられずに契約してしまった消費者を保護するための制度です。このため、消費者が自発的に電話を掛けることによって契約が締結された場合には、クーリングオフの対象外となるのが原則です。

 

しかし今回の改正では、これまで「通信販売」に該当するとされていた一部の取引に関して、これを「電話勧誘販売」とみなすことでクーリングオフできるようになりました。

 

電話勧誘販売とされることになった取引形態【改正点2】

これまでは「通信販売」に該当するとされていたためクーリングオフできなかった契約であっても、契約の締結に至るパターンが主として以下のような場合には特定商取引法上「電話勧誘販売」とみなされることになりました(施行令2条)。

 

①TV・ラジオコマーシャル、新聞・雑誌などの刊行物、ウェブページなどを利用して商品やサービスを宣伝し、消費者から事業者に対して電話をかけさせること

 

②広告されていなかった商品・サービスの販売などを消費者に対して勧誘すること

 

特に①に関しては、「今すぐお電話を!」「このCM放送から30分以内のご注文はさらに割引!」といったCMを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。これからは、たとえ消費者が自ら事業者に対して電話をしてきたとしても、その電話において事業者が広告に無い商品・サービスの勧誘を行った場合には「不意打ち」に該当するため、クーリングオフの対象とすることになったのです。

 

この改正によって、消費者の保護がより充実したことは間違いありません。しかし、上記改正によってクーリングオフの対象となるのは、テレビやラジオコマーシャル、新聞・雑誌などの刊行物、インターネットを利用した広告など法律が限定的に列挙しているものにとどまるため、抜け道が存在する可能性が否定できません。消費者保護のさらなる拡充が期待されるところだといえるでしょう。

 

 

第8章 まとめ

特定商取引法に関する施行規則などが改正・整備されることにより、2023年6月1日からこれまで紙の書面の交付が義務付けられていた一定の書面が電子ファイルなどで提供できるようになります。

 

また、これまで「通信販売」に該当するためクーリングオフの対象外だった一定の取引形態が「電話勧誘販売」とされることになり、同制度の対象となることが決まっています。近年は法律の改正が相次いでいます。気づかないうちに法律違反を犯し罰則を受けるようなことが無いようにするためにも、法律の改正には常に気を付けておくことが大切です。消費者庁が作成している特定商取引法に関する情報サイトもおすすめです。

 

 

この改正により契約書面等の電子交付が可能になり、事業者、消費者双方にとって利便性が向上することが期待されます。他方で、承諾の控え書面については書面による交付を避けられないなど、完全な電子化が図られたものではありません。また、承諾を得る手続きが手間となり得ること、手続き違反がある場合のリスクが小さくないこと等、事業者にとって負担となり得る事情もあります。

 

そのため、各事業者におかれては、安易に電子交付を導入するのではなく、メリット、デメリットの比較検討を行い、取引類型や取引の実情などを踏まえ、それぞれに適した手続きを選択することが望まれます。

 

契約書面等の電子交付は本改正により初めて可能になるものであり、実際にどのように運用されるのかは不透明なところもあります。今後、消費者庁からガイドライン等が発出されることが期待されるところであり、また実際の運用の経過を注意してみる必要があります。

 

なお、施行から2年後には電子交付等に関する規定の見直しも実施されることとなっております(特商法附則6条1項)。事業者・消費者による実際の取り組みの中で課題等が見つかることもあろうかと思われますが、それらについては見直しによりさらに改善されていくことが期待されます。

 

 

第6章 電子ファイルなどで契約書等を提供するためのプロセス

紙の書面に代わって電磁的方法(電子ファイルなど)で契約書等を消費者に提供する場合には、主として以下のプロセスを経ることになると想定されています。

 

手順

消費者側

電磁的記録による提供の希望表明

 

紙の書面に代わって電子ファイルなどで契約書等を提供する場合には、前提として消費者がそれを希望・承諾していることが必要です(施行令4条)。

 

手順

事業者側

電磁的方法の種類・内容の提示および説明

 

事業者は消費者に対して、書面に代わって提供することになる電磁的方法の種類や内容を示した上で、紙の書面に代わって電磁的方法による提供を行うことの承諾を得る必要があります(施行規則9条)。

 

また、消費者の真意に基づく承諾の確保を目的として、事業者は消費者に対して電磁的方法を希望しない場合には原則通り紙の書面が交付される旨など一定の事項を説明する必要があります(施行規則10条1項等)

 

手順

事業者側

承諾の取得にあたっての適合性等の確認

 

電磁的方法によって提供されることになる情報を、消費者が実際に閲覧・確認できるかどうかなどを事業者は確認する必要があります(施行規則10条3項・4項)。

 

手順

事業者側

第三者への提供の確認

 

消費者が第三者に対して契約内容等に関する情報の提供を求めた場合には、事業者はその第三者に対しても情報提供する必要があります(施行規則10条3項)。

 

手順

消費者側

承諾の手続き

 

電磁的方法による提供を承諾した場合には、消費者は書面または電子メールなど一定の方法によって承諾の意思表示を行う必要があります(施行規則11条)。なお、承諾手続きに不備がある場合には、書面交付義務違反として処罰の対象となる可能性があるので注意が必要です。

 

手順

事業者側

承諾を得たことを証する書面の交付

 

上記の承諾を得た場合、事業者は消費者に対して承諾があったことを証する書面(「控え書面」とも呼ばれます)を交付する必要があります(施行規則10条7項)。この「控え書面」は原則として紙媒体によるものとされており、訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入といった勧誘の際のやりとりが残らないものについては紙媒体であることが必須ですが、連鎖販売取引、取引全体がオンラインで完結する特定継続的役務提供(特定権利販売契約を含む)、業務提供誘引販売取引は、一定の条件はあるものの電磁的方法によることも可能です。

 

手順

事業者側

電磁的方法による提供

 

契約書面等に記載すべき事項を電子メールなど一定の方法によって消費者に提供します(施行規則8条)。

 

手順

事業者側

契約書面等に記載すべき事項の第三者への送信

 

消費者が希望した場合には、契約書面等に記載すべき事項を第三者に対しても電子メールで送信する必要があります(施行規則10条6項)。

 

手順

事業者側

到達の確認

 

送信した電磁的記録が無事に消費者側に到達し、正常に閲覧できる状態であるかどうか等を事業者は確認する必要があります(施行令4条3項、施行規則12条)。

 

事業者が注意すべきポイント

紙媒体の書面に代えて電子ファイルなどを消費者に提供することが認められるためには、上記のようなプロセスが必要となります。

 

なお、その一部でも不備がある場合には、書面交付義務違反などとして処罰の対象となる可能性があるので、くれぐれもご注意ください。また、今回の改正に際しては、消費者が希望していないにもかかわらず電磁的方法(電子ファイルなどを使用した方法)による提供に関する手続きを進めた場合など、一定の禁止行為をした事業者に対しては各種の罰則も盛り込まれています。

 

『弁護士の経験学 事件処理・事務所運営・人生設計の実践知 (東弁協叢書)』 2016/12/3

高中 正彦 (著), 山下 善久 (著), 太田 秀哉 (著), 山中 尚邦 (著), 山田 正記 (著), 市川 充 (著)

 

3300円

 

出版社 ‏ : ‎ ぎょうせい (2016/12/3)

発売日 ‏ : ‎ 2016/12/3

言語 ‏ : ‎ 日本語

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 226ページ

 

 

コメント

濃い内容ではありません。