特定商取引法の令和3年改正その5 第6章 電子ファイルなどで契約書等を提供するためのプロセス | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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第6章 電子ファイルなどで契約書等を提供するためのプロセス

紙の書面に代わって電磁的方法(電子ファイルなど)で契約書等を消費者に提供する場合には、主として以下のプロセスを経ることになると想定されています。

 

手順

消費者側

電磁的記録による提供の希望表明

 

紙の書面に代わって電子ファイルなどで契約書等を提供する場合には、前提として消費者がそれを希望・承諾していることが必要です(施行令4条)。

 

手順

事業者側

電磁的方法の種類・内容の提示および説明

 

事業者は消費者に対して、書面に代わって提供することになる電磁的方法の種類や内容を示した上で、紙の書面に代わって電磁的方法による提供を行うことの承諾を得る必要があります(施行規則9条)。

 

また、消費者の真意に基づく承諾の確保を目的として、事業者は消費者に対して電磁的方法を希望しない場合には原則通り紙の書面が交付される旨など一定の事項を説明する必要があります(施行規則10条1項等)

 

手順

事業者側

承諾の取得にあたっての適合性等の確認

 

電磁的方法によって提供されることになる情報を、消費者が実際に閲覧・確認できるかどうかなどを事業者は確認する必要があります(施行規則10条3項・4項)。

 

手順

事業者側

第三者への提供の確認

 

消費者が第三者に対して契約内容等に関する情報の提供を求めた場合には、事業者はその第三者に対しても情報提供する必要があります(施行規則10条3項)。

 

手順

消費者側

承諾の手続き

 

電磁的方法による提供を承諾した場合には、消費者は書面または電子メールなど一定の方法によって承諾の意思表示を行う必要があります(施行規則11条)。なお、承諾手続きに不備がある場合には、書面交付義務違反として処罰の対象となる可能性があるので注意が必要です。

 

手順

事業者側

承諾を得たことを証する書面の交付

 

上記の承諾を得た場合、事業者は消費者に対して承諾があったことを証する書面(「控え書面」とも呼ばれます)を交付する必要があります(施行規則10条7項)。この「控え書面」は原則として紙媒体によるものとされており、訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入といった勧誘の際のやりとりが残らないものについては紙媒体であることが必須ですが、連鎖販売取引、取引全体がオンラインで完結する特定継続的役務提供(特定権利販売契約を含む)、業務提供誘引販売取引は、一定の条件はあるものの電磁的方法によることも可能です。

 

手順

事業者側

電磁的方法による提供

 

契約書面等に記載すべき事項を電子メールなど一定の方法によって消費者に提供します(施行規則8条)。

 

手順

事業者側

契約書面等に記載すべき事項の第三者への送信

 

消費者が希望した場合には、契約書面等に記載すべき事項を第三者に対しても電子メールで送信する必要があります(施行規則10条6項)。

 

手順

事業者側

到達の確認

 

送信した電磁的記録が無事に消費者側に到達し、正常に閲覧できる状態であるかどうか等を事業者は確認する必要があります(施行令4条3項、施行規則12条)。

 

事業者が注意すべきポイント

紙媒体の書面に代えて電子ファイルなどを消費者に提供することが認められるためには、上記のようなプロセスが必要となります。

 

なお、その一部でも不備がある場合には、書面交付義務違反などとして処罰の対象となる可能性があるので、くれぐれもご注意ください。また、今回の改正に際しては、消費者が希望していないにもかかわらず電磁的方法(電子ファイルなどを使用した方法)による提供に関する手続きを進めた場合など、一定の禁止行為をした事業者に対しては各種の罰則も盛り込まれています。