法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -178ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

ザ・チェース・マンハッタン銀行事件

 

 

雇用関係存在確認等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成元年(ワ)第10444号

【判決日付】      平成4年3月27日

【判示事項】      雇用契約が別会社に出向してその代表取締役に就任する目的で締結されたものであるとして別会社の事業廃止を理由とした通常解雇が有効とされた事例

【参照条文】      労働基準法2章

【掲載誌】        労働関係民事裁判例集43巻2~3号503頁

             判例タイムズ788号180頁

             判例時報1425号131頁

             労働判例609号63頁

             労働経済判例速報1460号3頁

【評釈論文】      判例評論411号47頁

 

 

労働契約法

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

共同相続人の一人が単独相続による所有権全部取得の登記をなした場合、他の共同相続人は、共有名義に変更を求める登記更正手続の請求はできるが、右登記全部の抹消を求めることはできない。

 

 

相続放棄申述無効確認等請求

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和33年(オ)第1042号

【判決日付】      昭和37年5月24日

【判示事項】      遺産分割により相続人の一人である上告人Aが遺産全部を取得したことに基づいてなされた不動産の所有権移転登記の抹消登記手続を求める被上告人らの請求について,遺産分割が無効であるとして請求を認容した原判決は,被上告人らの請求が実体関係と符合せしめる登記を請求する趣旨ならば,共有名義に変更を求める登記更正手続を求めるよう釈明訂正させるべきであるのに,その措置をとることなく登記の全部抹消を命じたのは失当であって,原判決中その部分は破棄を免れないとした事例

【判決要旨】      共同相続人の一人が単独相続による所有権全部取得の登記をなした場合、他の共同相続人は、共有名義に変更を求める登記更正手続の請求はできるが、右登記全部の抹消を求めることはできない。

【参照条文】      不動産登記法27

             不動産登記法第4章第5節

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事60号767頁

 

 

不動産登記法

(一般承継人による申請)

第三十条 表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。

 

 

 

 

       主   文

 

 原判決中主文第三項に対する本件上告を棄却する。

 原判決中主文第四項ないし第一〇項を破棄し、同抹消登記手続を求める部分を仙台高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人弁護士綱沢利平の上告理由第一点について。

 しかし、控訴人(被上告人、原告)マサエが判示遺産分割の協議に自ら賛成の意思表示をしたことも、控訴人(前同)亀治を介して同意を与えたこともない旨の原判決の事実認定は、挙示の証拠闘係に照し、これを肯認できないことはなく、その間所論の違法を認めることはできない。従つて、原判決が右事実認定の下に、本件遺産分割は、爾余の判断をするまでもなく、当然無効と解すべきである旨の原判決の判断も正当である。所論は、結局原審の裁量に属する証拠の取捨、判断並びにこれに基づき適法になされた事実認定を非難するに帰し、採ることができない。

 同第二点、第三点について。

 しかし、土屋弁護士が相続抛棄申述に関する控訴人らの委任状の送付を求めたところ、控訴人亀治は、相続抛棄の申述というものの意味を解しないまま同弁護士の指示のとおり乙第一号証の委任状を控訴人マサエに無断で作成送付したので、同弁護士においてこれに基づき控訴人らの判示相続抛棄申述受理の手続をとつたことが認められる旨の原判決の事実認定は、挙示の証拠関係に照し肯認できないことはなく、その間所論の経験則違反その他の違法を認めることはできない。従つて、右の認定した事実関係の下に原判決が、控訴人マサエは勿論のこと、同亀治も真実本件遺産につき相続抛棄をする意思がなかつたのに、その申述受理の手続がとられたことを窺うに十分であるから、本件相続抛棄は控訴人らの真意に基かないものとして無効であるといわなければならない旨の原判決の判断は正当であつて、その上更に所論第三点の点まで審判しなくとも違法であるということはできない。

 従つて、控訴人らが本件各不動産につき各三分の一の共有持分を有することを確認した原判決に対する本件上告は採ることができない。

 同第四点について。

 原判決は、本件遺産分割により被控訴人かつよが本件遺産の全部を取得したことに基づいて本件第一目録の一ないし三表示の各不動産につき被控訴人かつよ名義でなされた各所有権移転登記は、これに符合する実体関係を欠くものとして無効のものであるとして、主文第四項において相続による所有権移転登記の抹消登記手続を求める控訴人らの請求全部を認容したことは、所論のとおりである。しかし、遺産分割が無効であるとしても、被上告人らのほか上告人かつよも被相続人忠兵衛の妻たる地位に基づき法定の相続分による三分の一の共有持分を有することが明らかであるから、かつよのなした相続登記は、少くともその共有持分三分の一に関しては、実体関係と符合し決して無効であるということはできない。されば、被上告人らの請求があくまでも相続登記全部の抹消を求める趣旨であるならば、主張自体理由ないことに帰し請求棄却を免れないし、また、実体関係と符合せしめる登記関係を請求する趣旨ならば、共有名義に変更を求める登記更正手続を求めるよう釈明訂正させる措置に出るべきであること所論のとおりである。然るにその措置をとることなく登記の全部抹消を命じたのは失当であつて、原判決の主文第四項は、破棄を免れない。

 同第五点について。

 原判決が、被控訴人かつよが本件各不動産につきその余の被控訴人らとした売買又は売買予約は、他の共有者である控訴人らの同意なしになされたものであり無効というべきであるから、右各売買又は売買予約に基いて各不動産につきそれぞれ被控訴人光雄、忠房、悌三、茂、清作各名義でなされた所有権移転の各登記又は請求権保全の各仮登記も特別の事情の認められない限り全体としてこれに符合する実体関係を欠くものとしていずれも無効であるとして、各登記名義人である右被控訴人らに対して前示共有権に基づいてそれぞれ関係登記全部の抹消を求める控訴人の請求を正当として認容したことは、所論のとおりである。しかし、売買契約においては、売主が目的物件の所有権を有することが成立要件ではないから、被控訴人かつよが目的物件の三分の一の持分権を有するに過ぎず、その余の部分の共有者の同意がなかつたしても、そのことだけで売買又は売買予約が当然無効となるべきものと解することができず、錯誤その他売買契約を構成する意思表示の無効原因に関する判示を必要とするものといわなければならない。されば、原判決の右の判示部分は、理由不備の失当があつて破棄を免れない。従つて、所論は、その理由があつて、原判決の主文第五項ないし第九項、従つて、第一〇項は破棄を免れない。

 よつて、本件上告中原判決が主文第三項において、控訴人らが本件不動産につき各三分の一の共有持分を有することを確認した部分に対する上告は、民訴三九六条、三八四条により棄却し、爾余の各被控訴人の抹消登記手続を認容した点については民訴四〇七条により原裁判所に差し戻すべきものとし、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

市立市民病院の医師Aが、研究責任者として同病院の研究機関としての臨床研究を行うに当たり、臨床研究等の立案などを行う研究所の代表理事から、謝礼として20万円を受け取った事案について、本件金員の交付は、私的労務に対する対価の支払いのほか、医学専門家としてのAの不正とはいえないアドバイス等に関し、その知識・経験等に対する敬意・評価としての社会通念上許容し得る範囲を超えない謝礼という理由のある趣旨・目的に基づいて交付されたものとみる余地があり、いまだ賄賂罪としての処罰を要するほどにAの職務の公正さやそれに対する社会一般の信頼を損なう行為とはいい難いとして、贈収賄罪の成立が否定された事例

 

 

              収賄,有印私文書偽造・同行使,詐欺,詐欺未遂,贈賄被告事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/令和元年(わ)第5248号

【判決日付】      令和4年2月22日

【判示事項】      市立市民病院の医師Aが、研究責任者として同病院の研究機関としての臨床研究を行うに当たり、臨床研究等の立案などを行う研究所の代表理事から、謝礼として20万円を受け取った事案について、本件金員の交付は、私的労務に対する対価の支払いのほか、医学専門家としてのAの不正とはいえないアドバイス等に関し、その知識・経験等に対する敬意・評価としての社会通念上許容し得る範囲を超えない謝礼という理由のある趣旨・目的に基づいて交付されたものとみる余地があり、いまだ賄賂罪としての処罰を要するほどにAの職務の公正さやそれに対する社会一般の信頼を損なう行為とはいい難いとして、贈収賄罪の成立が否定された事例

【参照条文】      刑法197-1

             刑法198

             刑事訴訟法336

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      法学教室504号123頁

 

 

刑法

(収賄、受託収賄及び事前収賄)

第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。

2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

 

(贈賄)

第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。

 

 

刑事訴訟法

第三百三十六条 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

 

 

公共工事の請負者が,地方公共団体から使途を限定して請負者名義の預金口座に振り込まれた前払金につき,上記使途に沿った支払と偽って,払出しに係る金員を領得したことが詐欺罪に当たるとされた事例

 

 

              詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成19年(あ)第156号

【判決日付】      平成19年7月10日

【判示事項】      公共工事の請負者が,地方公共団体から使途を限定して請負者名義の預金口座に振り込まれた前払金につき,上記使途に沿った支払と偽って,払出しに係る金員を領得したことが詐欺罪に当たるとされた事例

【判決要旨】      公共工事の請負者甲が,地方公共団体から使途を限定して甲名義の預金口座に振り込まれた前払金につき,上記使途に沿った下請業者乙に対する支払と偽って預金の払出しを請求し,その旨誤信した銀行係員をして,乙に無断で開設していた乙名義の預金口座に振込入金させた行為は,詐欺罪に当たる。

【参照条文】      刑法246-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集61巻5号405頁

 

 

刑法

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人巽昌章の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するもので本件に適切でないか,引用の判例が所論の主張するような趣旨を示したものではないから,前提を欠き,その余は,事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 所論にかんがみ,第1審判示第2の詐欺罪の成否につき,職権で判断する。

 1 原判決が是認する第1審判決の認定及び記録によれば,以下の事実が認められる。

 (1)被告人は,A建設の屋号で建設業を営むものであるが,平成17年6月6日,羽曳野市から同市内の下水道工事を受注し,同市との間で工事請負契約を締結した。

 (2)羽曳野市工事請負契約約款では,請負業者が前払金の支払を請求するには,保証事業会社との間で前払金保証契約を締結しなければならず,前払金は,その使途が当該工事の材料費,労務費等,必要な経費の支払に限定され,それ以外の支払に充当してはならないとされていた。

 (3)これに従い被告人が保証事業会社との間で締結した前払金保証契約においては,請負業者から保証事業会社に上記前払金の使途に応じた用途が記載された「前払金使途内訳明細書」を提出する一方,前払金は保証事業会社があらかじめ業務委託契約を締結している金融機関の中から請負業者が選定する預託金融機関の請負業者名義の前払金専用普通預金口座に振り込まれることとされていた。また,上記保証契約によれば,請負業者は,前払金を保証事業会社に提出した書面に記載された目的に適正に使用する責任を負い,預託金融機関に適正な使途に関する資料を提出して,その確認を受けなければ,上記口座の預金の払出しを受けることができないとされていた。

 (4)保証事業会社と預託金融機関との間で締結された業務委託契約によれば,保証事業会社は預託金融機関に「前払金使途内訳明細書」の写しを送付し,預託金融機関は,「前払金使途内訳明細書」の使用項目,使用金額,支払先等の内容と,請負業者が払出請求時に提出する「前払金払出依頼書」の内容が符合し,使途が上記保証契約に適合する場合に限って払出しに応じることとされていた。

 (5)被告人は,上記前払金専用口座として,株式会社B銀行藤井寺支店にA建設被告人名義の口座を開設した上で,同年7月28日,羽曳野市に対して前払金480万円(内訳は,下請の株式会社Cへの土工配管工費400万円,直用労務費80万円)を請求し,同市から,同年8月12日,上記前払金専用口座へ480万円が振り込まれた。

 (6)被告人は,同日,上記銀行支店の係員に480万円全額の払出しを求めたが,係員から400万円はCの口座へ振り込むようにしなければ払出しに応じられないと断られた。

 (7)そこで,被告人は,400万円を「前払金使途内訳明細書」に記載されたCへの下請代金支払のように装って前払金専用口座から引き出し,A建設の運転資金に充てようと企て,共犯者と共謀の上,C名義の預金口座を同社に無断でD信用金庫松原支店に開設した上,同月15日,上記B銀行藤井寺支店で真実の意図を秘し,上記のように装い,支払先をCとする「前払金払出依頼書」を提出して,前払金の払出しを請求し,同支店係員をその旨誤信させ,上記前払金専用口座から400万円を払い出した上で上記C名義の口座に振込入金させた。

 2 所論は,本件において,被告人は,自分名義の口座に適正に振り込まれた金員を自己の管理するC名義の口座に移しただけで,実質的には,社会通念上,被告人自身の金とみなされるべきものを動かしたにすぎず,前払金制度の適正という公共的法益が侵害されたにとどまり,銀行にも財産権に関する実害が生じていないから,詐欺罪は成立しないというのである。

 しかし,前記事実関係によれば,被告人は,A建設被告人名義の前払金専用口座に入金された金員について,前払金としての使途に適正に使用し,それ以外の用途に使用しないことを羽曳野市及び保証事業会社との間でそれぞれ約しており,B銀行藤井寺支店との関係においても同口座の預金を自由に払い出すことはできず,あらかじめ提出した「前払金使途内訳明細書」と払出請求時に提出する「前払金払出依頼書」の内容が符合する場合に限り,その限度で払出しを受けられるにすぎないのであるから,同口座に入金された金員は,同口座から被告人に払い出されることによって,初めて被告人の固有財産に帰属することになる関係にある(最高裁平成12年(受)第1671号同14年1月17日第一小法廷判決・民集56巻1号20頁参照)。すなわち,上記前払金専用口座に入金されている金員は,いまだ被告人において自己の財産として自由に処分できるものではない。一方,B銀行藤井寺支店も,保証事業会社との間で,前払金専用口座に入金された金員の支払に当たって,被告人の払出請求の内容を審査し,使途が契約内容に適合する場合に限って払出しに応じることを約しており,同口座の預金が予定された使途に従って使用されるように管理する義務を負っている。そうすると,被告人らにおいて,A建設の運転資金に充てる意図であるのに,その意図を秘して虚偽の払出請求をし,同支店の係員をして,下請業者に対する前払金の支払と誤信させて同口座から前記C名義の口座に400万円を振込入金させたことは,同支店の上記預金に対する管理を侵害して払出しに係る金員を領得したものであり,詐欺罪に該当するものというべきである。

 したがって,これと同旨の原判決の判断は,正当である。

 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当はその全体が法人税法(平成27年改正前)24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当するか

 

 

法人税更正処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/令和元年(行ヒ)第333号

【判決日付】      令和3年3月11日

【判示事項】      1 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当はその全体が法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当するか

             2 法人税法施行令(平成27年政令第142号による改正前のもの)23条1項3号の規定のうち資本の払戻しがされた場合の当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分の法適合性

【判決要旨】      1 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は、その全体が法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当する。

             2 法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)24条1項に規定する株式または出資に対応する部分の金額の計算方法について定める法人税法施行令(平成27年政令第142号による改正前のもの)23条1項3号の規定のうち、資本の払戻しがされた場合の当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は、利益剰余金および資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当につき、当該払戻しにより減少した資本剰余金の額を超える当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。

【参照条文】      法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)23-1

             法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)23の2-1

             法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)24-1

             法人税法(平成30年法律第7号による改正前のもの)24-3

             法人税法施行令(平成27年政令第142号による改正前のもの)23-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集75巻3号418頁

 

 

 1 事案の概要

 内国法人である被上告人(X)は,平成24年4月1日から同25年3月31日までの連結事業年度(以下「本件連結事業年度」という。)において,被上告人が本件連結事業年度を通じてその出資の持分の全部を保有している米国デラウェア州リミテッド・ライアビリティ・カンパニー法に基づき組成された外国子会社であるA社から,資本剰余金を原資とする剰余金の配当(以下「本件資本配当」という。)及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当(以下「本件利益配当」といい,本件資本配当と本件利益配当を併せて「本件配当」という。)を受け,本件資本配当は法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。特に断らない限り,以下同じ。)24条1項3号の「資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち,分割型分割によるもの以外のものをいう。)」(以下,単に「資本の払戻し」という。)に,本件利益配当は同法23条1項1号の「剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし,資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分割型分割によるものを除く。)」にそれぞれ該当するとして,本件連結事業年度の法人税の連結確定申告(以下「本件申告」という。)を行った。

 これに対し,所轄税務署長は,本件配当は効力発生日が同一日であることなどから,利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当(以下「混合配当」ともいう。)であり,その全額が法人税法24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当するとして,更正処分(以下「本件更正処分」という。)をした。

 本件は,被上告人が,本件更正処分のうち連結所得金額が本件申告に係る金額を超え,翌期へ繰り越す連結欠損金額が本件申告に係る金額を下回る部分の取消しを求める事案である。

 

 

法人税法

(受取配当等の益金不算入)

第二十三条1項 内国法人が次に掲げる金額(第一号に掲げる金額にあつては、外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの及び適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等の額」という。)を受けるときは、その配当等の額(関連法人株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額から当該配当等の額に係る利子の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額とし、完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の五十に相当する金額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の二十に相当する金額とする。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

一 剰余金の配当(株式等に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額

二 投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(第二十四条第一項第四号(配当等の額とみなす金額)において「出資等減少分配」という。)を除く。)の額

三 資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配の額

 

(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)

第二十三条の二第1項 内国法人が外国子会社(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の二十五以上に相当する数又は金額となつていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。以下この条において同じ。)から受ける前条第一項第一号に掲げる金額(以下この条において「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

 

(配当等の額とみなす金額)

第二十四条 法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この条において同じ。)の株主等である内国法人が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額は、第二十三条第一項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなす。

一 合併(適格合併を除く。)

二 分割型分割(適格分割型分割を除く。)

三 株式分配(適格株式分配を除く。)

四 資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配

五 自己の株式又は出資の取得(金融商品取引法第二条第十六項(定義)に規定する金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得及び第六十一条の二第十四項第一号から第三号まで(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)に掲げる株式又は出資の同項に規定する場合に該当する場合における取得を除く。)

六 出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資をその発行した法人が取得することなく消滅させること。

七 組織変更(当該組織変更に際して当該組織変更をした法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る。)

2 合併法人が抱合株式(当該合併法人が合併の直前に有していた被合併法人の株式(出資を含む。以下この項及び次項において同じ。)又は被合併法人が当該合併の直前に有していた他の被合併法人の株式をいう。)に対し当該合併による株式その他の資産の交付をしなかつた場合においても、政令で定めるところにより当該合併法人が当該株式その他の資産の交付を受けたものとみなして、前項の規定を適用する。

3 合併法人又は分割法人が被合併法人の株主等又は当該分割法人の株主等に対し合併又は分割型分割により株式その他の資産の交付をしなかつた場合においても、当該合併又は分割型分割が合併法人又は分割承継法人の株式の交付が省略されたと認められる合併又は分割型分割として政令で定めるものに該当するときは、政令で定めるところによりこれらの株主等が当該合併法人又は分割承継法人の株式の交付を受けたものとみなして、第一項の規定を適用する。

4 第一項に規定する株式又は出資に対応する部分の金額の計算の方法その他前三項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

 

法人税法施行令

(所有株式に対応する資本金等の額の計算方法等)

第二十三条1項 法第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)に規定する株式又は出資に対応する部分の金額は、同項に規定する事由の次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 法第二十四条第一項第一号に掲げる合併 当該合併に係る被合併法人の当該合併の日の前日の属する事業年度終了の時の資本金等の額を当該被合併法人のその時の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)の総数(出資にあつては、総額。以下この条において同じ。)で除し、これに同項に規定する内国法人が当該合併の直前に有していた当該被合併法人の株式(出資を含む。以下この条において同じ。)の数(出資にあつては、金額。以下この条において同じ。)を乗じて計算した金額

二 法第二十四条第一項第二号に掲げる分割型分割 当該分割型分割に係る分割法人の当該分割型分割の直前の分割資本金額等(当該分割型分割の直前の資本金等の額に当該分割法人の当該分割型分割に係るイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(当該分割型分割の直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該分割型分割の直前の資本金等の額及びロに掲げる金額が零を超え、かつ、イに掲げる金額が零以下である場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額をいう。)を当該分割法人の当該分割型分割に係る株式の総数(第六項第二号に掲げる分割型分割にあつては、当該分割型分割の直前の発行済株式等の総数)で除し、これに同条第一項に規定する内国法人が当該分割型分割の直前に有していた当該分割法人の当該分割型分割に係る株式の数を乗じて計算した金額

イ 分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度(当該分割型分割の日以前六月以内に法第七十二条第一項(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)に規定する期間(通算子法人にあつては、同条第五項第一号に規定する期間。イにおいて同じ。)について同条第一項各号に掲げる事項を記載した中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該分割型分割の日までの間に確定申告書を提出していなかつた場合には、当該中間申告書に係る同項に規定する期間)終了の時の資産の帳簿価額から負債(新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む。)の帳簿価額を減算した金額(当該終了の時から当該分割型分割の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(第九条第一号及び第六号(利益積立金額)に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額)

ロ 分割型分割の直前の移転資産(当該分割型分割により当該分割法人から分割承継法人に移転した資産をいう。)の帳簿価額から移転負債(当該分割型分割により当該分割法人から当該分割承継法人に移転した負債をいう。)の帳簿価額を控除した金額(当該金額がイに掲げる金額を超える場合(イに掲げる金額が零に満たない場合を除く。)には、イに掲げる金額)

三 法第二十四条第一項第三号に掲げる株式分配 当該株式分配に係る現物分配法人の当該株式分配の直前の分配資本金額等(当該株式分配の直前の資本金等の額にイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(当該株式分配の直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該株式分配の直前の資本金等の額及びロに掲げる金額が零を超え、かつ、イに掲げる金額が零以下である場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額をいう。)を当該現物分配法人の当該株式分配に係る株式の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該株式分配の直前に有していた当該現物分配法人の当該株式分配に係る株式の数を乗じて計算した金額

イ 当該株式分配を前号イの分割型分割とみなした場合における同号イに掲げる金額

ロ 当該現物分配法人の当該株式分配の直前の法第二条第十二号の十五の二(定義)に規定する完全子法人の株式の帳簿価額に相当する金額(当該金額が零以下である場合には零とし、当該金額がイに掲げる金額を超える場合(イに掲げる金額が零に満たない場合を除く。)にはイに掲げる金額とする。)

四 法第二十四条第一項第四号に掲げる資本の払戻し又は解散による残余財産の分配(次号に掲げるものを除く。イにおいて「払戻し等」という。) 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額

イ ロに掲げる場合以外の場合 当該払戻し等を行つた法人(イにおいて「払戻等法人」という。)の当該払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等(当該直前の資本金等の額に(1)に掲げる金額のうちに(2)に掲げる金額の占める割合(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、(1)に掲げる金額が零以下である場合又は当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、残余財産の全部の分配を行う場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額(当該払戻し等が法第二十四条第一項第四号に規定する資本の払戻しである場合において、当該計算した金額が当該払戻し等により減少した資本剰余金の額を超えるときは、その超える部分の金額を控除した金額)をいう。)を当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の数を乗じて計算した金額

(1) 当該払戻し等を第二号イの分割型分割とみなした場合における同号イに掲げる金額

(2) 当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は当該解散による残余財産の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額(当該減少した資本剰余金の額又は当該合計額が(1)に掲げる金額を超える場合には、(1)に掲げる金額)

ロ 当該資本の払戻しを行つた法人(ロにおいて「払戻法人」という。)が二以上の種類の株式を発行していた法人である場合 法第二十四条第一項に規定する内国法人が当該資本の払戻しの直前に有していた当該払戻法人の当該資本の払戻しに係る株式の種類ごとに、当該払戻法人の当該直前のその種類の株式に係る払戻対応種類資本金額(当該直前の当該種類の株式に係る第八条第二項(資本金等の額)に規定する種類資本金額(ロにおいて「直前種類資本金額」という。)に種類払戻割合((1)に掲げる金額のうちに(2)に掲げる金額の占める割合をいい、直前種類資本金額又は当該直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、直前種類資本金額及び当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、(1)に掲げる金額が零以下である場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額(当該金額が(2)(i)又は(ii)に掲げる場合の区分に応じそれぞれ(2)(i)又は(ii)に定める金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)をいう。)を当該払戻法人の当該資本の払戻しに係る当該種類の株式の総数で除し、これに当該内国法人が当該直前に有していた当該払戻法人の当該種類の株式の数を乗じて計算した金額の合計額

(1) イ(1)に掲げる金額に当該資本の払戻しの直前の資本金等の額のうちに直前種類資本金額の占める割合を乗じて計算した金額

(2) 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額(当該金額が(1)に掲げる金額を超える場合には、(1)に掲げる金額)

(i) 当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額のうち当該種類の株式に係る部分の金額が明らかな場合 当該金額

(ii) (i)に掲げる場合以外の場合 当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額に当該資本の払戻しの直前の当該資本の払戻しに係る各種類の株式に係る第八条第二項に規定する種類資本金額(当該種類資本金額が零以下である場合には、零)の合計額のうちに直前種類資本金額の占める割合(当該合計額が零である場合には、一)を乗じて計算した金額

五 法第二十三条第一項第二号(受取配当等の益金不算入)に規定する出資等減少分配(以下この号において「出資等減少分配」という。) 当該出資等減少分配を行つた投資法人の当該出資等減少分配の直前の分配対応資本金額等(当該直前の資本金等の額にイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、イに掲げる金額が零以下である場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額をいい、当該計算した金額が当該出資等減少分配による出資総額等の減少額として財務省令で定める金額(ロにおいて「出資総額等減少額」という。)を超える場合にはその超える部分の金額を控除した金額とする。)を当該投資法人の発行済投資口(その発行済みの投資口(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項(定義)に規定する投資口をいう。以下この号において同じ。)をいい、その有する自己の投資口を除く。)の総数で除し、これに法第二十四条第一項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該投資法人の投資口の数を乗じて計算した金額

イ 当該投資法人の当該出資等減少分配の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の当該投資法人の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額(当該終了の時から当該出資等減少分配の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(第九条第一号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額)

ロ 出資総額等減少額(当該出資総額等減少額がイに掲げる金額を超える場合には、イに掲げる金額)

六 法第二十四条第一項第五号から第七号までに掲げる事由(以下この号において「自己株式の取得等」という。) 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額

イ 当該自己株式の取得等をした法人(以下この号において「取得等法人」という。)が一の種類の株式を発行していた法人(口数の定めがない出資を発行する法人を含む。)である場合 当該取得等法人の当該自己株式の取得等の直前の資本金等の額を当該直前の発行済株式等の総数で除し、これに法第二十四条第一項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該取得等法人の当該自己株式の取得等に係る株式の数を乗じて計算した金額(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には、零)

ロ 取得等法人が二以上の種類の株式を発行していた法人である場合 当該取得等法人の当該自己株式の取得等の直前の当該自己株式の取得等に係る株式と同一の種類の株式に係る第八条第二項に規定する種類資本金額を当該直前の当該種類の株式(当該取得等法人が当該直前に有していた自己の株式を除く。)の総数で除し、これに法第二十四条第一項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該取得等法人の当該自己株式の取得等に係る当該種類の株式の数を乗じて計算した金額(当該直前の当該種類資本金額が零以下である場合には、零)

 

 

インターナショナル・エア・サービス事件

 

 

地位保全仮処分申請事件

【事件番号】      東京地方裁判所決定/昭和39年(ヨ)第2237号

【判決日付】      昭和40年4月26日

【判示事項】      日本国内に事務所を有する外国法人に雇傭されている外国人機長の解雇がわが労組法第7条第1号によつて不当労働行為とされた事例

【参照条文】      民事訴訟法4-3

             法例7

             労働組合法

【掲載誌】        労働関係民事裁判例集16巻2号308頁

             判例タイムズ178号172頁

             判例時報408号14頁

             労働判例37号6頁

 

 

民事訴訟法

(消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権)

第三条の四 消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と事業者(法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。

2 労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関する労働者からの事業主に対する訴えは、個別労働関係民事紛争に係る労働契約における労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。

3 消費者契約に関する事業者からの消費者に対する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する事業主からの労働者に対する訴えについては、前条の規定は、適用しない。

 

 

平成十八年法律第七十八号

法の適用に関する通則法

(労働契約の特例)

第十二条 労働契約の成立及び効力について第七条又は第九条の規定による選択又は変更により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

2 前項の規定の適用に当たっては、当該労働契約において労務を提供すべき地の法(その労務を提供すべき地を特定することができない場合にあっては、当該労働者を雇い入れた事業所の所在地の法。次項において同じ。)を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

3 労働契約の成立及び効力について第七条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立及び効力については、第八条第二項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

 

 

労働組合法

(不当労働行為)

第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

 

 

 

所得税の確定申告・納付の期限の延長につき国税通則法11条にいう「災害その他やむを得ない理由」がないとされた事例

 

 

所得税法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/昭和57年(あ)第1818号

【判決日付】      昭和60年2月27日

【判示事項】      所得税の確定申告・納付の期限の延長につき国税通則法11条にいう「災害その他やむを得ない理由」がないとされた事例

【判決要旨】      所得税の確定申告・納付をすべき者が、その申告・納付の期限当時、刑事事件により身体を拘束され、その経営する事業の帳簿書類等を押収されていたとしても、同人が日々の事業活動を通じて収入・経費を十分に把握し得る立場にあった等の事情(判文参照)があるときは、所得税の確定申告・納付の期限の延長につき、国税通則法11条にいう「災害その他やむを得ない理由」があるとはいえない。

【参照条文】      国税通則法11

             所得税法120-1

             所得税法128

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集39巻1号50頁

 

 

国税通則法

(災害等による期限の延長)

第十一条 国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる。

 

 

所得税法

(確定所得申告)

第百二十条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき(第三号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合、第四号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた同号に規定する源泉徴収税額がある場合又は第五号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合を除く。)は、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。この場合において、その年において支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等で第百九十条(年末調整)の規定の適用を受けたものを有する居住者が、当該申告書を提出するときは、次に掲げる事項のうち財務省令で定めるものについては、財務省令で定める記載によることができる。

一 その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額並びに第二章第四節の規定による雑損控除その他の控除の額並びに課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額又は純損失の金額

二 第九十条第一項(変動所得及び臨時所得の平均課税)の規定の適用を受ける場合には、その年分の変動所得の金額及び臨時所得の金額並びに同条第三項に規定する平均課税対象金額

三 第一号に掲げる課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第三章(税額の計算)の規定を適用して計算した所得税の額

四 第一号に掲げる総所得金額若しくは退職所得金額又は純損失の金額の計算の基礎となつた各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額(当該所得税の額のうちに、第百二十七条第一項から第三項まで(年の中途で出国をする場合の確定申告)の規定による申告書を提出したことにより、又は当該申告書に係る所得税につき更正を受けたことにより還付される金額その他政令で定める金額がある場合には、当該金額を控除した金額。以下この号及び次号において「源泉徴収税額」という。)がある場合には、前号に掲げる所得税の額からその源泉徴収税額を控除した金額

五 その年分の予納税額がある場合には、第三号に掲げる所得税の額(源泉徴収税額がある場合には、前号に掲げる金額)から当該予納税額を控除した金額

六 第一号に掲げる総所得金額の計算の基礎となつた各種所得の金額のうちに譲渡所得の金額、一時所得の金額、雑所得の金額、雑所得に該当しない変動所得の金額又は雑所得に該当しない臨時所得の金額がある場合には、これらの金額及び一時所得、雑所得又は雑所得に該当しない臨時所得について源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額

七 その年において特別農業所得者である場合には、その旨

八 第一号から第六号までに掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項

2 前項に規定する予納税額とは、次に掲げる税額の合計額(当該税額のうちに、第百二十七条第一項から第三項までの規定による申告書を提出したことにより、又は当該申告書に係る所得税につき更正を受けたことにより還付される金額がある場合には、当該金額を控除した金額)をいう。

一 予定納税額

二 その年において第百二十七条第一項の規定に該当して、第百三十条(出国の場合の確定申告による納付)又は国税通則法第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付した又は納付すべき所得税の額

3 次の各号に掲げる居住者が第一項の規定による申告書を提出する場合には、政令で定めるところにより、当該各号に定める書類を当該申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない。

一 第一項の規定による申告書に雑損控除、社会保険料控除(第七十四条第二項第五号(社会保険料控除)に掲げる社会保険料に係るものに限る。)、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除又は寄附金控除に関する事項の記載をする居住者 これらの控除を受ける金額の計算の基礎となる金額その他の事項を証する書類

二 第一項の規定による申告書に、第八十五条第二項又は第三項(扶養親族等の判定の時期等)の規定による判定をする時の現況において非居住者である親族に係る障害者控除、配偶者控除又は配偶者特別控除に関する事項の記載をする居住者 これらの控除に係る非居住者である親族が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類及び当該非居住者である親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類

三 第一項の規定による申告書に、第八十五条第三項の規定による判定をする時の現況において非居住者である親族に係る扶養控除に関する事項の記載をする居住者 扶養控除に係る非居住者である親族が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類及び当該非居住者である親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類並びに当該非居住者である親族が年齢三十歳以上七十歳未満の者である場合(当該非居住者である親族が障害者である場合を除く。)には第二条第一項第三十四号の二ロ(1)(定義)に掲げる者に該当する旨を証する書類又は同号ロ(3)に掲げる者に該当することを明らかにする書類

四 第一項の規定による申告書に、第二条第一項第三十二号ロ又はハに掲げる者に係る勤労学生控除に関する事項の記載をする居住者 これらの者に該当する旨を証する書類

4 第一項の規定による申告書に医療費控除に関する事項の記載をする居住者が当該申告書を提出する場合には、次に掲げる書類を当該申告書に添付しなければならない。

一 当該申告書に記載した医療費控除を受ける金額の計算の基礎となる第七十三条第二項(医療費控除)に規定する医療費(次項において「医療費」という。)の額その他の財務省令で定める事項(以下この項において「控除適用医療費の額等」という。)の記載がある明細書(次号に掲げる書類が当該申告書に添付された場合における当該書類に記載された控除適用医療費の額等に係るものを除く。)

二 高齢者の医療の確保に関する法律第七条第二項(定義)に規定する保険者若しくは同法第四十八条(広域連合の設立)に規定する後期高齢者医療広域連合又は社会保険診療報酬支払基金若しくは国民健康保険法第四十五条第五項(保険医療機関等の診療報酬)に規定する国民健康保険団体連合会の当該居住者が支払つた医療費の額を通知する書類として財務省令で定める書類で、控除適用医療費の額等の記載があるもの

5 税務署長は、前項の申告書の提出があつた場合において、必要があると認めるときは、当該申告書を提出した者(以下この項において「医療費控除適用者」という。)に対し、当該申告書に係る確定申告期限の翌日から起算して五年を経過する日(同日前六月以内に国税通則法第二十三条第一項(更正の請求)の規定による更正の請求があつた場合には、当該更正の請求があつた日から六月を経過する日)までの間、前項第一号に掲げる書類に記載された医療費につきこれを領収した者のその領収を証する書類の提示又は提出を求めることができる。この場合において、この項前段の規定による求めがあつたときは、当該医療費控除適用者は、当該書類を提示し、又は提出しなければならない。

6 その年において不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う居住者が第一項の規定による申告書を提出する場合(当該申告書が青色申告書である場合を除く。)又はその年において雑所得を生ずべき業務を行う居住者でその年の前々年分の当該業務に係る収入金額が千万円を超えるものが同項の規定による申告書を提出する場合には、財務省令で定めるところにより、これらの所得に係るその年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類を当該申告書に添付しなければならない。

7 その年において非永住者であつた期間を有する居住者が第一項の規定による申告書を提出する場合には、その者の国籍、国内に住所又は居所を有していた期間その他の財務省令で定める事項を記載した書類を当該申告書に添付しなければならない。

 

(確定申告による納付)

第百二十八条 第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書(第百二十四条第一項(確定申告書を提出すべき者が死亡した場合の確定申告)又は第百二十六条第一項(確定申告書を提出すべき者が出国をする場合の確定申告)の規定に該当して提出すべきものを除く。)を提出した居住者は、当該申告書に記載した第百二十条第一項第三号に掲げる金額(同項第四号に規定する源泉徴収税額があり、かつ、同項第五号に規定する予納税額がない場合には、同項第四号に掲げる金額とし、同項第五号に規定する予納税額がある場合には、同号に掲げる金額とする。以下この款において同じ。)があるときは、第三期において、当該金額に相当する所得税を国に納付しなければならない。

 

 

 

取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めの効力(有効)

 

 

              職務執行停止,代行者選任仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成28年(許)第24号

【判決日付】      平成29年2月21日

【判示事項】      取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めの効力(有効)

【判決要旨】      取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である。

【参照条文】      会社法295-2

             会社法362-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集71巻2号195頁

 

 

会社法

(株主総会の権限)

第二百九十五条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。

 

(取締役会の権限等)

第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。

2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。

一 取締役会設置会社の業務執行の決定

二 取締役の職務の執行の監督

三 代表取締役の選定及び解職

3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。

一 重要な財産の処分及び譲受け

二 多額の借財

三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項

六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件抗告を棄却する。

 抗告費用は抗告人の負担とする。

 

       理   由

 

 抗告代理人宮家俊治の抗告理由について

 1 本件は,相手方株式会社A(以下「相手方会社」という。)の代表取締役であった抗告人が,平成27年9月30日に開催された相手方会社の株主総会における相手方Bを相手方会社の取締役に選任する旨の決議及び代表取締役に定める旨の決議は無効であるなどと主張して,相手方らに対し,相手方Bの取締役兼代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分命令の申立てをした事案である。相手方会社は,取締役会設置会社で,会社法(以下「法」という。)2条5号所定の公開会社でない株式会社(以下「非公開会社」という。)である。相手方会社の定款には,代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが,必要に応じ株主総会の決議によって定めることができる旨の定め(以下「本件定め」という。)があり,これが有効か否かが争われている。

 2 所論は,取締役会設置会社において,定款で株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができるものとすることは,代表取締役の職務執行に対する取締役会の監督権限を弱めるから,本件定めは無効であるというものである。

 3 取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社(法327条1項1号参照)が,その判断に基づき取締役会を置いた場合,株主総会は,法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(法295条2項),法において,この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない。そして,法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが,取締役会設置会社である非公開会社において,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても,代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(法362条2項3号)が否定されるものではなく,取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえない。

 以上によれば,取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解するのが相当である。

 4 所論の点に関する原審の判断は,以上の趣旨をいうものとして,是認することができる。論旨は採用することができない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

高知放送事件・朝寝ぼうによる遅刻を理由の解雇が解雇権の濫用で無効とされた例

 

 

従業員地位確認等請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和49年(オ)第165号

【判決日付】      昭和52年1月31日

【判示事項】      朝寝ぼうによる遅刻を理由の解雇が解雇権の濫用で無効とされた例

【判決要旨】      就業規則所定の懲戒事由があることを理由に普通解雇をする場合には、普通解雇の要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件をみたすことを要しない。(省略)

【参照条文】      民法627

             労働基準法20

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事120号23頁

             労働判例268号17頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト73号84頁

             別冊ジュリスト101号78頁

             別冊ジュリスト257号146頁

 

 

民法

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

 

 

労働基準法

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

 

労働契約法

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人隅田誠一の上告理由第一及び第二について

 就業規則所定の懲戒事由にあたる事実がある場合において、本人の再就職など将来を考慮して、懲戒解雇に処することなく、普通解雇に処することは、それがたとえ懲戒の目的を有するとしても、必ずしも許されないわけではない。そして、右のような場合に、普通解雇として解雇するには、普通解雇の要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件まで要求されるものではないと解すべきである。

 本件についてみると、原審が確定した事実によれば、被上告人は、上告会社の編成局報道部勤務のアナウンサーであったところ、

 (一)昭和四二年二月二二日午後六時から翌二三日午前一〇時までの間ファックス担当放送記者黒川務と宿直勤務に従事したが、二三日午前六時二〇分頃まで仮眠していたため、同日午前六時から一〇分間放送されるべき定時ラジオニュースを全く放送することができなかった(以下「第一事故」という。)、

 (二)また、同年三月七日から翌八日にかけて、前同様山崎福三と宿直勤務に従事したが、寝過したため、八日午前六時からの定時ラジオニュースを約五分間放送することができなかった(以下「第二事故」という。)、

 (三)右第二事故については、上司に事故報告をせず、同月一四、五日頃これを知った小椋部長から事故報告書の提出を求められ、事実と異なる事故報告書を提出した、

 そこで、上告会社は、被上告人の右行為は就業規則所定の懲戒事由に該当するので懲戒解雇とすべきところ、再就職など将来を考慮して、普通解雇に処した、というのであり、なお、上告会社の就業規則一五条には、普通解雇の定めとして、「従業員が次の各号の一に該当するときは、三〇日前に予告して解雇する。但し会社が必要とするときは平均賃金の三〇日分を支給して即時解雇する。ただし労働基準法の解雇制限該当者はこの限りでない。

 一、精神または身体の障害により業務に耐えられないとき。

 二、天災事変その他已むをえない事由のため事業の継続が不可能となったとき。

 三、その他、前各号に準ずる程度の已むをえない事由があるとき。」

と定められていた、というのである。右事実によれば、被上告人の前記行為は、就業規則一五条三号の普通解雇事由にも該当するものというべきである。

 しかしながら、普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になるものというべきである。本件においては、被上告人の起こした第一、第二事故は、定時放送を使命とする上告会社の対外的信用を著しく失墜するものであり、また、被上告人が寝過しという同一態様に基づき特に二週間内に二度も同様の事故を起こしたことは、アナウンサーとしての責任感に欠け、更に、第二事故直後においては卒直に自己の非を認めなかった等の点を考慮すると、被上告人に非がなしということはできないが、他面、原審が確定した事実によれば、本件事故は、いずれも被上告人の寝過しという過失行為によって発生したものであって、悪意ないし故意によるものではなく、また、通常は、ファックス担当者が先に起きアナウンサーを起こすことになっていたところ、本件第一、第二事故ともファックス担当者においても寝過し、定時に被上告人を起こしてニュース原稿を手交しなかったのであり、事故発生につき被上告人のみを責めるのは酷であること、被上告人は、第一事故については直ちに謝罪し、第二事故については起床後一刻も早くスタジオ入りすべく努力したこと、第一、第二事故とも寝過しによる放送の空白時間はさほど長時間とはいえないこと、上告会社において早朝のニュース放送の万全を期すべき何らの措置も講じていなかったこと、事実と異なる事故報告書を提出した点についても、一階通路ドアの開閉状況に被上告人の誤解があり、また短期間内に二度の放送事故を起こし気後れしていたことを考えると、右の点を強く責めることはできないこと、被上告人はこれまで放送事故歴がなく、平素の勤務成績も別段悪くないこと、第二事故のファックス担当者山崎はけん責処分に処せられたに過ぎないこと、上告会社においては従前放送事故を理由に解雇された事例はなかったこと、第二事故についても結局は自己の非を認めて謝罪の意を表明していること、等の事実があるというのであって、右のような事情のもとにおいて、被上告人に対し解雇をもってのぞむことは、いささか苛酷にすぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。したがって、本件解雇の意思表示を解雇権の濫用として無効とした原審の判断は、結局、正当と認められる。論旨は、ひっきょう、右判示と異なる見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。

 同第三について

 本訴においては、被上告人に対する解雇の効力、すなわち被上告人が上告会社の従業員たる地位を有するかどうかが争われ、被上告人の勤務場所がどこであるか、また被上告人の勤務場所が雇用契約の内容とされていたかどうかについては、当事者間で争われた形跡がなく、その確定がされていないのであり、このような本訴の経過に照らせば、原判決が維持した第一審判決の主文第一項は、被上告人が上告会社の従業員たる地位を有することを確認したにとどまり、所論の部分は、本件においては、単に被上告人の解雇時における所属を便宜的に付記したにすぎず、法律上、特段の意味をもつものではないと解すべきである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷

 

 

家庭用米穀配給通帳記載の世帯主姓名の名のみ改竄と公文書偽造罪の成立

 

 

公文書偽造偽造公文書行使詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和23年(れ)第1752号

【判決日付】      昭和24年4月9日

【判示事項】      家庭用米穀配給通帳記載の世帯主姓名の名のみ改竄と公文書偽造罪の成立

【判決要旨】      村長の記名捺印のある家庭用米穀配給通帳に記載してある世帯主の姓名の名の部分を、行使の目的をもつて擅に他の名に改竄した場合には、公文書変造罪ではなく、同偽造罪が成立する。

【参照条文】      刑法155-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集3巻4号511頁

             最高裁判所裁判集刑事9号185頁

 

 

刑法

(公文書偽造等)

第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。

3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 

 

 

       主   文

 

本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 辯護人小林四郎の上告趣意について。

 原判決の確定したところ(理由第一(三))は、被告人は三澤村々長伊藤秀雄の記名捺印ある世帶主被告人の家庭用米穀配給通帳中に、「世帶主、武藤喜平次」と記載してあつたその「喜平次」の部分を指先ですり消し、其處にインキ等を使つて、亡弟の名「六郎」の字を書き込み、恰も世帯主武藤六郎に交付せられた通帳のように改竄したというのである、およそ、家庭用米穀配給通帳は各世帶毎に交付せられるものであつて、右通帳における世帶主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であつて、世帶主甲名義の通帳と同乙名義の通帳とは、たとえ通帳自體は同一物が利用せられ從つてその通帳の作成名義者は同一であつても、全く別個の通帳と認めざるを得ない、されば原判決が前示被告人の所爲を以て村長伊藤秀雄の作成にかゝる世帶主被告人名義の通帳を利用して世帶主武藤六郎名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書僞造罪に問擬したのは正當であつて、右は公文書變造の罪にあたるものであると主張する論旨はあやまりである、從つて、右文書行使の所爲に關する擬律についても、原判決に所論のような違法のないことは、特に説明するまでもないところである。

 よつて、刑訴施行法第二條、舊刑訴法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

 右は全裁判官一致の意見である。