原告が,処分行政庁がした原告の法人税に係る更正処分のうち,原告主張の所得金額及び納付すべき税額を | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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原告が,処分行政庁がした原告の法人税に係る更正処分のうち,原告主張の所得金額及び納付すべき税額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(国税不服審判所長の裁決により一部取消後のもの)は違法であるとして,その取消を求め,弁護士費用相当額の損害が生じたとして,国家賠償請求をした事案について,原告が,子会社の倒産防止(再建)のために行ったとする金銭債権の放棄は寄付金に該当するとして行った本件各処分はいずれも適法であるとして請求を棄却した事例

 

 

              法人税更正及び加算税賦課決定取消等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成18年(行ウ)第144号

【判決日付】      平成19年6月12日

【判示事項】      原告が,処分行政庁がした原告の法人税に係る更正処分のうち,原告主張の所得金額及び納付すべき税額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(国税不服審判所長の裁決により一部取消後のもの)は違法であるとして,その取消を求め,弁護士費用相当額の損害が生じたとして,国家賠償請求をした事案について,原告が,子会社の倒産防止(再建)のために行ったとする金銭債権の放棄は寄付金に該当するとして行った本件各処分はいずれも適法であるとして請求を棄却した事例

【判決要旨】      (1) 国税通則法102条1項は、原処分が裁決によって取り消されあるいは変更された場合に、原処分行政庁を含む関係行政庁が原処分と同一の事情の下で同一の理由により同一の処分をすることを禁じ、違法ないし不当な原処分を受けた者の権利利益の救済を徹底するためのものである。したがって、ここにいう裁決とは、取消裁決又は変更裁決のことを指し、却下裁決及び棄却裁決にはこの意味の拘束力はない。却下裁決又は棄却裁決があった場合に、なお不服があるとして提起された原処分の取消訴訟において、処分行政庁が裁決の理由と異なった主張をすることが、裁決の上記拘束力によって妨げられることはない。

             (2) 省略

             (3) 法人税法37条の寄附金の支出は様々な目的をもって行われ、法人の事業との関連性も明確ではないから、それが法人の収益を生み出すのに必要な費用といえるかどうかは必ずしも明らかでなく、どれが費用の性質をもち、どれがそれをもたないのかを客観的に判定することは困難であるため、同条は、行政的便宜及び公平の維持の観点から、統一的な損金算入限度額を設け、寄附金のうちその限度額の範囲内の金額は損金算入を認め、それを超える部分の金額は損金に算入しないこととしたのである。

             (4) 法人税法37条7項(寄附金の損金算入)の括弧書が、広告宣伝費等を寄附金からは除くこととしているのは、それらの支出は、その費用としての性格が明白であるため、全額を損金に算入することとして差し支えがないからであることからすると、広告宣伝費等には当たらない支出であっても、その費用性が明白であるものは、その全額を損金に算入することができると解されるところ、法人税法37条が、寄附金について統一的な損金算入限度額の制度を設けていることからすると、これはその例外としての取扱いに当たるから、その範囲をみだりに広げることはできないから、「資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」であって広告宣伝費等に当たらないものは、法文どおり原則としてすべて寄附金に該当すると、事実上推定されるというべきであり、客観的にみて費用性が明白な支出であると認められない限り寄附金該当性は否定されないと解すべきである。

             (5) ある支出の寄附金該当性を否定する場合には、否定する者が、客観的にみて費用性が明白であることを基礎付ける事情が存在することの立証を負担すべきである。

             (6) 金銭債権の放棄が寄附金に該当しない(客観的にみて明白に費用と認められる)例として、子会社など資本関係、取引関係、人的関係、資金関係等において密接なつながりのある会社が業績不振に陥り、その子会社等を整理するに当たり、あるいはその倒産を防止するために(再建のために)、債権を放棄する場合が挙げられる。法人税基本通達9-4-1及び同9-4-2は、このような場合に債権放棄などの支援を行わなければ、かえって支援する側の法人自身が将来的に大きな損失を被ることがあり得るから、一定の要件の下において債権放棄等が寄附金に該当しないことを定めたものであると解され、その趣旨は正当である。

             (7) 省略

             (8) 法人税基本通達9-4-2の「業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもの」の要件は、子会社の倒産防止という観点から債権放棄の費用性を肯定するために充足されなければならない要件であり、その費用性は客観的にみて明白でなければならないから、この要件を満たすには、第一に、子会社が倒産の危機にあったと認められなければならないと解すべきである。

             (9) 省略

             (10) 課税処分が国家賠償法上違法であると評価される場合、その課税処分の取消しを求めるために訴えの提起を余儀なくされ、その訴訟追行を弁護士に委任した者は、その訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用のうち相当と認められる額の範囲内のものにつき、違法な課税処分と相当因果関係のある損害として国家賠償請求をすることが可能である(最高裁昭和44年3月6日判決、同平成16年12月17日判決参照)が、これは、そのような違法な課税処分を受けた者が自己の権利利益を擁護するためには、処分取消し等の訴えを提起する以外に方法はないと認められるところ、「右の訴を提起し追行するには高度に専門化された技術を必要とし、一般人としては弁護士に委任しなければその目的を達成することがほとんど不可能に近い」(前掲最高裁昭和44年3月6日判決参照)からである。

             (11) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料257号順号10725

 

寄付金とは、法人税法37条7項

寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

 

 

 

法人税法

(寄附金の損金不算入)

第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。

一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額

二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額

イ 広く一般に募集されること。

ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。

4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。

5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。

6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。

7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。

9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。

10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。

11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。

12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

国税通則法

(裁決の拘束力)

第百二条 裁決は、関係行政庁を拘束する。

2 申請若しくは請求に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され、又は申請若しくは請求を却下し若しくは棄却した処分が裁決で取り消された場合には、当該処分に係る行政機関の長は、裁決の趣旨に従い、改めて申請又は請求に対する処分をしなければならない。

3 国税に関する法律に基づいて公示された処分が裁決で取り消され、又は変更された場合には、当該処分に係る行政機関の長は、当該処分が取り消され、又は変更された旨を公示しなければならない。

4 国税に関する法律に基づいて処分の相手方以外の第百九条第一項(参加人)に規定する利害関係人に通知された処分が裁決で取り消され、又は変更された場合には、当該処分に係る行政機関の長は、その通知を受けた者(審査請求人及び参加人を除く。)に、当該処分が取り消され、又は変更された旨を通知しなければならない。

 

 

 

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