1、互に航路を横切る両船が海上衝突予防法第19条にいう「衝突の虞」がないものとされる事例 2、互 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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1、互に航路を横切る両船が海上衝突予防法第19条にいう「衝突の虞」がないものとされる事例

2、互に航路を横切る両船が、そのまま進めば無難に替り行くことを相互に看取し得る状況にあったにかかわらず、1船がその後速力を減じたため、新たに衝突の危険を惹起こするに至った場合において、両船のいずれに避譲義務があるか

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和26年(オ)第918号

昭和32年2月21日

裁決取消請求事件

【判示事項】    1、互に航路を横切る両船が海上衝突予防法第19条にいう「衝突の虞」がないものとされる事例

2、互に航路を横切る両船が、そのまま進めば無難に替り行くことを相互に看取し得る状況にあったにかかわらず、1船がその後速力を減じたため、新たに衝突の危険を惹起こするに至った場合において、両船のいずれに避譲義務があるか

【判決要旨】    1、両船が互に航路を横切る場合において、両船の大小、性能、相互の方位の変化の模様その他原判決の認定する諸般の状況にかんがみれば、両船の距離が1海里乃至4分の3海里に接近した時期において、相互の方位の変化の度合いが1分間に0.8度程度であったということだけで、ただちに、両船が海上衝突予防法第19条にいう「衝突の虞」があるものということはできない。

2、互に航路を横切る両船が、そのまま進めば無難に替り行くことを相互に看取し得る状況にあったにかかわらず、1船がその後速力を減じたため、新たに衝突の危険を惹起こするに至った場合には、同船がたとえ他船を左舷に見る関係にあった場合でも、同船において避譲の措置を講ずる義務があるものと解すべきである。

【参照条文】    海上衝突予防法(明治25年法律第5号)航方前文

          海上衝突予防法19

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集11巻2号307頁

 

海上衝突予防法

(狭い水道等)

第九条 狭い水道又は航路筋(以下「狭い水道等」という。)をこれに沿つて航行する船舶は、安全であり、かつ、実行に適する限り、狭い水道等の右側端に寄つて航行しなければならない。ただし、次条第二項の規定の適用がある場合は、この限りでない。

2 航行中の動力船(漁ろうに従事している船舶を除く。次条第六項及び第十八条第一項において同じ。)は、狭い水道等において帆船の進路を避けなければならない。ただし、この規定は、帆船が狭い水道等の内側でなければ安全に航行することができない動力船の通航を妨げることができることとするものではない。

3 航行中の船舶(漁ろうに従事している船舶を除く。次条第七項において同じ。)は、狭い水道等において漁ろうに従事している船舶の進路を避けなければならない。ただし、この規定は、漁ろうに従事している船舶が狭い水道等の内側を航行している他の船舶の通航を妨げることができることとするものではない。

4 第十三条第二項又は第三項の規定による追越し船は、狭い水道等において、追い越される船舶が自船を安全に通過させるための動作をとらなければこれを追い越すことができない場合は、汽笛信号を行うことにより追越しの意図を示さなければならない。この場合において、当該追い越される船舶は、その意図に同意したときは、汽笛信号を行うことによりそれを示し、かつ、当該追越し船を安全に通過させるための動作をとらなければならない。

5 船舶は、狭い水道等の内側でなければ安全に航行することができない他の船舶の通航を妨げることとなる場合は、当該狭い水道等を横切つてはならない。

6 長さ二十メートル未満の動力船は、狭い水道等の内側でなければ安全に航行することができない他の動力船の通航を妨げてはならない。

7 第二項から前項までの規定は、第四条の規定にかかわらず、互いに他の船舶の視野の内にある船舶について適用する。

8 船舶は、障害物があるため他の船舶を見ることができない狭い水道等のわん曲部その他の水域に接近する場合は、十分に注意して航行しなければならない。

9 船舶は、狭い水道においては、やむを得ない場合を除き、びよう泊をしてはならない。