所有者不明土地法12 第12章 土地所有者の探索と土地所有者等情報の提供について | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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第12章 土地所有者の探索と土地所有者等情報の提供について
土地所有者等関連情報の利用及び提供
地域福利増進事業、収用適格事業及び都市計画事業の実施の準備のため、事業を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等(※1)を知る必要があるときは、その探索に必要な限度で、土地所有者等関連情報(※2)の利用・提供が可能に。
(1) 都道府県知事及び市町村長は、その保有する土地所有者等関連情報を、内部で利用することができる。
(2) 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業等を実施しようとする者から提供の求めがあったときは、土地所有者等関連情報を提供するものとする。(請求者が国・地方公共団体以外の場合は、求めを受けた都道府県知事・市
町村長が、土地所有者等本人の同意を得た上で提供。)
(3) 国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、土地に工作物を設置している者等に対し、土地所有者等関連情報の提供を求めることができる。
※1 土地又は土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者
※2 土地所有者等と思料される者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所その他の国土交通省令で定めるもの
・ 省令では、氏名・名称・住所以外の土地所有者等関連情報として、本籍、生年月日、死亡年月日及び連絡先を規定。【省令第53条】
①提供の求め
事業者
(2)行政主体が保有する情報の外部提供
(第39条第2項~第4項)
(1)行政主体が保有する情報の内部利用(第39条第1項)
事業を実施する部局
情報を保有する部局
(例:税部局)
土地所有者等
① 提供の求め
② 同意の求め
③ 同意
④ 情報提供
②情報提供 ① 請求
国の行政機関の長
工作物の設置者等
(インフラ事業者等)
②情報提供
(3)工作物の設置者等が保有する情報の外部提供
(第39条第5項)
① 提供の求め
② 情報提供
※同意を要するのは、請求者が国・
地方公共団体以外の場合のみ
地方公共団体の長
(都道府県知事・市町村長)

探索の対象となる書類
探索の対象となる書類 請求先 請求の根拠規定 得られる可能性がある情報
固定資産課税台帳 土地の所在地を管轄する市町村の長
(特別区の場合は都知事) 法第39条第1項・第2項 固定資産税の納税義務者の氏名・名称、住所
地籍調査票 土地の所在地を管轄する都道府県の知事又は市町村の長 法第39条第1項・第2項 地籍調査時に所有者として立ち会った者の氏名、住所農地台帳
〈農地である場合のみ〉
土地の所在地を管轄する市町村の長 法第39条第2項・第5項 農地所有者の氏名・名称、住所
林地台帳
〈森林の土地である場合のみ〉
土地の所在地を管轄する市町村の長 法第39条第1項・第2項 林地所有者の氏名・名称、住所
閉鎖登記簿
〈変則型登記 の土地である場合のみ〉
土地の所在地を管轄する登記所の登記官
不動産登記法第119条
第1項
記名共有地や字持地となる前の土地の所有者の氏名
土地台帳
〈変則型登記の土地である場合のみ〉
土地の所在地を管轄する登記所の登記官 -
記名共有地や字持地となる前の土地の所有者の氏名

探索の対象となる書類 請求先 請求の根拠規定 得られる可能性がある情報
住民基本台帳 所有者と思料される者の住所地を管轄する市町村の長
住民基本台帳法
第12条の2第1項・第12条の3第1項第3号・第7項
土地の所有者と思料される者の住所、戸籍の表示、出生の年月日、死亡の年月日、転出先の住所
戸籍又は除籍簿 所有者と思料される者の本籍地を管轄する市町村の長
戸籍法第10条の2第1項第3号・第2項
土地の所有者と思料される者の本籍、出生の年月日、死亡の年月日
所有権登記名義人等の法定相続人の氏名、本籍、出生の年月日、死亡の年月日
戸籍の附票 所有者と思料される者の本籍地を管轄する市町村の長
住民基本台帳法第20条第2項・第3項第3号
土地の所有者と思料される者やその法定相続人の現住所、住所の履歴、戸籍の表示
法人の登記簿
〈土地所有者と思料される者が法人である場合のみ〉
最寄りの登記所の登記官 商業登記法第10条第1項等
法人の名称、本店・主たる事務所の所在場所、代表者の氏名・住所、解散の有無、清算人・破産管財人の氏名・名称、住所
認可地縁団体台帳
〈土地所有者と思料される者が法人である場合のみ〉
認可地縁団体の所在地を管轄する市町村の長
地方自治法第260条の2第12項
認可地縁団体の事務所の所在地、代表者の氏名・住所
探索の対象となる書類

土地所有者等関連情報の利用及び提供(手続の流れ)
A.固定資産課税台帳、地籍調査票、林地台帳 B.農地台帳 C.住民基本台帳、戸籍簿・除籍簿、戸籍の附票
請求者が、市町村(※)の情報提供担当部局に対し、土地所有者等関連情報の提供を請求
※ 固定資産課税台帳・地籍調査票に記録されている情報の提供を求める場合は、都道府県となる場合があります。
請求者が、市町村の情報提供担当部局に対し、土地所有者等を知る必要があることの証明書の交付を請求
情報提供担当部局が、都道府県警に対し、請求者が暴力団員等に該当しないかどうかを照会
情報提供担当部局が、事業の実施の準備のため所有者を知る必要性があるかどうかを判断
情報提供担当部局が、情報保有部局(税務部局、地籍調査担当部局、林務担当部局)から土地所有者等関連情報を取得
情報提供担当部局が、農業委員会から土地所有者等関連情報を取得
情報提供担当部局が、本人の同意を取得
情報提供担当部局が、請求者に土地所有者関連情報を提供
情報提供担当部局が、請求者に対し、土地所有者等を知る必要があることの証明書を交付
請求者が、情報保有部局(住民基本台帳担当部局、戸籍担当部局)に対し、土地所有者等関連情報の提供を請求
情報保有部局が、請求者に土地所有者関連情報を提供

情報提供担当部局が、都道府県警に対し、請求者が暴力団員等
に該当しないかどうかを照会

情報提供担当部局が、事業の実施の準備のため所有者を知る
必要性があるかどうかを判断

・ 請求者が国・地方公共団体以外の者である場合の土地所有者等関連情報の提供の手続の流れは、以下のとおりです。

照会の対象となる者 照会の趣旨 照会が必要となる場合
土地を現に占有する者
土地を現に占有する者自身が土地の所有者である可能性がある。
また、土地を現に占有する者は、土地の所有者との間で何らかの関係を有していると考えられ、契約の相手方として所有者に関する情報を保有している可能性がある。
現地を訪問し、土地を占有する者の存在が判明した場合
土地に関し所有権以外の権利を有す者
土地の所有者との間で契約関係を有していると考えられ、契約の相手方として所有者に関する情報を保有している可能性がある。
土地の登記事項証明書の交付の請求の結果、土地に関して所有権以外の権利(抵当権、地上権等)を有する者が判明した場合
土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者
土地の所有者との間で契約関係を有していると考えられ、契約の相手方として所有者に関する情報を保有している可能性がある。
現地を訪問し、土地に建物・立木等の物件が存在し、当該物件の登記事項証明書の交付の請求の結果、当該物件の権利者が判明した場合
政令第1条第5号の措置の対象者
政令第1条第5号の措置の対象者となる者(土地の所有者と思料される者)は、別の所有者に関する情報を保有している可能性がある。
政令第1条第1号~第4号の措置によって判明した土地の所有者と思料される者に対し書面を送付した結果、当該所有者と思料される者が所有者ではない事実又は所有者と思料される者以外の共有者の存在が判明した場合
土地の所在地を管轄する市町村の長
〈字持地・記名共有地・共有惣代地である場合のみ〉
土地の所在地の地域に所有者と思料される自治会や地方自治法第260条の2第7項に規定する認可地縁団体があるかどうか、土地が同法第294条第1項に規定する財産区の所有であるかどうかを確認する必要がある。
土地の登記事項証明書の交付の請求の結果、当該土地が字持地・記名共有地・共有惣代地であることが判明した場合
親族〈土地の所有者と思料される者が個人である場合のみ〉
所有者と思料される者の現住所や死亡の事実等を把握している可能性がある。 戸籍謄本等の交付の請求の結果、土地所有者と思料される者の親族が判明した場合
在外公館の長
〈探索を行う者が国の行政機関の長又は地方公共団体の長である場合のみ〉
海外に在留している日本人については、その住所・連絡先が在外公館の保有する資料に記録されている可能性がある。 住民票の写しの交付の申出の結果、土地所有者と思料される者が海外に転出していることが判明した場合
法人の代表者
〈土地の所有者と思料される者が法人である場合のみ〉
法人の所在地宛てに書面を送付したが、宛先不明として返送された場合は休眠会社となっている可能性が高く、法人の代表者の追跡調査を行う必要がある。
土地所有者と思料される者が法人であり、当該法人の所在地宛てに書面を送付したが、宛先不明として返送された場合
清算人又は破産管財人
〈土地の所有者と思料される者が法人である場合のみ〉
法人が合併以外の事由により解散している場合、清算人又は破産管財人が残余財産の分配等を行うこととされていることから、清算人又は破産管財人は法人が所有していた土地の所有者に関する情報を保有している可能性がある。
土地所有者と思料される者が法人であり、法人の登記事項証明書により当該法人が合併以外の事由で解散していることが判明した場合
照会の対象となる者

情報提供担当部局 地域福利増進事業等を実施しようとする者
(民間事業者)
地域福利増進事業等を実施しようとする者
(国又は都道府県※ )
土地所有者等関連情報の提供スキーム
地籍調査
担当部局
【地籍調査票】
市町村
林務担当部局
【林地台帳】
税務部局
【固定資産課税台帳】
固定資産課税台帳、地籍調査票、林地台帳に記録された情報の提供の場合
都道府県警
本人
事業の実施の準備のため所有者を知る必要性の判断等
情報提供担当部局
地域福利増進事業等を実施しようとする者
(民間事業者)
地域福利増進事業等を実施しようとする者
(国又は都道府県※ )

農業委員会
【農地台帳】
市町村

都道府県警

本人

事業の実施の準備のため所有者を知る必要性の判断等
農地台帳に記録された情報の提供の場合


住民基本台帳
担当部局
【住民基本台帳】
α市町村
地域福利増進事業等を実施しようとする者
(民間事業者)
β市町村
情報提供
担当部局
戸籍担当部局
【戸籍簿・除籍簿、戸籍の附票】
住民基本台帳、戸籍簿・除籍簿、戸籍の附票に記録された情報の提供の場合
土地所有者等関連情報の提供スキーム
都道府県警
事業の実施の準備のため所有者を知る必要性の判断等
α:事業を実施しようとする土地を管轄する市町村
β:情報を有すると思料される市町村
※ 事業を実施しようとする者が国・地方公共団体である場合には、上記のように証明書を取得することなく、これまでの公共事業と同様に、
情報を取得することになります。

土地権利者、物件所有者、物件権利者の探索
「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」【法第2条第1項】
・ 相当な努力が払われたと認められる方法=土地所有者確知必要情報を取得するために①~④の全ての措置をとる方法【政令第1条】
① 土地の登記事項証明書の交付を請求すること。
② 当該土地の占有者その他の土地所有者確知必要情報を保有すると思料される者に対し、当該情報の提供を求めること。
③ 土地の所有者と思料される者が記録されている住民基本台帳その他の書類を備えていると思料される市町村長又は登記所の登記官に対し、当該情報の提供を求めること。
④ 土地の所有者と思料される者に対し、書面の送付その他の土地の所有者を特定するための措置をとること。
所有者不明土地
「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない物件」【法第10条第1項第2号】
・ 相当な努力が払われたと認められる方法=物件所有者確知必要情報を取得するために①~④の全ての措置をとる方法【政令第6条】
① 物件(建物・立木に限る。)の登記事項証明書の交付を請求すること。
② 当該物件の占有者その他の物件所有者確知必要情報を保有すると思料される者に対し、当該情報の提供を求めること。
③ 物件の所有者と思料される者が記録されている住民基本台帳その他の書類を備えていると思料される市町村長又は登記所の登記官に対し、当該情報の提供を求めること。
④ 物件の所有者と思料される者に対し、書面の送付その他の物件の所有者を特定するための措置をとること。
所有者不明物件
「土地又は当該土地にある物件に関し所有権以外の権利を有する者であって、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなお確知することができないもの以外の者」【法第10条第3項第2号ニ】
・ 相当な努力が払われたと認められる方法=土地等権利者確知必要情報を取得するために①~④の全ての措置をとる方法【政令第7条】
① 土地等(物件にあっては、建物・立木に限る。)の登記事項証明書の交付を請求すること。
② 当該土地等の占有者その他の土地等権利者確知必要情報を保有すると思料される者に対し、当該情報の提供を求めること。
③ 土地等の権利者と思料される者が記録されている住民基本台帳その他の書類を備えていると思料される市町村長又は登記所の登記官に対し、当該情報の提供を求めること。
④ 土地等の権利者と思料される者に対し、書面の送付その他の土地等の権利者を特定するための措置をとること。
特定所有者不明土地等の確知権利者

○ 裁定の申請に当たっては、土地の所有者に加え、土地の権利者の探索を行う必要がある。また、土地に物件が存在する場合は、物件の所有者、物件の権利者の探索を行う必要がある。
○ 土地の権利者、物件の所有者、物件の権利者の探索の方法は、基本的には土地の所有者の探索の方法と同様。

・ 土地・物件の占有者・所有者・権利者は、探索の対象者に応じて、対象となるかが下表のとおり異なる。
※ ◆は、思料される者を含む。
・ 上記以外の者(親族、在外公館の長、法人の代表者、清算人又は破産管財人)は、土地の所有者の探索と同様に照会の対象となる。
・ 土地の所有者の探索において探索の対象となっている固定資産課税台帳、農地台帳は、探索の対象者に応じて、対象となるかどうかが下表のとおり異なる。
・ 土地の所有者の探索において探索の対象となっている地籍調査票、林地台帳、閉鎖登記簿、土地台帳は、物件の所有者、土地の権利者、物件の権利者の探索においては探索の対象とはならない。
・ 上記以外の書類(住民基本台帳、戸籍簿又は除籍簿、戸籍の附票、法人の登記簿、認可地縁団体台帳)は、土地の所有者の探索と同様に探索の対象となる。
土地権利者、物件所有者、物件権利者の探索
探索の対象者
探索の対象となる書類 土地の所有者 物件の所有者 土地等の権利者
土地の権利者 物件の権利者
固定資産課税台帳 ○ ○ ○ ×
農地台帳 ○ × ○ ×
探索の対象者
照会の対象となる者 土地の所有者 物件の所有者 土地等の権利者
土地の権利者 物件の権利者
土地の占有者 ○ ○ ○ ○
物件の占有者 ○ ○ ○ ○
土地の所有者 ◆ ○ ○ ○
物件の所有者 ○ ◆ ○ ○
土地の権利者 ○ ○ ◆ ○
物件の権利者 ○ ○ ○ ◆
探索の対象となる書類
照会の対象となる者
○ ただし、探索の対象者に応じて、探索の対象となる書類や照会の対象となる者が一部異なる。