政治資金規正法の適用を受けるべき政治団体 東京高判昭和40年11月26日 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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政治資金規正法の適用を受けるべき政治団体

 

東京高判昭和40年11月26日 刑集22巻13号1590頁 高等裁判所刑事判例集18巻7号786頁 東京高等裁判所判決時報刑事16巻11号297頁

公職選挙法違反被告事件

【判示事項】 1、公職選挙法第201条の13第1項の法意

       2、「選挙に関する報道・評論」と「選挙運動のために使用する文書図画」との関係

       3、公職選挙法第201条の13にいう「政党その他の政治団体」の意義

       4、公職選挙法第201条の13第1項の合憲性

       5、法定外選挙運動文書を配布するだけの目的で各戸を訪問する行為と戸別訪問罪の成否

       6、戸別訪問と訪問先における法定外選挙運動文書の頒布とは1個の行為か

       7、罪数につき検察官と裁判官とが見解を異にする場合の一部無罪言渡の要否

【参照条文】 公職選挙法201の13 、148、142、138-1

       政治資金規正法

       刑法54-1

 

刑法

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

 

政治資金規正法

(定義等)

第三条 この法律において「政治団体」とは、次に掲げる団体をいう。

一 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体

二 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体

三 前二号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体

イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。

ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。

2 この法律において「政党」とは、政治団体のうち次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの

二 直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙若しくは当該参議院議員の通常選挙の直近において行われた参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの

3 前項各号の規定は、他の政党(第六条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定により政党である旨の届出をしたものに限る。)に所属している衆議院議員又は参議院議員が所属している政治団体については、適用しない。

4 この法律において「公職の候補者」とは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第八十六条の規定により候補者として届出があつた者、同法第八十六条の二若しくは第八十六条の三の規定による届出により候補者となつた者又は同法第八十六条の四の規定により候補者として届出があつた者(当該候補者となろうとする者及び同法第三条に規定する公職にある者を含む。)をいう。

5 第二項第一号に規定する衆議院議員又は参議院議員の数の算定、同項第二号に規定する政治団体の得票総数の算定その他同項の規定の適用について必要な事項は、政令で定める。

 

公職選挙法

(連呼行為等の禁止)

第二百一条の十三 政党その他の政治活動を行う団体は、各選挙につき、その選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に限り、政治活動のため、次の各号に掲げる行為をすることができない。ただし、第一号の連呼行為については、この章の規定による政談演説会の会場及び街頭政談演説の場所においてする場合並びに午前八時から午後八時までの間に限り、この章の規定により政策の普及宣伝及び演説の告知のために使用される自動車の上においてする場合並びに第三号の文書図画の頒布については、この章の規定による政談演説会の会場においてする場合は、この限りでない。

一 連呼行為をすること。

二 いかなる名義をもつてするを問わず、掲示し又は頒布する文書図画(新聞紙及び雑誌並びにインターネット等を利用する方法により頒布されるものを除く。)に、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載すること。

三 国又は地方公共団体が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすること。

2 第百四十条の二第二項の規定は、前項ただし書の規定により政治活動のための連呼行為をする政党その他の政治団体について準用する。

 

(戸別訪問)

第百三十八条 何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない。

2 いかなる方法をもつてするを問わず、選挙運動のため、戸別に、演説会の開催若しくは演説を行うことについて告知をする行為又は特定の候補者の氏名若しくは政党その他の政治団体の名称を言いあるく行為は、前項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。

 

(文書図画の頒布)

第百四十二条 衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及びビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。

一 衆議院(小選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 七万枚

一の二 参議院(比例代表選出)議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者(第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されている者を除く。)一人について、通常葉書 十五万枚、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラ 二十五万枚

二 参議院(選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、当該選挙区の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一である場合には、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院合同選挙区選挙については、当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下この号において同じ。)に届け出た二種類以内のビラ 十万枚、当該選挙区の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一を超える場合には、その一を増すごとに、通常葉書 二千五百枚を三万五千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万五千枚を十万枚に加えた数(その数が三十万枚を超える場合には、三十万枚)

三 都道府県知事の選挙にあつては、候補者一人について、当該都道府県の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一である場合には、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 十万枚、当該都道府県の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一を超える場合には、その一を増すごとに、通常葉書 二千五百枚を三万五千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万五千枚を十万枚に加えた数(その数が三十万枚を超える場合には、三十万枚)

四 都道府県の議会の議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 八千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万六千枚

五 指定都市の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 七万枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 四千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 八千枚

六 指定都市以外の市の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 八千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万六千枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 二千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 四千枚

七 町村の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 二千五百枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 五千枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 八百枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 千六百枚

2 前項の規定にかかわらず、衆議院(小選挙区選出)議員の選挙においては、候補者届出政党は、その届け出た候補者に係る選挙区を包括する都道府県ごとに、二万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内の通常葉書及び四万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。ただし、ビラについては、その届け出た候補者に係る選挙区ごとに四万枚以内で頒布するほかは、頒布することができない。

3 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、衆議院名簿届出政党等は、その届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。

4 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、前項の規定により衆議院名簿届出政党等が頒布することができるビラのほかは、頒布することができない。

5 第一項の通常葉書は無料とし、第二項の通常葉書は有料とし、政令で定めるところにより、日本郵便株式会社において選挙用である旨の表示をしたものでなければならない。

6 第一項から第三項までのビラは、新聞折込みその他政令で定める方法によらなければ、頒布することができない。

7 第一項及び第二項のビラは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下この項において同じ。)の定めるところにより、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙を貼らなければ頒布することができない。この場合において、第二項のビラについて当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙は、当該選挙の選挙区ごとに区分しなければならない。

8 第一項のビラは長さ二十九・七センチメートル、幅二十一センチメートルを、第二項のビラは長さ四十二センチメートル、幅二十九・七センチメートルを、超えてはならない。

9 第一項から第三項までのビラには、その表面に頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあつては名称)及び住所を記載しなければならない。この場合において、第一項第一号の二のビラにあつては当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等の名称及び同号のビラである旨を表示する記号を、第二項のビラにあつては当該候補者届出政党の名称を、第三項のビラにあつては当該衆議院名簿届出政党等の名称及び同項のビラである旨を表示する記号を、併せて記載しなければならない。

10 衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院議員の選挙における公職の候補者は、政令で定めるところにより、政令で定める額の範囲内で、第一項第一号から第二号までの通常葉書及びビラを無料で作成することができる。この場合においては、第百四十一条第七項ただし書の規定を準用する。

11 地方公共団体の議会の議員又は長の選挙については、地方公共団体は、前項の規定(参議院比例代表選出議員の選挙に係る部分を除く。)に準じて、条例で定めるところにより、公職の候補者の第一項第三号から第七号までのビラの作成について、無料とすることができる。

12 選挙運動のために使用する回覧板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。以下同じ。)の類を多数の者に回覧させることは、第一項から第四項までの頒布とみなす。ただし、第百四十三条第一項第二号に規定するものを同号に規定する自動車又は船舶に取り付けたままで回覧させること、及び公職の候補者(衆議院比例代表選出議員の選挙における候補者で当該選挙と同時に行われる衆議院小選挙区選出議員の選挙における候補者である者以外のもの並びに参議院比例代表選出議員の選挙における候補者たる参議院名簿登載者で第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されているものを除く。)が第百四十三条第一項第三号に規定するものを着用したままで回覧することは、この限りでない。

13 衆議院議員の総選挙については、衆議院の解散に関し、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の氏名又はこれらの者の氏名が類推されるような事項を表示して、郵便等又は電報により、選挙人にあいさつする行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす。

(パンフレット又は書籍の頒布)

第百四十二条の二 前条第一項及び第四項の規定にかかわらず、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙においては、候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等は、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の本部において直接発行するパンフレット又は書籍で国政に関する重要政策及びこれを実現するための基本的な方策等を記載したもの又はこれらの要旨等を記載したものとして総務大臣に届け出たそれぞれ一種類のパンフレット又は書籍を、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。

2 前項のパンフレット又は書籍は、次に掲げる方法によらなければ、頒布することができない。

一 当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の選挙事務所内、政党演説会若しくは政党等演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布

二 当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者(参議院名簿登載者を含む。次項において同じ。)である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者の選挙事務所内、個人演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布

3 第一項のパンフレット又は書籍には、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者(当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の代表者を除く。)の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載することができない。

4 第一項のパンフレット及び書籍には、その表紙に、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の名称、頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあつては名称)及び住所並びに同項のパンフレット又は書籍である旨を表示する記号を記載しなければならない。

 

(新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)

第百四十八条 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第百三十八条の三の規定を除く。)は、新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。

2 新聞紙又は雑誌の販売を業とする者は、前項に規定する新聞紙又は雑誌を、通常の方法(選挙運動の期間中及び選挙の当日において、定期購読者以外の者に対して頒布する新聞紙又は雑誌については、有償でする場合に限る。)で頒布し又は都道府県の選挙管理委員会の指定する場所に掲示することができる。

3 前二項の規定の適用について新聞紙又は雑誌とは、選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り、次に掲げるものをいう。ただし、点字新聞紙については、第一号ロの規定(同号ハ及び第二号中第一号ロに係る部分を含む。)は、適用しない。

一 次の条件を具備する新聞紙又は雑誌

イ 新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであること。

ロ 第三種郵便物の承認のあるものであること。

ハ 当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にあつては、六月)以来、イ及びロに該当し、引き続き発行するものであること。

二 前号に該当する新聞紙又は雑誌を発行する者が発行する新聞紙又は雑誌で同号イ及びロの条件を具備するもの

 

 

 

最3小判昭和43年12月24日 刑集22巻13号1567頁 判例タイムズ229号123頁

公職選挙法違反被告事件の一部無罪について、原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。

控訴審判決

「弁護人の控訴趣意第5点について。

 論旨は、公職選挙法第14章の3にいう政治団体とは当該選挙において所属候補者を有するものをいうのであるし、また民主青年同盟はその実体からみても政治資金規正法の適用を受けるべき政治団体ではないから、公職選挙法第201条の13の適用はない、というのである。

  しかしながら、公職選挙法第14章の3すなわち第201条の5から第201条の13までの諸規定を通じて、「政党その他の政治団体」という概念にはそれ以上のなんらの限定はないのであるから、所論のようにこれを当該選挙において所属候補者を有するものに限ると解する根拠は見当らない。むしろ、これらの規定の中に「当該選挙において全国を通じて・・・・・・人以上の所属候補者を有する政党その他の政治団体」(第201条の5第1項・第201条の6第1項)という文言があり、ことに「政党その他の政治団体で所属候補者・・・・・・を有するもの」(第201条の8)という文言のあることは、所属候補者を有しないものもまたここにいう「政党その他の政治団体」に該当することを示していることができる。そして、その「政党その他の政治団体」とは、政治資金規正法にいう「政党、協会その他の団体」と同意義のものと解すべきこと原判決のいうとおりであり、日本民主青年同盟がそのうちの政治団体に該当すると解されることも原判決の判示するとおりである。それゆえ、原判決にはこの点に関しなんら事実誤認も法令適用の誤りも存しないから、論旨は採用することができない。」