法人税の確定申告に対して,課税庁が所得金額の加算とともに減算をして行った増額更正処分に対する取消 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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法人税の確定申告に対して,課税庁が所得金額の加算とともに減算をして行った増額更正処分に対する取消訴訟において,確定申告に係る申告所得金額・税額を超える部分の取消しを求めることは不適法か

 

 

法人税更正処分取消請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/平成21年(行コ)第24号

【判決日付】      平成21年10月16日

【判示事項】      1 法人税の確定申告に対して,課税庁が所得金額の加算とともに減算をして行った増額更正処分に対する取消訴訟において,確定申告に係る申告所得金額・税額を超える部分の取消しを求めることは不適法か

             2 法人が支給する使用人賞与の損金算入時期についての平成18年政令第125号による改正前の法人税法施行令134条の2の定めは,租税法律主義又は法人税法の定める損金算入基準に違反するか

【参照条文】      国税通則法16-1

             国税通則法23-1

             国税通則法29-1

             憲法30

             憲法84

             法人税法(平18法10号改正前)22-3

             法人税法(平18法10号改正前)65

             法人税法施行令(平18政令125号改正前)134の2

【掲載誌】        判例タイムズ1319号79頁

             税務訴訟資料259号順号11293

             LLI/DB 判例秘書登載

 

憲法

第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

 

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 

国税通則法

(国税についての納付すべき税額の確定の方式)

第十六条 国税についての納付すべき税額の確定の手続については、次の各号に掲げるいずれかの方式によるものとし、これらの方式の内容は、当該各号に掲げるところによる。

一 申告納税方式 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつた場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。

二 賦課課税方式 納付すべき税額がもつぱら税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。

2 国税(前条第三項各号に掲げるものを除く。)についての納付すべき税額の確定が前項各号に掲げる方式のうちいずれの方式によりされるかは、次に定めるところによる。

一 納税義務が成立する場合において、納税者が、国税に関する法律の規定により、納付すべき税額を申告すべきものとされている国税 申告納税方式

二 前号に掲げる国税以外の国税 賦課課税方式

 

(更正の請求)

第二十三条 納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。

一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。

二 前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に純損失等の金額の記載がなかつたとき。

三 第一号に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかつたとき。

2 納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。

一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内

二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たつてその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があつたとき 当該更正又は決定があつた日の翌日から起算して二月以内

三 その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき 当該理由が生じた日の翌日から起算して二月以内

3 更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細、当該請求に係る更正前の納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。

4 税務署長は、更正の請求があつた場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する。

5 更正の請求があつた場合においても、税務署長は、その請求に係る納付すべき国税(その滞納処分費を含む。以下この項において同じ。)の徴収を猶予しない。ただし、税務署長において相当の理由があると認めるときは、その国税の全部又は一部の徴収を猶予することができる。

6 輸入品に係る申告消費税等についての更正の請求は、第一項の規定にかかわらず、税関長に対し、するものとする。この場合においては、前三項の規定の適用については、これらの規定中「税務署長」とあるのは、「税関長」とする。

7 前二条の規定は、更正の請求について準用する。

 

(更正等の効力)

第二十九条 第二十四条(更正)又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下第七十二条(国税の徴収権の消滅時効)までにおいて「更正」という。)で既に確定した納付すべき税額を増加させるものは、既に確定した納付すべき税額に係る部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。

2 既に確定した納付すべき税額を減少させる更正は、その更正により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。

3 更正又は決定を取り消す処分又は判決は、その処分又は判決により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。

 

法人税法

第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

 

(各事業年度の所得の金額の計算の細目)

第六十五条 第二款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか、各事業年度の所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 生野税務署長が平成17年2月28日付けでした控訴人の平成15年6月1日から平成16年5月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分のうち所得金額1259万2369円,差引所得に対する法人税額303万5100円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要

 1 本件は,控訴人が,平成16年7月16日に控訴人の使用人に対して支払った賞与を平成15年6月1日から平成16年5月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の損金の額に算入して確定申告を行ったところ,生野税務署長が上記賞与の損金算入を否定するなどして控訴人に対して更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため,控訴人が,これらの処分の取消しを求める抗告訴訟を提起したが,原審は,控訴人の訴え中,上記更正処分のうち所得金額1262万9329円,差引所得に対する法人税額304万6200円を超えない部分の取消しを求める部分を却下し,控訴人のその余の請求をいずれも棄却する判決をしたので,控訴人が第1記載の判決を求めて控訴した事案である。

 

 

【判例番号】      L06420865

             法人税更正処分取消請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/平成21年(行コ)第24号

【判決日付】      平成21年10月16日

【出  典】       判例タイムズ1319号79頁

 

 1 本件は,使用人賞与について,各使用人に対する支給金額を決定し,未払金として経理処理したにとどまる法人が上記金額を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ,課税庁が上記金額の損金の額ヘの算入を否認して同額を所得金額に加算するとともに,法人が確定申告において損金の額に算入していなかった金額を所得金額から減算し,差引計算の結果,所得金額・税額を増額する更正処分並びに過少申告加算税賦課処分をしたのに対し,当該法人が,使用人賞与について支給日等の属する事業年度の損金の額に算入すると定める平成18年政令第125号による改正前の法人税法施行令134条の2は租税法律主義に違反するとともに,法人税法22条3項の定める損金算入基準にも違反すると主張するとともに,更正の請求によることなく,確定申告に係る申告所得金額から確定申告において損金の額に算入していなかった上記金額を減算した金額を所得金額とし,これに対応する税額を納付すべき税額として,更正処分のうち同所得金額・同税額を超える部分並びに過少申告加算税賦課処分の取消しを求めたものである。

 2 判決は,更正処分のうち確定申告に係る申告所得金額・申告税額を超えない部分の取消しを求めることは不適法であるとして,訴えのうち同部分の取消しを求める部分を却下するのを相当とし(判示事項1),その余の部分については,使用人賞与の損金算入時期についての法人税法施行令の定めは租税法律主義に違反せず,法人税法22条3項の定める損金算入基準にも違反せず(判示事項2),更正処分は適法であるとして,原判決の結論を維持したものである。