日新火災海上保険事件・中途採用者と使用者との間に、雇用契約上、新卒同年次定期採用者の平均的格付け | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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日新火災海上保険事件・中途採用者と使用者との間に、雇用契約上、新卒同年次定期採用者の平均的格付けによる給与を支給する旨の合意が成立したものと認めることはできないとして、右内容の雇用契約の成立したことを前提とする未払賃金請求が認められなかった例

 

 

賃金等請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成11年(ネ)第1239号

【判決日付】      平成12年4月19日

【判示事項】      一 中途採用者と使用者との間に、雇用契約上、新卒同年次定期採用者の平均的格付けによる給与を支給する旨の合意が成立したものと認めることはできないとして、右内容の雇用契約の成立したことを前提とする未払賃金請求が認められなかった例

             二 求人広告、面接および社内説明会において、新卒同年次定期採用者の平均的給与と同等の待遇を受けることができるものと信じさせかねない説明をし、それを信じて入社した者に精神的衝撃を与えたとして、かかる説明が労基法一五条一項(労働条件の明示)の規定に違反し、信義誠実の原則に反するものであって不法行為を構成するとして、その他の不法行為を総合考慮して慰謝料一〇〇万円の支払いが命じられた例

             三 通常毎年六月と一二月に支給される臨時給与を分割して毎月支給する趣旨で設けられた付加給を時間外手当の算定基礎額から除外するとする取扱いにつき、法定労働時間の範囲内での法内超勤については労基法三七条の適用はないから雇用契約の内容になっている限り違法はないとされた例

             四 法定労働時間を超える労働の場合には、同付加給が臨時給与と同質のものであるとしても、その支給月額が毎年あらかじめ定められ、これにより月ごとに支給されるものである以上、これを労基法施行規則二一条の「一か月を超える期間ごとに支払われる賃金」と同視して、割増賃金の基礎から除外することはできないとされた例

【掲載誌】        労働判例787号35頁

 

労働基準法

(労働条件の明示)

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

 

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。

③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

 

労働基準法施行規則

第二十一条 法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

一 別居手当

二 子女教育手当

三 住宅手当

四 臨時に支払われた賃金

五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金