法人が時価相当額より低廉な対価でその資産を譲渡した場合には、法人税法二二条二項の規定により課税の | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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法人が時価相当額より低廉な対価でその資産を譲渡した場合には、法人税法二二条二項の規定により課税の対象となる収益の額は、右資産の時価相当額をもって算定すべきであるとした事例

 

 

              法人税更正処分取消等請求事件

【事件番号】      名古屋地方裁判所判決/昭和61年(行ウ)第30号

【判決日付】      平成4年4月6日

【判示事項】      一 法人が時価相当額より低廉な対価でその資産を譲渡した場合には、法人税法二二条二項の規定により課税の対象となる収益の額は、右資産の時価相当額をもって算定すべきであるとした事例

             二 法人がその役員に対し時価相当額より低廉な対価で資産を譲渡した場合に、時価相当額と譲渡価額との差額は役員賞与に当たるとして、法人が所得税源泉徴収義務を負うものとした事例

【判決要旨】      (1) 法人税法二二条二項(各事業年度の所得の金額の計算)において、資産の譲渡に係る収益を益金として課税の対象としているのは、法人の資産が売買等によりその支配外に流出したのを契機として、顕在化した資産の値上り益の担税力に着目し、清算課税しようとする趣旨であると解されるところ、法人が資産を時価相当額より低廉な対価により譲渡した場合には、あたかも右資産を時価相当額で譲渡すると同時にその譲渡対価との差額を譲受人に贈与したのと同一の経済的効果を有するのであるから、法人が資産を時価相当額で譲渡した場合との税負担の公平という見地からしても、収益の額は右資産の時価相当額によるのが相当だからである。

             (2)~(9) 省略

             (10) 法人税法上の役員賞与に該当するか否かは、法人の主観的意思によって左右されるものではなく、当該経済的利益の供与が役員の職務執行の対価の性質を有するか否かという客観的な基準によって判断すべきものと解される。そして、一般に、法人の役員に対し当該法人から支給される金銭又は経済的利益は、その支給が右役員の立場と全く無関係に、法人からみて純然たる第三者との間の取引ともいうべき態様によりなされるものでない限り、原則としてその職務執行の対価の性質を有するものとみることができる。本件のように法人が時価相当額による譲渡であると確信して売買した場合には、役員の役務の提供の対価としての性質を持たないから、所得税法上の一時所得である旨の原告会社の主張は、採用できない。

             (11) 省略

【参照条文】      法人税法22-2

             所得税法28-1

             所得税法183-1

【掲載誌】        行政事件裁判例集43巻4号589頁

             判例タイムズ823号168頁

             税務訴訟資料189号24頁

 

法人税法

第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

 

所得税法

(給与所得)

第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。

2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。

3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)

二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 六十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額

三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額

四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合 百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額

五 前項に規定する収入金額が八百五十万円を超える場合 百九十五万円

4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。

 

(源泉徴収義務)

第百八十三条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。