匿名組合契約の営業者であった被控訴人は、アイルランドの法令に基づき設立された法人である匿名組合員 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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匿名組合契約の営業者であった被控訴人は、アイルランドの法令に基づき設立された法人である匿名組合員に対して当該各契約に基づき利益の分配として支払をしたが、その際、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約の規定が適用されて被控訴人らは所得税法212条1項に基づく源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)を徴収して国に納付すべき義務を負わないと判断して、源泉所得税の徴収及び国への納付義務を負わない。

 

東京高等裁判所判決

【判決日付】    平成26年10月29日

          各納税告知処分取消等請求控訴事件

【掲載誌】     税務訴訟資料264号順号12555

 

所得税法

(源泉徴収義務)

第二百十二条 非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得(第百八十条第一項(恒久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例)又は第百八十条の二第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定に該当するもの及び政令で定めるものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

2 前項に規定する国内源泉所得の支払が国外において行われる場合において、その支払をする者が国内に住所若しくは居所を有し、又は国内に事務所、事業所その他これらに準ずるものを有するときは、その者が当該国内源泉所得を国内において支払うものとみなして、同項の規定を適用する。この場合において、同項中「翌月十日まで」とあるのは、「翌月末日まで」とする。

3 内国法人に対し国内において第百七十四条各号(内国法人に係る所得税の課税標準)に掲げる利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金(これらのうち第百七十六条第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)又は第百七十七条(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)の規定に該当するものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、当該利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

4 第百八十一条第二項(源泉徴収義務)の規定は第一項又は前項の規定を適用する場合について、第百八十三条第二項(源泉徴収義務)の規定は第一項の規定を適用する場合についてそれぞれ準用する。

5 第百六十一条第一項第四号に規定する配分を受ける同号に掲げる国内源泉所得については、同号に規定する組合契約を締結している組合員(これに類する者で政令で定めるものを含む。)である非居住者又は外国法人が当該組合契約に定める計算期間その他これに類する期間(これらの期間が一年を超える場合は、これらの期間をその開始の日以後一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、その一年未満の期間)。以下この項において「計算期間」という。)において生じた当該国内源泉所得につき金銭その他の資産(以下この項において「金銭等」という。)の交付を受ける場合には、当該配分をする者を当該国内源泉所得の支払をする者とみなし、当該金銭等の交付をした日(当該計算期間の末日の翌日から二月を経過する日までに当該国内源泉所得に係る金銭等の交付がされない場合には、同日)においてその支払があつたものとみなして、この法律の規定を適用する。

 

       主   文

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

       事実及び理由

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。

第2 事案の概要等

 1 いずれも匿名組合契約の営業者であった被控訴人C(以下「被控訴人C」という。)及び被控訴人D(以下「被控訴人D」といい、被控訴人Cと併せて「被控訴人ら」という。)は、アイルランドの法令に基づき設立された法人である匿名組合員に対して当該各契約に基づき利益の分配として支払をしたが、その際、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約(以下「日愛租税条約」という。)の規定が適用されて被控訴人らは所得税法212条1項に基づく源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)を徴収して国に納付すべき義務を負わないと判断して、源泉所得税の徴収及び国への納付をしなかった。

   本件は、事務の承継前の処分行政庁であった麻布税務署長が、被控訴人らに対し、被控訴人らが上記のように利益の分配として支払をした金額のうち99%に相当する部分については日愛租税条約の規定の適用がなく、所得税法212条1項に基づき源泉所得税を徴収して国に納付すべき義務を負うものであるとして、被控訴人Cに対しては原判決別表1-2に記載のとおりの内容の源泉所得税の各納税の告知の処分(以下「本件各納税告知処分1」という。)及び不納付加算税の各賦課決定(以下「本件各不納付加算税賦課決定処分1」という。)を、被控訴人Dに対しては原判決別表2-2に記載のとおりの内容の源泉所得税の各納税の告知の処分(以下「本件各納税告知処分2」という。)及び不納付加算税の各賦課決定(以下「本件各不納付加算税賦課決定処分2」という。また、本件各納税告知処分1、本件各不納付加算税賦課決定処分1、本件各納税告知処分2及び本件各不納付加算税賦課決定処分2を併せて「本件各処分」という。)をしたため、被控訴人らが本件各処分の取消しを求めるとともに、国税通則法(以下「通則法」という。)56条1項に基づく過納金の還付及び同法58条1項に基づく還付加算金の支払を求めている事案である。

   原判決が被控訴人らの請求をいずれも認容したので、これに不服の控訴人が控訴した。