民間都市開発の推進に関する特別措置法に基づいて設立された財団法人に対して,民間都市開発事業用地を | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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民間都市開発の推進に関する特別措置法に基づいて設立された財団法人に対して,民間都市開発事業用地を売り渡した会社につき民事再生手続開始決定がされた後,同社が売買契約上の約定解除権を行使した場合,これによって財団法人が取得する原状回復請求権は民事再生法119条5項所定の共益債権に当たるとした事例 

東京地方裁判所判決/平成14年(ワ)第25777号 
平成17年8月29日 
原状回復請求事件 
【判示事項】 民間都市開発の推進に関する特別措置法に基づいて設立された財団法人に対して,民間都市開発事業用地を売り渡した会社につき民事再生手続開始決定がされた後,同社が売買契約上の約定解除権を行使した場合,これによって財団法人が取得する原状回復請求権は民事再生法119条5項所定の共益債権に当たるとした事例 
【判決要旨】 1 財団法人民間都市開発推進機構の甲と株式会社の乙との間で締結された乙の所有する土地の売買契約に付された「当該土地が契約の締結日から10年以内の間に民間都市開発事業の用に供されず、かつ、国、地方公共団体等に譲渡されない場合において、当該土地における都市開発事業の実施が見込まれなくなった場合等やむを得ない事情によって甲が乙に当該土地の買い戻しを請求したときは当該土地を乙に売り戻すことができるものとする」旨の特約は、「売り戻す」という文言が用いられているからといって、再売買の予約について定めたものであることが文言上明らかであるとはいえず、再売買の予約であれば当該売買契約に置かれるべき再度の売買に係る代金額に関する規定もなく、甲による当該土地の取得が甲の「土地取得・譲渡業務」として行われたものであって、当該土地における民間事業者による都市開発事業が行われた場合には、当該事業者への譲渡が予定され、反対に、都市開発事業が行われなかった場合には、前記特約によって乙に売戻しを行うことが予定され、すべての場合において、甲が当該土地を保有し続けるリスクが回避されていたところ、これを再売買の予約と解したうえで、当該特約のみを乙が民事再生法49条1項に基づいて解除することができるとすれば、土地保有のリスク回避という選択肢を甲から奪うことになることなどからして、再売買の予約を規定したものではなく、甲に約定解除権を留保した規定であると解釈すべきである。 
2 財団法人民間都市開発推進機構の甲と株式会社の乙との間で締結された乙の所有する土地の売買契約で甲に約定解除権が留保されていた場合において、乙に対して民事再生手続が開始された後に当該約定解除権発生の要件が充足されたときであっても、個別的な債権の履行請求の可否に関係のない事由に基づいて約定解除権が発生する場合であれば、その約定解除権の発生を制限する理由はないところ、甲に留保された約定解除権が発生するのは、①当該土地が未だ民間都市開発事業の用に供されておらず、かつ、当該土地が国および地方公共団体に譲渡されていないこと、②当該土地において都市開発事業の実施が見込まれなくなった場合等やむを得ない事情があることを要件とするものであって、これらはいずれも乙に対する債務の履行請求の可否とは無関係な事情ということができるから、甲は、当該約定解除権に基づき、当該売買契約を解除することができる。 
3 財団法人民間都市開発推進機構の甲と株式会社の乙との間で締結された乙の所有する土地の売買契約を甲が乙について民事再生手続が開始された後に当該売買契約で甲に留保されていた約定解除権に基づき解除した場合において、当該約定解除権発生の原因となったのが、乙において、民事再生手続が開始した後に、当該土地において行うことが予定されていた都市開発事業を実施する意思がないことを明確にしたその意思決定に基づく行為にあるときは、その結果として甲が乙に対して取得する売買代金の返還等に係る原状回復請求権は、民事再生法119条5号所定の「再生債務者……が再生手続開始後にした……行為によって生じた請求権」として「共益債権」に該当する。 
【参照条文】 民法555 
       民法579 
       民事再生法49 
       民事再生法119 
【掲載誌】  判例タイムズ1206号79頁 
       金融・商事判例1224号8頁 
       判例時報1916号51頁 
民法
(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(買戻しの特約)
第五百七十九条 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第五百八十三条第一項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

民事再生法
(双務契約)
第四十九条 双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合には、相手方は、再生債務者等に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす。
3 前二項の規定は、労働協約には、適用しない。
4 第一項の規定により再生債務者の債務の履行をする場合において、相手方が有する請求権は、共益債権とする。
5 破産法第五十四条の規定は、第一項の規定による契約の解除があった場合について準用する。この場合において、同条第一項中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同条第二項中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、「破産財団」とあるのは「再生債務者財産」と、「財団債権者」とあるのは「共益債権者」と読み替えるものとする。


(共益債権となる請求権)
第百十九条 次に掲げる請求権は、共益債権とする。
一 再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
二 再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権
三 再生計画の遂行に関する費用の請求権(再生手続終了後に生じたものを除く。)
四 第六十一条第一項(第六十三条、第七十八条及び第八十三条第一項において準用する場合を含む。)、第九十条の二第五項、第九十一条第一項、第百十二条、第百十七条第四項及び第二百二十三条第九項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)の規定により支払うべき費用、報酬及び報償金の請求権
五 再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権
六 事務管理又は不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権
七 再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、再生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)