銃砲刀剣類等所持取締令、爆発物取締罰則および銃砲火薬類取締法の合憲性。 最高裁判所第3小法廷決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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銃砲刀剣類等所持取締令、爆発物取締罰則および銃砲火薬類取締法の合憲性。

最高裁判所第3小法廷決定/昭和27年(あ)第5747号
昭和29年3月30日
銃砲刀剣類等所持取締令違反
【判示事項】    1 銃砲刀剣類等所持取締令、爆発物取締罰則および銃砲火薬類取締法の合憲性。
2 原審が適用もせず又判断もして居ない法令の違憲を主張する上告の適否。
【判決要旨】    論旨第2、第3点所論の各法規(銃砲刀剣類等所持取締令、爆発物取締罰則、銃砲火薬類取締法)は当裁判所大法廷においても既に何回となく繰返し適用して居るものであって、これは違憲でないとの判断を前提とすること勿論である。右各論旨の如きはいずれも違憲に名を藉るものと見る外ない。なお論旨第3点は原審が適用もせず、判断もして居ない大赦令に関するもので全然原判決に対する攻撃にもならないものである。
【参照条文】    憲法18
          刑事訴訟法405
          銃砲刀剣類等所持取締令
          爆発物取締罰則
          銃砲火薬類取締法
【掲載誌】     最高裁判所裁判集刑事93号979頁

憲法
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

刑事訴訟法
第四百五条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

爆発物取締罰則
第一条 治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第二条 前条ノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用セントスルノ際発覚シタル者ハ無期若クハ五年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第三条 第一条ノ目的ヲ以テ爆発物若クハ其使用ニ供ス可キ器具ヲ製造輸入所持シ又ハ注文ヲ為シタル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第四条 第一条ノ罪ヲ犯サントシテ脅迫教唆煽動ニ止ル者及ヒ共謀ニ止ル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

昭和三十三年法律第六号
銃砲刀剣類所持等取締法
(所持の禁止)
第三条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲若しくはクロスボウ(引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)(以下「銃砲等」という。)又は刀剣類を所持してはならない。
一 法令に基づき職務のため所持する場合
二 国又は地方公共団体の職員が試験若しくは研究のため、第五条の三第一項若しくは第五条の三の二第一項若しくは鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)第五十一条第四項の講習の教材の用に供するため、第五条の四第一項の技能検定(第三号の二並びに第三条の三第一項第二号及び第五号において「技能検定」という。)の用に供するため、第五条の五第一項の講習(第四号の四並びに第三条の三第一項第二号及び第五号の二において「技能講習」という。)の用に供するため、又は公衆の観覧に供するため所持する場合
二の二 前二号の所持に供するため必要な銃砲等又は刀剣類の管理に係る職務を行う国又は地方公共団体の職員が当該銃砲等又は刀剣類を当該職務のため所持する場合
三 第四条又は第六条の規定による許可を受けたもの(許可を受けた後変装銃砲刀剣類等(つえその他の銃砲等又は刀剣類以外の物と誤認させるような方法で変装された銃砲等又は刀剣類をいう。以下同じ。)としたものを除く。)を当該許可を受けた者が所持する場合
三の二 技能検定を受ける者が当該技能検定を受けるため当該技能検定に係る猟銃を所持する場合
四 第九条の三第一項の猟銃等射撃指導員(第四号の八、第三条の三第一項第六号、第四条第一項第五号の二、第五条の二第三項第六号及び第八条第一項第七号において「猟銃等射撃指導員」という。)が指定射撃場、教習射撃場又は練習射撃場において猟銃又は空気銃による射撃の指導を行うため当該指導を受ける者が第四条又は第六条の規定による許可を受けて所持する猟銃又は空気銃を所持する場合
四の二 第九条の三の二第一項のクロスボウ射撃指導員(第四号の九、第四条第一項第五号の三及び第八条第一項第七号の二において「クロスボウ射撃指導員」という。)が第十条第二項第二号の二に規定する場所においてクロスボウによる射撃の指導を行うため当該指導を受ける者が第四条又は第六条の規定による許可を受けて所持するクロスボウを所持する場合
四の三 第九条の四第一項第二号の教習射撃指導員(次号、第三条の三第一項第七号及び第五条の五第四項において「教習射撃指導員」という。)が第九条の五第一項の射撃教習(以下この号及び第三条の三第一項第七号において「射撃教習」という。)を行うため、又は射撃教習を受ける者が当該射撃教習を受けるため第九条の六第二項の教習用備付け銃(第四号の六及び第三条の三第一項第七号において「教習用備付け銃」という。)を所持する場合
四の四 技能講習従事教習射撃指導員(教習射撃指導員であつて、都道府県公安委員会が第五条の五第四項の規定により技能講習に関する事務を教習射撃場を管理する者に行わせる場合において当該技能講習に関する事務に従事するものをいう。第三条の三第一項第五号の二において同じ。)が当該技能講習に関する事務の用に供するため当該技能講習を受ける者が第四条第一項第一号の規定による許可を受けて所持する猟銃を所持する場合
四の五 第九条の九第一項第二号の練習射撃指導員(以下この号及び第三条の三第一項第八号において「練習射撃指導員」という。)が第九条の十第一項の射撃練習(以下この号、第三条の三第一項第八号及び第九条の九第一項第二号において「射撃練習」という。)に係る指導若しくは助言を行うため、又は射撃練習を行うことができる者が当該射撃練習を行うため第九条の十一第二項の練習用備付け銃(以下この号、第四号の七、第三条の三第一項第八号、第九条の八第三項、第九条の九第二項において準用する第九条の四第三項及び第九条の十第一項において「練習用備付け銃」という。)を所持する場合(第九条の十五第一項第一号の年少射撃資格者(第四号の八、第四条第一項第五号の二、第五条の二第六項、第九条の九第二項において準用する第九条の四第三項、第九条の十第一項及び第九条の十一第三項において「年少射撃資格者」という。)にあつては、第九条の十一第三項の規定による指名を受けた練習射撃指導員の指導の下に当該射撃練習を行うため、当該練習射撃指導員の監督を受けて練習用備付け銃を所持する場合)
四の六 教習射撃場を設置し、又は管理する者が教習用備付け銃を業務のため所持する場合
四の七 練習射撃場を設置し、又は管理する者が練習用備付け銃を業務のため所持する場合
四の八 年少射撃資格者が、指定射撃場において、第四条第一項第五号の二の規定による許可を受けた猟銃等射撃指導員の指導の下に空気銃射撃競技のための空気銃の射撃の練習を行い又は当該空気銃射撃競技に参加するため、当該猟銃等射撃指導員の監督を受けて当該許可に係る空気銃を所持する場合
四の九 第九条の十六第一項の規定による資格の認定を受けた者(以下「クロスボウ射撃資格者」という。)が、第十条第二項第二号の二に規定する場所において、第四条第一項第五号の三の規定による許可を受けたクロスボウ射撃指導員の指導の下にクロスボウの操作及び射撃に関する技能の維持向上又は所持の許可を受けようとするクロスボウの選定に資するためのクロスボウの射撃の練習を行うため、当該クロスボウ射撃指導員の監督を受けて当該許可に係るクロスボウを所持する場合
五 第十条の五第一項の規定による空気銃又は拳銃の保管の委託を受けた者がその委託に係る空気銃又は拳銃を同条第二項の規定により保管のため所持する場合
六 第十四条の規定による登録を受けたもの(変装銃砲刀剣類等を除く。)を所持する場合
七 武器等製造法(昭和二十八年法律第百四十五号)の武器製造事業者若しくは猟銃等製造事業者又は同法第四条ただし書若しくは第十八条ただし書の許可を受けた者がその製造(改造及び修理を含む。以下同じ。)に係るもの(猟銃等製造事業者が修理をする場合にあつては、猟銃等販売事業者、教習射撃場若しくは練習射撃場を設置し、若しくは管理する者又は第四条の規定による許可を受けて所持する者から修理を委託されたものに限る。)を業務のため所持する場合
八 武器等製造法の猟銃等販売事業者が猟銃等製造事業者、猟銃等販売事業者、教習射撃場若しくは練習射撃場を設置する者、第四条の規定による許可を受けて所持する者、第八条第六項の措置を執らなければならない者若しくは国若しくは地方公共団体から譲り受けたもの又は当該猟銃等販売事業者が輸入したものを業務のため所持する場合
九 第十条の八第一項の規定による猟銃又は空気銃の保管の委託を受けた者がその委託に係る猟銃又は空気銃を同条第二項において準用する第九条の七第二項の規定により保管のため所持する場合
九の二 第十条の八の二第一項の規定によるクロスボウの保管の委託を受けた者がその委託に係るクロスボウを同条第二項において準用する第九条の七第二項の規定により保管のため所持する場合
十 第十八条の二第一項の規定による承認を受けて刀剣類の製作をする者がその製作したものを製作の目的に従つて所持する場合
十一 事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出て捕鯨用標識銃、救命索発射銃、救命用信号銃、建設用びよう打銃、建設用綱索発射銃、運動競技用信号銃又は第四条第一項第二号の政令で定める銃砲の製造を業とする者(以下「捕鯨用標識銃等製造事業者」という。)がその製造に係るもの(捕鯨用標識銃等製造事業者が修理をする場合にあつては、次号に規定する捕鯨用標識銃等販売事業者又は同条の規定による許可を受けて所持する者から修理を委託されたものに限る。)を業務のため所持する場合
十二 事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出て捕鯨用標識銃、救命索発射銃、救命用信号銃、建設用びよう打銃、建設用綱索発射銃、運動競技用信号銃又は第四条第一項第二号の政令で定める銃砲の販売を業とする者(以下「捕鯨用標識銃等販売事業者」という。)が捕鯨用標識銃等製造事業者、捕鯨用標識銃等販売事業者、同条の規定による許可を受けて所持する者、第八条第六項の措置を執らなければならない者若しくは国若しくは地方公共団体から譲り受けたもの又は当該捕鯨用標識銃等販売事業者が輸入したものを業務のため所持する場合
十三 事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出てクロスボウの製造を業とする者(以下「クロスボウ製造事業者」という。)がその製造に係るもの(クロスボウ製造事業者が修理をする場合にあつては、次号に規定するクロスボウ販売事業者又は第四条の規定による許可を受けて所持する者から修理を委託されたものに限る。)を業務のため所持する場合
十四 事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出てクロスボウの販売を業とする者(以下「クロスボウ販売事業者」という。)がクロスボウ製造事業者、クロスボウ販売事業者、第四条の規定による許可を受けて所持する者、第八条第六項の措置を執らなければならない者若しくは国若しくは地方公共団体から譲り受けたもの又は当該クロスボウ販売事業者が輸入したものを業務のため所持する場合
十五 第十号に掲げる場合のほか、事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出て輸出のための刀剣類の製作を業とする者がその製作に係るものを業務のため所持する場合又は当該刀剣類について輸出の取扱いを委託された者がその委託を受けたものを輸出のため所持する場合
2 第四条第一項第二号又は第二号の二の規定により人命救助、動物麻酔、と殺又は漁業、建設業その他の産業の用途に供するため必要な銃砲等の所持の許可を受けた者の監督の下に人命救助、動物麻酔、と殺又は当該産業の作業に従事する者(許可を受けた者があらかじめ住所地(法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者で、その法人の業務のための所持についてこれらの規定による許可を受けたものにあつては、当該事業場の所在地)を管轄する都道府県公安委員会に届け出たものに限る。第十一条第三項において「人命救助等に従事する者」という。)は、前項の規定にかかわらず、許可に係る銃砲等を許可を受けた者の指示に基づいて業務上使用するために所持することができる。
3 第一項第四号の六、第四号の七及び第七号から第十五号までに規定する者の使用人(当該各号に規定する者があらかじめ事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出たものに限る。)がそれぞれ当該各号に規定する者の業務のため所持する場合は、それぞれ同項各号に定める場合に含まれるものとする。
4 第一項第十一号から第十五号まで及び前二項の規定による都道府県公安委員会への届出に関し必要な細目は、内閣府令で定める。


       主   文
 本件上告を棄却する。
       理   由
 被告人の弁護人鍛治利一の上告趣意(後記)は、刑訴405条の上告理由に当らない。また記録を調べても同411条を適用すべきものとは認められない。(所論第1点は事実誤認を前提とする法令違反の主張であり、論旨第2、3点所論の各法規は当裁判所大法廷においても既に何回となく繰返し適用して居るものであって、これは違憲でないとの判断を前提とすること勿論である。右各論旨の如きはいずれも違憲に名を籍るものと見るの外ない。なお論旨第3点は原審が適用もせず、判断もして居ない大赦令に関するもので全然原判決に対する攻撃にもならないものである。)よって同414条、386条1項3号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
  昭和29年3月30日
    最高裁判所第3小法廷